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223 一応、結婚前の娘だから……

FANBOX 用のリクエストSS を優先したせいで、作業が諸々間に合わず、昨日は前触れもなく更新をお休みしてしまいました。力及ばず!


(支援者限定公開ですが、FANBOX 用のSS は、「スタダンスとファビウス」というお題で書きました。ご支援くださっているかたは、どうぞお読みください)

 顔を見に来てくれたシスコとふたり、中庭でお茶をしているときに。その質問は、はなたれた。


「ルルベルはもう、教室には来れないの?」

「わからないよ」


 正直に、わたしは答えた。はじめに思いついたことを。

 わからないのは嘘じゃないけど、わかってる気もする――だって、わたしは大物吸血鬼に狙いをさだめられた状態であり、学園の中に限ったとしても、出歩くのは危険だからだ。

 わたしが危険なだけならともかく、周囲に影響ありまくりなのが困る。


「……ごめんね、こんな質問」

「え、なんで謝るの。ウィブル先生に叱られるよ! そういうの不毛でしょ? って」


 肩をすくめる先生の真似をしようとしたが、うまくはいかなかった。

 それでも一応は伝わったらしく、シスコはちょっと笑ってくれた。やさしい。


「うん、ごめん……ああ駄目、どうしても謝っちゃう!」

「いいよいいよ。許す許す。シスコなら、なんでも許しちゃう」

「実はね、皆に訊かれるの……聖女様はどうなさってるの、とか、教室にはいらっしゃらないの、とか」

「あー……」


 そういえば舞踏会のときも、妙にクラスメイトの女子が集まってたしなぁ。

 なんか興味持たれちゃったんだな。

 まぁ、世にも珍しい聖女だし、そういうもんか。わたしが彼女らの立場だったとしても、クラスに聖女さまがいらっしゃるってなったら見守るし、ワンチャンお近づきになれないか頑張ってみると思うわ!


「ねね、シスコ」

「なあに?」

「アルスル様って、その後、どうなさってるの」

「それが、ずっと休んでらっしゃるの」

「えー、そうなの?」


 あの夜、わたしはジェレンス先生に連れ回されただけなので、アルスル青年のことも浄化したかどうか……不明である。

 すごく活躍したはずなのに、自分がなにをやったのかサッパリなの、釈然としない。

 でも、わたしが直接やってなかったとしても、アルスル青年のことはジェレンス先生かエルフ校長が処置したはずではある。だって、魅了されてたに決まってるんだし。


「きっと、立場がないと感じてらっしゃるんじゃないかしら」

「そうよねぇ……でも、気にすることないのにな。吸血鬼になんて、逆らえないよ。ふつうは」


 ……ま! わたしのシスコは、それでも抵抗したんだけど! さすが天使!

 わたしの天使は眼を伏せて、愁いに満ちた表情をした。


「わたしもそう思うけど、でも……他人事なら冷静に判断できるだけ。自分のことは、駄目。……だから、つい謝っちゃうのね」

「重症だね」

「うん」

「でもシスコは頑張ったんだし、なにも恥じることはないでしょ? むしろ、わたしの誇りだよ!」

「渦魔法ね……あんな風に使えるとは思ってなかったけど、魔力の制御を練習しててよかった、って。ほんとに思った」

「練習は、だいじだよねぇ」


 わたしだって、さんざん練習していたからこそ、ぶっつけで呪符に魔力を流せたわけだし。


「ルルベルは、調子はどうなの? その……魔力感知の方は?」

「そっちは変化なし。でも、ファビウス様が彩色してくださるおかげで、制御の練習はできてるから! ずいぶんうまくなったって、褒めてもらったよ」

「そうなの? やっぱり、目で見えると違うよね」

「うんうん、ほんと違うと思う」


 視線を落としたまま、シスコは息を吐いた。ううっ、美少女のため息……絵になる!


「わがままいったら、いけないと思うんだけど」

「え、いいよ。どんどんいって! 聞かせて、ご褒美だから!」

「ご褒美?」


 はっ。特殊な用法だったかも。


「今のは勢いで口走っただけだから気にしないで! とにかく、えっと……なに?」

「わたし……たぶん、寂しいの。ルルベルがいなくて」


 はわーっ! 美少女に愁い顔をさせている原因が自分だったときの! 対処法を述べよ!


