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432 過去の経験に根ざした怖い予言キタァ!

 ジェレンス先生を追い返せたから勉強するか……とは、ならないよね。


「結局、なんの用なんだろ」

「本人がいっていた通りなんじゃないか?」

「大きめの聖属性の樹の育成が必要ってこと? でも、なんで急に?」

「戻って来たら訊けばいいだろう。それより、今のうちに勉強を進めたまえ。時間を無駄にするな」

「気が散っちゃって、それどころじゃないよ……」


 わたしが顔をしかめると、リートは眉を上げた。あっ、これは貶される流れ!


「なんで君は、そんなに気が散りやすいんだ」

「わたしが異常みたいにいわないでくれない? ふつうだよ、これが」

「俺は違うが」


 リートのどこが「ふつう」に該当するのか、教えてほしいね!

 しかたがないから本は開いたけど、読んでもなにも頭に入らない……これこそ時間の無駄では?

 とはいえ、その状態は長くはつづかなかった。エルフ校長の許可をとりつけたジェレンス先生が、すぐに舞い戻って来たからだ。

 許可をとったというか……エルフ校長も、ついて来た。


「ジェレンスの説明では状況がはっきりしないので、僕も行きます」

「校長先生は、お忙しいのでは?」

「忙しいですよ。ですが、ものごとには優先順位というものがあります」


 ……聖属性魔法使い最優先か。知ってた!


「状況がはっきりしないのに、行くのは決定なんですか」


 リートはブレない! たよりになるよね……。


「必要もないことを、トゥリアージェの当主が依頼するはずがありませんからね。時間がもったいないので、行きましょう」

「もったいないというなら、必要もないのに往復した時間は取り戻せませんが」


 リートはやっぱりブレなかったが、エルフ校長も譲らなかった。


「そうですね。今こうやって議論している時間も、取り戻せないのは同じです」

「ジェレンス先生が説明できないっていうのが、俺には意味がわかりません」

「意味がわからないのがジェレンスです。僕はもう諦めました」

「すみませんね……俺だって、よくわかってないんですよ。伯母の命令なんです」


 ははぁ。わからないけど、わかったぞ! 「ジェレンス」「はい、伯母上」ってやつが発生したんでしょ。……見えてくるようだわ。

 この瞬間、全員が納得したと思う。あーそういうこと、って雰囲気になったよね。


「とにかく、まず俺の部屋へ」


 転移陣が描かれているのがジェレンス先生の部屋なので、全員でぞろぞろ移動して転移陣に入る――そして、トゥリアージェ領に到着。お城の裏庭……かな? 中庭? とにかく、そんな感じの場所についたけど。でも、背景なんて目に入らないよね。

 だって。目の前にシュルージュ様が立ってらしたんだから!

 シュルージュ様は、今日もすっきりとした男装だった。……かっこいい!


「ジェレンス」

「はい、伯母上」


 到着即コンボが決まり、同行者一同、ほらねと思ったことだろう。少なくとも、わたしは思った。

 ……ほらね!

 でも、シュルージュ様の視線はジェレンス先生から我々の方へ移動して。その眼が、はっ、と見開かれた。


「まぁ……なんてこと」

「久しいですね、シュルージュ。健勝そうで、なによりです」


 おっ? シュルージュ様、エルフ校長と顔見知り? いきなり名前呼びだから、けっこう親しい感じ……ってこと?


「はい。先生も、お元気そうで」


 そう答えて、シュルージュ様が微笑んだ……おお、むっちゃレアな表情じゃない? やわらか〜い感じだ!


「なんです、その顔」

「いえ、先生はお変わりにならないな、と。当たり前のことを考えただけです」


 あ。あー、そういうことか! 教え子!

 エルフ校長エルフだから、ずーっとあの王立魔法学園にいるんだよね。なるほど、生徒だった人物とは顔見知り……。生徒の数も膨大だろうけど、忘れないエルフだから全員覚えてそう……うわぁ。

 我が校の教育カリキュラムって自由度高いから、優秀であるほど、エルフという唯一無二の魔法系統の使い手である校長先生との交流も生じやすいかもしれないなぁ。シュルージュ様だって、なんらかの個人指導を受けられたのでは? って雰囲気だよね。

 あれっ。

 ……ちょっと待って。

 考えたことなかったけど、えっ、じゃあ我が国の実力ある魔法使いとエルフ校長は、だいたい知り合いってこと? しかも恩師ポジってことなの?


