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赤鬼の仮面  作者: 赤羽景
12/19

転移

 炎神龍ヴォルガンを討ち取った二人は勝利の余韻に浸る暇もなく、すぐにその場を立ち去ることになった。

 いま二人は少女の風の力で空を飛び移動している。


「おーい! どこまで行くんだ? この辺ならもう降りられるんじゃねーか?」


「…………」


 地上が火の海だから安全地帯まで移動するのかと思えば、そうではないようだった。

 すでに炎上する森の範囲外まで来ているというのに少女は一向に降りようとしない。

 それどころかどんどんスピードを上げているくらいだ。まるで何かから逃げるように。

 少女の風の力で飛んでいるのでリキには逆らえない。

 無理に暴れれば地上に落として捨てられるかもしれないので、行先は少女に身を委ねるしかない。

 せめてどこに向かっているのかだけでも教えてもらいたのだが、さっきから何度聞いても答えてくれない。


「……着いた」


「え、どこに?」


 地上には草原が広がっていて特に何もないように見えるがどうやら目的地に着いたようだった。

 二人はゆるやかに草原に降り立つ。


「おー、久しぶりの大地だ」


 やっと安全な地に足を下ろすことができてリキはほっとした。

 空の旅も悪くはなかったが、飛んでいる間は行動の選択権を全て奪われてしまうため、落ち着かなかった。

 大地に足を下ろしたらどっと疲れが襲ってきた。リキはヴォルガンとの戦いで体力のほとんどを使い切っていたため、疲労に負け草原の上で手足を大の字に広げて横になった。

 

「起きて」


 そのまま寝てしまいそうになったが、少女がリキの手を引っ張って強引に起こした。

 嫌々体を起こしたリキは眼前の光景に思わず驚いて声を上げた。


「は? なんだよこれ……さっきまで何もなかったよな?」


 何もなかったはずの草原に突如謎の建造物が姿を現していた。屋根はなくボロボロの石柱が何本か並んでいる。石柱が囲む中心には祭壇のようなものがあった。


「何かの遺跡かこれ?」


「来て」


 少女に手を引かれ、リキは祭壇の前まで移動する。祭壇の前の床にはヴォルガンが空に作ったのと同じような魔法陣が描かれていた。


「おい、ここで何するんだ?」


「安全な場所に転移する」


「安全な場所? ここは危険なのか?」


 少女は頷いた。リキは少女に説明を求めた。


「ここは魔界だから。それに時の牢獄を破壊したことやヴォルガンを殺したことももう伝わっていると思う」


「伝わる? 誰にだ?」


「……リリス」


「よくわからんがそいつらから逃げるってことか?」


 少女は再び頷くと何やらぶつぶつと呪文を唱え始めた。すると二人の足元の魔法陣が輝き始める。光はどんどん強くなり二人を包み込んでいく。


「はなれないで」


「お、おう」


 リキはしゃがんで少女に抱きついてしがみつく。


「そこまでしなくてもいい」


「あ、そうなの」


 とりあえず肩に手を置くだけにしておいた。

 光りが強くなりすぎてもう目を開けていられなくなった。

 次の瞬間、不思議な感覚が包んだ。周りの音が消えたと思ったら、今度はゴムが伸びるように全身を引っ張られる感覚が襲った。痛みはないがあまり気分のいいものではない。

 それから数秒後に感覚が徐々に戻っていくのを感じた。


「終わった」


 少女の声がしてリキは目を開ける。その目に映る景色はさっきとはまるで違った。

 草原は消え、また二人は森の中にいた。


「龍と戦った森……じゃねーな。どこだここ?」


 生えている木の種類が全く違うため別の森なのは間違いない。


「来て」


 また少女に手を引っ張られて二人は遺跡の外に出る。よく見ると遺跡もさっきのものと微妙に異なっている。外から見るとよくわかった。


 遺跡から出ると少女は振り返って、


翠の突風(レイ・ラファール)


「え!?」


 少女は風の魔法で風を呼び石柱を倒して遺跡の祭壇を破壊してしまった。リキは少しの間、唖然としたが少女の意図に気が付き納得した。


「壊して追って来れないようにしたのか……」


 倒壊した遺跡を眺めていると横にいた少女が崩れ落ちた。


「お、おい! 大丈夫か!?」


 呼びかけるが返事はない。代わりに小さな寝息が聞こえてきた。

 どうやら少女は疲れて眠ってしまったようだった。

 考えてみたらそれも当たり前のことだ。もともとボロボロの状態で結界から出てきた上にヴォルガンとの戦いではリキ以上に無理をしていた。

 意識を保つのももう限界だったのだろう。


「無理させてごめんな……えーと――」


 そういえばまだお互いに名前すら知らない状態だった。


「起きたら名前教えてくれよな。俺も……もう……」


 リキも体力の限界を迎え、少女の横に倒れるように眠りについた。

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