儂の事情
調子に乗って続きを書いてしまった………。
「おぉ~これは可愛らしい女の子だなぁ~」
「可愛いの分かりましたから優しく抱いて下さいね」
「分かっているさ~ヨシヨシ」
眠りに落ちた儂はある夢を見ていた。
その夢とは金色の短髪の男と白い長髪の女が産まれた我が子を抱いている場面だった。
この夫婦が抱いている銀髪で青い瞳の赤ん坊はもしかしなくても今世の儂であろう。
ということはこの夫婦は儂の親と言うことか。
「あなた、この子の名前はどうします?」
「うーん……そうだ!ならこの子の名前はフリーデにしよう!」
嬉しそうに儂を抱く父上とその姿を見て微笑む母上。
どうやら儂は良い父上と母上の下で産まれたようで安心したわい。
儂はトロキア王国の小さな町「トルファン」を治めるバインリッヒ男爵の長女として産まれた。
いや、正確にはこの娘の身体を乗っ取ったと言ったほうが良いじゃろう。
それと他に分かったことはバインリッヒ家の治めている「トルファン」が辺境の小さな町な事。
当主である父上ゲオルグは元々は平民だった事。
何故平民だった父上が辺境の小さな町を治める事になった切っ掛けは今から数十年前に鉱物資源が大量に発掘されるトロキア王国のセプアレ鉱山を奪わんとした隣国で大国のヘイフ大国が進攻を開始して勃発した「トロキアヘイフ戦争」で活躍したからである。
当時皇太子であった国王は率いていた部隊が敵の策略で壊滅し絶体絶命の時、当時一兵卒だった鷲の父上が助け出したことで当時の国王から褒美として男爵の爵位と領地を貰った。
本来渡される爵位は騎士爵だったのだが皇太子の推薦で男爵になるという大出世をしたが当然として周りの貴族は良くは思わなかったが一騎当千の戦いをする父上に手を出そうとする愚か者はいなかった。
だがそんな父上だが皇太子を助け出した時に負った傷で父上は二度と戦えぬ身体になってしまったが当の本人は余り気にしていないようじゃ。
「それからごめんなさいあなた……私はもう子供を……」
「大丈夫だイルザ……私は君やフリーデが無事ならそれでいい」
「あなた………」
悲しい顔をしながら泣き崩れる母上を抱きしめる父上。
何故なら儂の母上はもう子供を産めない身体になってしまったのだ。
儂が生まれた世界はゴブリンやオーク等の異形な生き物である魔物やドワーフやエルフ等の人とは見た目が違う異種族と言ったのが居る以外は前世と余り変わってない。
そしてそれは後継者問題も同じで父上達の子供は儂が一人のみでそれも女。
一時的には儂が父上の後を継げるがもし儂が結婚した場合は結婚した相手が父上の後を継ぐ事になる。
まさに儂が娘の身体を乗っ取ったようにバインリッヒ家が他人に乗っ取られてしまう。
それだけではなく他にもバインリッヒ家は問題が山積みである。
父上が治める「トルファン」は辺境にありその先に父上が戦ったヘイフ大国と近年情勢が不安定で各諸侯が覇権を争う戦国時代と化しているサマルラート王国の国境線が近くにある。
もし二つの国がトルキアに進攻した場合、真っ先にこの「トルファン」が戦火に焼かれてしまう。
一騎当千と言われた父上はもう戦えぬ身体で儂達に残された戦力は頼りない農具を持った農兵が50人程度。
これでは5分も持たずに壊滅するのは自明の理。
御家騒動に隣国の脅威とはまさに進退両難とはこの事じゃよ。
このままではバインリッヒ家が他人に奪われてしまい例え逃れたとしても隣国に領地を荒らされてしまうのを阻止するには今の儂が強くなる必要がある。
「(儂に残された時間はそう多くないだろうし善は急げと言うのだから起きたら早速始めるとするかのう)」
それからの儂は夢から覚めると家族や周りの人に不信な目で見られないように動き始めたのだった。
書き置きが無くなったのでしばらくお待ち下さい。