「あなたは強くなりましたね、シュルージュ。魔力が横溢おういつしているのを感じますよ」

「とんでもない。若い頃に比べれば、わたしは弱くなりました。ただ、魔力の扱いに慣れて、強く見せるのがうまくなったのですよ。その点においては、先生を凌駕したかもしれませんね。だって、先生は強く見せる必要なんてありません。きっと訓練もなさらない――」


 ふふ、っと。シュルージュ様は少し楽しげに笑って、すぐその笑みを消した。


「――ご訪問、歓迎いたします。なんの準備もないことを、お許しください」

「いえ、僕もあまり時間は使えないので」

「お察しいたします。……ジェレンス」

「はい、伯母上」


 コンボ二回目!


「なぜ、先生をお連れしたのです?」

「俺が依頼したわけではなく、校長が勝手に――」

「ジェレンス」

「校長先生が、ご自分から同行を申し出られました!」


 ジェレンス先生、ちょっとカワイソウな子って雰囲気になってる。

 ……ごめんなさい、正直、面白いです!


「どういうことなのです、シュルージュ。当初の予定では、聖属性の樹木はすべて魔王復活の感知に活用するとのことでしたが……今さら、大きめの樹が必要な理由は?」

「手前勝手な話で恐縮なのですが、反対意見を抑えきれなくなりました」

「反対意見、ですか」

「はい。魔王と戦っても勝ち目はないのだから、とにかく安全地帯をもうけるのが先決だろう、と。民の安全と安心にも通じると説かれて、迷いが生じました」


 シュルージュ様でも迷うことがあるんだ! と、思ってしまったよね。

 少なくとも、なんかそういう――弱み? みたいなものを、他者に見せるかたではないだろう、って。そういう理解だったから、びっくりした。

 エルフ校長は、少し考えてから答えた。


「安全地帯といっても、魔王が実際、君の領地に出現するとして――多少大きな樹があった程度で守りきれるものではありませんよ」

「わかっています。実際には、前線に立つ者以外は避難させるしかないという認識です」


 シュルージュ様とエルフ校長は、わかりあっているようだが……わたしは、はじめて知ったよ。

 そういうことなの? だから、余った種子はぜんぶ感知に使うって話だったのか! ずいぶん攻めてるなー、そういう性格なんだなーと思ってたけど、違うんだわ。

 聖属性を使ったとしても、安全地帯なんて維持できないから。無駄なんだ。


「では、なぜ?」

「先ほど申し上げた通りです。民の安心のために」

「……なまじ用意してしまうと、逃げ遅れる者が出るのでは?」

「大樹を目印に使い、集まった者を転移陣で逃す計画です」

「目印だから、大きいものが必要?」

「そうです。これがあれば大丈夫と、油断を生じさせるのではないかとも思うのですが――避難対策として、集めて外に送る計画を立てればよかろうといわれると、それもそうかと」


 なるほどなぁ。

 エルフ校長はまた考え込んでいる風だ。

 なにを考えてるんだろう。膨大な記憶を検証中? パソコンだったらシークバーが出てきて、しばらくお待ちくださいの図だ。記憶が多いと、検索も大変よね……。


「それは危険ですよ、シュルージュ。一網打尽いちもうだじんにされかねません」

「よほど早めの避難を呼びかけなければ、ということでしょうか」

「魔王復活は、魔王が出てくるだけの現象ではありません。魔族全般が活性化し、数も増え、力も増します。人間を食糧、あるいは娯楽のために殺害しようとする魔族は少なくない――ええ、聖属性を期待して一箇所に集まるのは危険です、とても」

「聖属性の力は期待できないでしょうか?」

「無理ですね。かれらは当然、聖属性は苦手です。ただ、魔王復活とともに力も強くなりますから、今のように、樹木の力だけで抑えられたりはしません。むしろ、その樹を倒しに来るでしょう。安全な避難所どころか、もっとも危険な場所になりかねない。目印となるのは、かれらにとっても同じことなのです――襲撃のための、わかりやすい目標地点になりますよ」


 ……過去の経験に根ざした怖い予言キタァ!


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