誇り
「よし! これで全部だな。あとは……」
子分猿の角は全て回収した。残りはボス猿の角のみ。
リキはそれを手に入れるために吹き飛ばした生首を探す。
胴体の近くを探したが見当たらない。
少し強く叩きすぎたかもしれない。
リキはキョロキョロと周囲を見渡す。
「おっ! あった、あった」
ボス猿の頭は胴体からかなり離れた位置まで飛ばされていた。
リキはそれを拾い上げ、まじまじと見る。
改めて見てみると、ボス猿の角は子分のモノより遥かに大きい。
もしかしたら、群れで一番大きな角を持っている者がボスになれるのかもしれない。
そんなことを考えながらリキは角を握る。
軽く息を吐いてから、大角を引き抜くために力を入れた。
「――まだ何か用か?」
気が付くと、逃げたはずの角猿たちが戻ってきていた。
リキに対し何かを訴えるように鳴いている。
先ほどの鳴き声と違い敵意は感じられない。
言葉はわからなくても想いは伝わる。
子分たちはボスの亡骸を取り返しに来たのだ。
「……意外と人望あったのか、このボス猿」
角のある生き物にとって角とは誇りだ。
それを奪われるということは、未来永劫消えることのない屈辱を心と身体に刻まれるということ。
鬼の角を持つリキにもそれはよくわかる。
「最後まで一歩も引かなかったことと子分たちに免じて、お前のその誇りだけは奪わないでおいてやる」
リキはそう言うと角から手を離し、その場から去っていった。




