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勇者は自分を中心にしていない祭りに招待される

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

日が経つにつれて、キアラとルセリは、リョウの変化をじわりと感じ始めていた。

 彼は、まるで重力が倍になった世界に迷い込んだかのように、背中を丸め、

 瞼の下には深い影を落とし、時折、どこでもない一点を見つめては動きを止める。

 夕暮れの光の中でふらりと歩くその姿は、

 まるで人生のバグを抱えた人間サンプルのようで、

 どこかキューブリック映画めいた、乾いた滑稽ささえ伴っていた。

「……私たち、やっちゃったんだね」

 静かな夜、キアラがぽつりと呟く。

「うん。私たちがリョウにひとりに全部を背負わせることを押しつけた。」

 ルセリは杯のチチャ・デ・ホラを指で回しながら言った。

 二人は夜通し語り合った。

 幼いころから一緒だった日々。

 共有してきた貧しさ。

 勉強机を分け合いながら追いかけた夢。

 互いに支え合ってきた、小さな誇り。

 やがて、同じ答えにたどり着く。

「……リョウは、私たちの幸せ全部の責任を背負う必要なんてないよね」

「うん。私たち、今までずっと二人で立ってきたんだし」

 その結論は、静かで、しかしどこか儀式めいた確信を帯びていた。

 余計な感情を削ぎ落とした、キューブリック的な冷徹さすらある——

 だが同時に、とても人間的でもあった。

 翌日、二人はリョウの前に並んで座った。

「リョウ。私たちね、ちょっと勘違いしてた」

「あなたに、私たち“両方の幸せを担ってほしい”なんて、本気で思ってないよ」

 キアラもルセリも、落ち着いた声だった。

 しかしその裏に、「もう誰も苦しませない」という強い意志が宿っていた。

「これからは、私たちも互いに支え合う。あなたは私たちの“全部”じゃなくていい」

「あなたは、私たちの関係の一部でいい。私たちの“供給源”なんかじゃない」

 しばし沈黙。

 そして——

 リョウの肩が崩れた。

 張り詰めていた糸が切れたように、彼は大きく息を吐き、

 そのまま嗚咽が漏れた。

「……ありがとう……本当に……ごめん……」

 

 その姿を見て、キアラもルセリも、ふっと微笑む。

 こうして三人は、ようやく同じ高さに立った。

 誰も“中心”ではなく、誰も“依存先”ではない。

 偏りのない、重力の対称性が生まれた瞬間だった。

 その日、三人は正式に、

バランスの取れたポリアモリー

という、新しい関係性へと歩み出した。

 奇妙で、優しくて、そしてどこかシュールな愛の形だった。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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