「じゃ……じゃあ、シスコもここで寝起きしていいか、訊いてみる?」

「駄目よ。家に許してもらえないから」

「えっ?」

「……こういうこというの、どうかと思うんだけど。でも……一応、結婚前の娘だから……親が、女子寮以外に寝泊まりするのを嫌がるの」


 はいぃ? いやだって……えー……。

 たしかにこの世界は、不純異性交遊には厳しめである。身持ちが悪い女というレッテルを貼られると、そのー……人権を失うというか、人間として尊重されなくなる。

 そして、独身男性であるファビウス先輩の研究室に泊まり込むっていうのは、こう……まぁまぁ外聞は悪いよね。

 考えないようにしてたけど、そう……悪いんだよな、外聞。

 だけどさ、わたしの場合はどうしようもないじゃん! ここを出ると、次の選択肢はエルフの里だぞ! あるいは、ちょっと前にファビウス先輩がいっていたように、どこでも選び放題なのかもしれないけど……それこそ、信頼できないとこには行けないじゃん!


「ごめんね」

「え?」

「こんなこといって、ルルベルに失礼なのはわかってるの」

「いやいや、それは気にしないでいいよ。たしかに、世間的によろしい状態とはいえないわけだし……」

「どうしようもないんだってことは、親にも説明したのよ。ルルベルは聖女で、実際に狙われてるから……魔法的な防備がある図書館と、常時守ってもらえる研究室を行き来してるんだ、って。それは納得してもらえたんだけど、でも、わたしがあんまり行くのは駄目だって。『おまえは聖女様じゃないんだから』って、母に泣かれちゃって」


 泣かれちゃうのかー! そこまでかー!

 ……でも待って。

 そういうことなら、これまでシスコが泊まりに来てくれたときって、親の反対を押し切って、ってこと?

 わぁぁぁぁ!


「ごめんシスコ、わたし全然気がつかなくて……」

「ううん、うちの親が過保護なんだと思うの。……話してたら、ちょっと親に腹が立ってきたわ」


 お、おぅ。親子喧嘩になりませんように!


「そっか。難しいね」

「果汁の提供とか、家にたのんでるから……あんまり親の機嫌を悪くするわけにもいかなくて」


 お世話になっております! いやもうほんと。

 ……うちの親は、今の状況を知ったらどう思うのかなぁ。

 ちょっと考えてみたけど、想像がつかない。でも、周りはお貴族様ばっかりだし、逆らえないということは理解してくれると思う。

 あと、ファビウス先輩が店に行ったときにコロっとやられてたから、母は絶対に味方だ。


「……ああもう! わたし、ルルベルにこんな話をするつもりじゃなかったのに」

「ほんと気にしないで」

「そうじゃないの。わたしね、知ってほしかったの」

「うん?」

「皆が、ルルベルのこと心配してるって。あの試験のときのこと、今でも話題になるの」

「そうなんだ」

「ええ。だって、あれから殿下も……その、教室でちょっと浮いてたんだけど、すっかり馴染んで」

「……そうなんだ?」

「そうなの。全然違うのよ、前と」

「へぇ〜!」


 それはちょっと、見物してみたいな。

 あーでも、わたしは「前」の状態をよく知らないからなぁ。ほんと、せっかく入学したのに、ろくに教室に行けてないんだよ……おもに吸血鬼のせいだよ。くっそムカつく!


「こうなったのも、聖女様のおかげだって話すの。聖女がルルベルみたいなひとでよかった、って」


 それはどうだろうか?

 皆、早まるな! ちょっと試験対策で役に立ったからって!


「そっかぁ。教えてくれて、ありがとうね」

「……舞踏会でも、途中で姿を消すことになっちゃったでしょ?」

「でも、けっこう踊ったし、皆と喋ったよ」

「そうだけど、残念だねって。それで、あれほどの規模じゃないけど、ちょっとした舞踏会を開こうかって話があるの」


 なんやて。


月曜日もお休みをいただくことになります。

ワァー、不甲斐ない! でも休む!

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