時間
盗賊が気絶している間に、リキは戦利品の回収を始めた。
金に武器、他にも高く売れそうな物があればもらっておくことにする。
普通なら持ちきれない量でも『亜空間宝庫』があれば気にする必要はない。
無限に収納できるわけではないが、すぐにいっぱいになることもないので便利だ。
ポイントを酒に変える前にこれだけはもらっておいて本当に良かったと思う。
「リキ、なんだそれ?」
亜空間宝庫に次々と強奪した物を放り込んでいると、レティが興味深げな視線を向けてきた。
「友達にもらった便利グッズだ。たくさん仕舞えていつでもどこでも取り出せる。どれだけしまっても重くないから持ち運びもらくらく。使い方も簡単。亜空間を開いて手を出し入れするだけ。これだけ便利でお値段たったの500ポイントだ。おまけに今なら酒と不気味な人形もついてくる」
通販番組の売り文句みたいな説明を聞いたレティは、金色の瞳をキラキラと輝かせて、
「レティも欲しい」
「残念、今在庫はこれだけなんだ。だが何か仕舞いたい物がある時は、代わりに入れといてやるからそれで我慢してくれ」
「人も仕舞える?」
「いや、生き物は無理……っていうか怖っ! お前どんな使い方するつもりだよ!?」
怖いので詳細は聞かないでおいた。
あらかた亜空間宝庫に詰め終わったリキは、最後にアルバンが置いていった戦鎚を拾い上げた。
「魔晶武器とか言ってたっけ? レティ、これって結局どういう物なんだ?」
「知らない。レティの時代にはなかったから」
レティが魔晶武器について知らないのは意外だ。
魔法関係の品だろうから、魔女のレティなら当然知っているものと勝手に思っていた。
だがそんなことよりも気になったのは知らない理由だ。
レティの『時代』という言葉がリキの中で強く引っかかっていた。
「お前……あの中にどのぐらいいたんだ?」
「……すっごく長い時間」
「――――」
「『時の牢獄』の中は時間が進まない。時間が進まないから動くこともできない。外に出たくても何もできなかった」
「……意識はあったのか?」
そうでなければいいと思った。だが答えはわかりきっている。
レティは『何もできなかった』と、そう言った。
それを覚えているということは、つまりそういうことだろう。
「ずっとあった。あの中では死ぬことも許されなかった」
まさに生き地獄。あまりにも残酷な仕打ちだ。
こんな幼い少女にどうしてそんなことができるのだろうか。
身動きできないのに意識だけはずっとある。そしてそれが永久に続くという苦しみ。
普通ならとても耐えられない。どこかで心が壊れてしまうだろう。
「……辛かったな」
リキの口からはそんな言葉しか出てこなかった。
どんな慰めの言葉でもレティの心を癒すことはできないだろう。
リキにはその苦痛を想像することしかできないのだから。
それでも、少しでもレティの受けた苦しみを理解し、彼女の痛みに寄り添ってあげたかった。
「うん。でも、今は辛くない」
過ぎ去った時間はもう戻らない。
しかし少なくとも、少女は永久に続くと思われた苦しみから解放されたのだ。
それがせめてもの救いだと今は信じよう。




