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399 それではよくないと説得される流れ!

人気投票結果一位をとりました「ファビウス&リート(弟じゃない方)」のSS、SNSの方に公開いたしました。

(今のところ、こちらには移植しない予定です)

 説明しよう。

 魔法実技発表会とは! 魔法の実技を発表する会だ!

 ……そのまんま!


 なんでも、生徒会長――すなわち、ウフィネージュ殿下のご発案による催しだとか。

 舞踏会も騒ぎなどあって楽しめなかったし、学業の励みになるような内容で、と。前例があるわけではなく、王家パワーで開催決定したらしい。

 ほらぁ、我が国は王家強いよね。西国ノーレタリアとは違うと思う。


 とにかく、開催が決定したものはしかたがない。

 どんな内容かというと。

 参加するのは三人一組のチーム。各クラスから、三組まで代表を出せる。一位は表彰されて賞品ももらえるらしい。

 で、なにを競うかというと、的当てだ。

 前世日本人的に、わかりやすく表現すると――ストラック・アウト……だっけ?

 テレビ番組とかで、1から9までの数字を書いた札を吹っ飛ばすのあったじゃん……スポーツ選手とかがさぁ。何番行きます、って宣言してからボールを投げたり蹴ったりするやつ。野球版とか、サッカー版とかあったよね。近所のバッティング・センターにも、あきらかにそういうの置いてあった! どうでもいいこと、思いだしちゃったわ〜。

 下町ではそんな遊びは流行しなかったけど、お貴族様は皆様ご存じらしい。貧乏人はねぇ、道具がたくさん必要な遊びはできないんだよ〜。ほんと、そういうとこだぞ、上流階級!

 ……なんて僻みはともかくだ。

 考えてもみてほしい。プロのスポーツ選手でさえ、宣言した通りの枠をぶち抜くのは大変だったのだ。

 素人魔法使いが、そんなほいほい狙った場所をぶち抜けるかっていうと……。


「札が抜けなければ失敗、傷をつけても失敗だそうだ」


 リートがルールを解説してくれたが、解説しなくていい。


「難しいですね……」


 ナヴァト忍者も、真剣に考えるな!


「火属性なんかは無理だな。絶対に、札が焦げる」

「それ以前に、なんで参加することになってるのかを教えてよ。考えるなら、参加しなくて済む方法を考えて!」


 親衛隊ふたりは、わたしの顔を見た。リートはいつものアレなのはいうまでもないとして、ナヴァト忍者までなにその……残念なものを見る顔は!


「仮病でも使うか?」

「そんなことしなくてもいいでしょ。代表に選出されても辞退すればいいだけで」

「君の友人の伯爵令嬢たちが、許さないと思うぞ」

「えー」

「いっていただろう。わたしは止まりませんからね、とかなんとか」

「いってたけど。だったら、シデロアたちが代表で出ればいいじゃないの」


 シデロア嬢はあまり魔法に熱心な方ではないが、アリアン嬢は優秀だったはずだ。ほかにもうひとり、誰かいるだろう。なんならリートかナヴァトを貸し出したっていい。


「彼女の狙いは、二番煎じを黙らせることだ。そのためには、本家聖女である君が出場して、威光を見せる必要がある」

「はぁ?」

「はぁ、じゃない。まったく君は事態の把握がぬるいな」


 ぬるくて結構だよ。現実が、わたしのぬるい把握に合わせてくれよ!


「なんでそうなるの……わたしはべつに、第二の聖女とかいう子が正式に聖女になってくれてもかまわないし、魔物退治はおまかせくださいっていうなら、まかせちゃいたいくらいなのに!」

「許されるわけがないだろう。君は聖女なんだぞ。聖女として親衛隊を擁し、手当も出ているんだ」

「うっ……」


 そこを突かれると……。

 いやでも!


「聖女の仕事って、学園内で内輪揉めすることじゃないでしょ。魔王の封印でしょ! それ以外のことはどうでもいいよ」

「そんなに容易に切り分けられる話じゃないのは、君だってわかっているはずだ」

「……切り分けようよ」

「無理だな。辞退したら、聖女としての資格や資質にケチがつく。王太女殿下あたりが、ほらやっぱりあのかた、どうもおかしいと思っておりましたのよ……と、やりかねない」

「やってくれていいよ」

「俺は給与なしで君の護衛をつとめる気はないぞ」

「校長先生からの報酬があるでしょ!」

「正直、あれだけでは見合わん」


 うるせぇー!

