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赤鬼の仮面  作者: 赤羽景
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目的地

「……ってわけで俺とレティは龍を倒して、なんか神殿みたいな感じの場所から魔法でワープしてこの森に来たってわけだ」


 リキはここに至るまでの経緯を正直にミズクに語った。

 ミズクはそれを黙って最後まで聞いたが、リキの話は到底信用できるものではなかった。


「信じられません」

 

「どこが?」


「全部ですよ! 全部!!」


 きょとんとした顔のリキにミズクが呆れ顔でそう返した。

 リキとしては懇切丁寧に説明したつもりだった。嘘もついていない。なので今の話でまさか一つも信じてもらえないとは思わなかった。

 一方ミズクからしてみれば、リキの話は最初から最後まで荒唐無稽なものだった。今の話で信じる人間など誰もいないと断言できるほどに。


「しょうがねェな。もう一回最初から説明してやるからよく聞けよ」


「結構です」


「何でだ?」


「何でって……」


 ミズクは少しイライラとした感じで続ける。


「いいですか? あなたが勇者と同じように別の世界からやってきた人間で、いないはずの魔女を救い、おまけに絶滅したはずの最強の龍を殺したなんて話、何度説明されても信じられるわけないでしょ」


「けどよ――」


「付け加えると、あなた達が魔界からここに来るために使ったと思われる転移魔法……この時代に使える人間がいるか怪しいくらいの超上級魔法です。それをそんな小さい子が使えるとは思えません。さらに時の牢獄に至っては聞いたことすらありませんし、たとえ伝説の魔女でもそんな魔法が使えるとは思えません」


 リキが口を挟む暇もなく、ミズクは捲し立てた。

 言いたいことを全て言い切った今も彼女はまだ息を荒げている。


「じゃあお前は俺達がウソをついていると思ってるのか?」


「……ウソをついているように見えないから困っているんです」


 ミズクが頭を抱える原因はそこだ。

 リキの話は、百人が聞いたら百人全員がデタラメだと言うようなレベルの話である。

 騙される可能性がゼロのウソ。そんなウソをついてもなんのメリットもない。

 ウソをつくなら子供でももう少しまともなウソを言うだろう。

 

 そしてミズクとしては認めたくないが、もしリキの言っていることが全て真実なら一応筋は通ってしまうのだ。

 二人の服装、言動、力。全てが普通ではない。

 だが今の話を信じればその普通でない状態も説明がついてしまう。

 デタラメとしか言いようのない馬鹿馬鹿しい話のはずなのに、信じたほうが矛盾や違和感が消えてしまうのだ。

 そしてなぜかミズクには二人を信じたいという気持ちもあった。


 頭を散々悩ませた末に、ミズクは一度ため息をつく。

 それから改めて言葉を紡いだ。


「傷を治してくれたことも盗賊を追い払ってくれたことにも感謝しています。あなた達が悪い人間ではないことも見ればわかります」


 真実か偽りか。今の段階でどれだけ悩んだところで答えは出せない。

 だからミズクは、話ではなく行動から二人の人間性を判断することにする。

 盗賊と戦ったことや傷の治癒をしてくれたことは、ミズクが見た紛れもない真実である。

 だから話は信じられなくても、信頼はしていいのかもしれない。


「……なのでこう思うことにします。あなた達は悪人ではないけど、自分のことを勇者や魔女だと本気で思っているヤバイ人達だと」


 ミズクは二人のことを頭のおかしい人達だと認定することで、自分を無理やり納得させることにした。


「ちょっと待て! 俺は異世界から来たが別に勇者ってわけじゃねェし、むしろ――」


「――?」


「……いや、なんでもない。とにかく俺は勇者じゃねェ」


 使命に従うなら、リキは勇者などではなくむしろ勇者の敵である。

 しかしそれを正直に伝えると、またややこしいことになりそうなので使命については伏せることにした。


「まぁ、いいや。過去の話はどうでも。信じても信じなくても特に何かが変わるわけでもねェしな。それより未来の話をしよう」


「未来?」


「俺達はこの森を抜けたい。お前もまさかこの森に住んでるってわけじゃねェだろ? 森を抜けてどこかの街とか村に行こうとしてるんじゃねェのか?」


「ええ、まあ……。私はザルヴァトルクに向かってます」


「そこに俺達も行きたい。案内してくれないか?」


「……ザルヴァトルクに何をしに行くんですか?」


「強いていうなら、やることを見つけるために行くって感じだ。ついて行っていいか?」


 ミズクは少し考えてから、


「……断っても後ろから追うつもりですよね?」


「まあな。でもどうせなら横に並んで一緒に行こうぜ」


「……わかりました。助けてくれた恩もありますし」


「決まりだな。目的地はザルなんとか。そこまでよろしく頼む」


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