 わたしの面倒みるのが大変過ぎるみたいなこと、いうな!


「聖女様、争われるのがお嫌いなのはわかっております。ですが、ここは存在感をお示しくださいませんと」

「なくていいじゃない、存在感……」


 むしろ、忘れ去られるくらいでちょうどよくない?

 なんかもうさ、贅沢したいとか有名になりたいとか、そういうのないのよ。しかたないから魔王封印だけは頑張るけど、ほかは放っておいてほしいのよ。


「いざというときに、聖女様のお名前でどれだけの人間を動かし得るかが変わるのです」


 ナヴァト忍者は真剣な顔だ。声もそう。……相変わらずイケボであるな。

 ……いや、イケボだからってそう簡単にまるめこまれたりはしない! しないぞ!


「それだって、もう今の状況でじゅうぶんじゃない? シュルージュ様は全面協力を約束してくださってるし、ってことはジェレンス先生も勘定に入れていいはずだし……親衛隊だっているんだし」

「それは……」

「実際に戦う者を集められれば、それでいいと思っているのか?」


 リートに問われて、わたしは顔をしかめた。これは、それではよくないと説得される流れ!


「それでいいとは思ってないけど、必要最低限のことはできるでしょ」

「聖女に実力があると思われている方が、やりやすいんだ」

「なにが」

「あらゆる啓発と広報。トゥリアージェ卿も話していただろう。戦闘に口を挟まない権力者は貴重なんだ。つまり、愚かな策に皆の命を委ねずに済むようにするためには、主導権を握っておく必要がある。いらぬ指示をしてくる権力者を黙らせる実力があれば、それが可能だ。わかるか?」

「……」

「戦闘だけじゃない。広報や啓発にも、聖女の権威は役に立つ。避難、警戒、待機――すべてに、だ」


 避難、警戒、待機……吸血鬼に襲われちゃいけない三つの場所よりマトモだな。


「関係なくない?」

「あるに決まっているだろう。聖女の名において指示することが可能かどうか、それをどれだけの人間が聞き入れてくれるか――君なら、魔王の眷属との戦いよりも、こちらの方が気になるんじゃないか? 戦う力がない者たちを守れるかどうかに直結する部分だぞ」

「……」


 ほら。

 やっぱり説得されるじゃん!


「誰にたのまれたの」

「は?」

「誰かに依頼されたんでしょ、ルルベルを出場させろって」

「金銭の授受をともなう依頼があったと疑っているなら、それは君の考え過ぎだ。そうではない意味でなら、依頼はあったも同然だろう。級友の期待を受けているのだからな」


 級友の期待……。


「リートがそういうの配慮するとは思わなかった」

「そうか」


 なんの弁明もなく、リートは話を打ち切った。

 そして、強引に戻した。


「この競技、王太女殿下のご発案なのだから、第二の聖女に有利と考えられるな」

「学園に来るまでの逸話が気になりますね。出会った魔物を吹っ飛ばしていた、という」


 あ〜……。


「もし聖属性でもないのに吹っ飛ばせるとしたら、かなりの威力があるだろう」

「小型の魔物は動きが素早いことが多いですし、狙いには自信があるのでしょう。威力だけで戦っていたのでしたら、こういう競技にはしないでしょうから」

「なるほど、静止している的など敵ではないということだな」

「そういえば、的が静止しているとはどこにも書かれていないのでは?」

「……たしかに。的を動かしてくるかもしれんな」

「はい。あちらが誰と組むかも早めに知りたいですね。その顔ぶれに有利な設定をしてくるはずですから」

「それは問題なくわかるだろう。実行委員会に名簿を提出するはずだからな」


 リートとナヴァト忍者の話し合いが進む。

 いや、的を動かすって本気? ますます当てられる気がしないけど……。

 ていうか、ナヴァト忍者の推測が……殺意強いっていうか……いや、誰かを殺すって意味じゃないよ? そういう意味じゃないけど、なんか強い。

 的が静止してるとは限らない、とか。第二の聖女チームが有利な設定にするはず、とか。

 そこまでする?

 ……するかぁ。するかもなぁ……。しそうだな! ウフィネージュ様だし。


「出るからには負けられなくない? 出場しない方が傷がつかなくていいんじゃない?」


 わたしの消極的解決策に、リートはいつもの顔で答えた。


「誰が負けるんだ。勝つから問題ない」


 その自信! 羨ましいわー……。


今週は病院に行く予定が複数回あるため、更新が不安定になるかもしれません。

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