School Life ふぁんたじー 1 後編
「んで、何で俺たちはこんなところに居るんだ?」
俺たちはリームの導くままに暗い森を歩いていた。
あの後、全員で話し合ってリームの願いを聞く事にした。
他に帰れそうな方法がないからな。
「はぁ……あなたは人の話を聞いてなかったんですか? 貴方たちの実力を見るって言ったじゃないですか」
リームはため息をついた後、歩きながら俺に説明した。
「それは聞いた。だが、その具体的には何をやるんだ?」
俺がそう尋ねると……。
「あっ、居たわ!」
開けた場所にたどり着くとリームは何かを見つけたらしく指を指しながらそう叫ぶ。
俺たちはすぐに指した方を見る。
すると、そこに居たのは巨大な一つ目の化け物だった。
「えっと、リームさん」
「何?」
「実力を見るってまさか……」
恐る恐る俺はリームに尋ねてみる。
すると……。
「そう! あのサイクロプスを倒す事よ!」
「ふざけんなぁぁぁ!」
予想通りにそう叫んだリームに対して俺はそう怒鳴った。
「あんなのをどう倒せばいいんだよ! しかも丸腰で!」
俺は化け物を指差しながらそう叫ぶ。
すると、リームは呆れるようにため息をついた。
そして、こちらを見る。
「最初から貴方には別に期待なんてしてないわ。だって、貴方弱そうだし」
「いやいや! あんなのに勝てる高校生が居たら化け物と同じだろ!」
「はぁ? サイクロプス程度に勝てないようで私の願いを叶えられると思ってるの?」
「いや、それとこれは別問題だろ!」
呆れているリームに対して俺は必死に反論した。
だが、彼女は話が通じるどころか訳わからない事を言い出す。
「あの二人とも……」
「別問題じゃないわ! あんな雑魚いモンスターが倒せないんじゃ召喚した意味がにないわ!」
「だったら、あいつはお前が倒せばいいだろ! !」
「私は今、召喚の制約で半分以下の力しか使えないの! だから、サイクロプスでも手こずるの!」
「だったら、こんな所に連れていくなよ!」
お互いに一歩も引かない俺とリーム。
すると……。
「ねぇ、二人とも!」
「何だよ!」「何よ!」
「化け物が目の前に居るんだけど!」
『えっ?』
星がそう怒鳴ると俺とリームは正面を向く。
あっ、ほんとだ。
怪物が目の前に居る。
という事かこれって……。
「なぁ……これってめちゃくちゃピンチだよな……」
「そうですね……」
「とりあえず……」
俺とリームが話した後、全員が化け物に背を向ける。
そして……。
「逃げろぉー!」
俺がそう叫んだ瞬間、全員一斉に走り出した。
逃げていく俺たちを見た化け物はものすごい速さで追いかけてくる。
「なぁ、なんとかならないのか!? 倒せなくても何かあるだろ!」
「今日は力を使いすぎてもう駄目なの! これ以上力を使ったら私が死んじゃう! だから、早く倒して!」
「お前、とことん人頼りだな!」
「あーん、星。私疲れちゃった。私をお姫さまだっこして逃げてほしいわ」
「はぁ? 何で僕がそんな事をやらないといけない? 耕史ならともかく君みたいな脳味噌お花畑はあの怪物の餌になればいいよ。いや、なって僕たちの役に立て」
「もう星ってば。照れちゃって可愛いんだからか!」
俺がリームと揉めてる間、星はいつものように陸の相手をしていた。
こんな状況で揉めてる俺が言うのも何だけどお前ら、意外と余裕があるな!
って、あれ?
「ちょっと待った! 詩織はどこに行った!?」
「あれ、そう言えば居ない!」
「あぁ、それなら大丈夫よ。詩織なら私たちが走り出した瞬間に気配を消して隠れたから」
俺と星が詩織が居ない事に焦ってると陸がそう説明した。
あの一瞬で気配を消して隠れたのか。
さすが詩織だな。
俺がそう考えていると……。
「あっ!」
星が道端の石に躓き、そう声をあげながら倒れる。
「星!」
すぐに気づいた俺は走るのをやめ、星の方を見る。
陸たちも走るのをやめて星の方を見るが、時はすでに遅し。
怪物は星の目の前で止まっていた。
「くそっ!」
怪物が星に向かって攻撃を仕掛けようとしたと同時に俺は彼の方へと走り出した。
この状況で何が出来るかなんて分からねぇ……。
だが、この状況で何もしなかったら……。
「こぉーうぅーじぃー!」
死んでも死に切れなねぇ!
「せぇーいぃー!」
お互いに右手を伸ばす俺たち。
すると、俺の手が光りだした。
段々と光は剣の形に変わっていく。
その事に気づいた俺はいつの間にか左手で星を抱えながら化け物の背後に立っていた。
「なんだ……? 何が起きた……?」
俺は今、起きた事が理解できずに右手の剣を見ていた。
すると、化け物が苦しむ声が聞こえてきた。
すぐに確認する為に後ろを向くと怪物の腕に数カ所に切り傷が刻まれていた。
「一体何が……」
「それがこの世界の力よ!」
ますます混乱する俺にリームがそう叫ぶ。
これが力……?
「この世界の力――クリエイトは想像力が高ければ高いほど強くなる! 今、貴方は彼を助けたい一心で力が発動し助けながらサイクロプスにダメージを与えたんだわ!」
この世界の力とともに先ほどの状況を叫びながら説明するリーム。
なるほどな……。
まだちょっと理解し難い所はあるが星を助けられたんだ。
今はそれだけで十分だ。
俺がそう考えていると怪物は傷をつけられた事に怒っているのか此方の方を向いた。
それに気づいた俺は星を地面に下ろし、臨戦態勢を整えながら怪物に近づく。
「耕史……」
「大丈夫だ。俺が守ってやる」
怖がっている星を俺が怪していると……。
「許せない……!」
いつの間にか化け物の近くに居た陸がドスを聞かせた声でそう呟いた。
なんだ……?
陸の奴、ものすごいオーラみたいなのが周りに漂っているんだが……。
「私の夫(確定事項)に怖がらせた挙句、攻撃を喰らわせようなんて許せない……」
陸がそう呟くと更にオーラみたいなのが大きくなっていく。
それを見ていた俺や化け物は冷や汗が止まらなくてしょうがなかった。
「何より……」
凄まじくなったオーラみたいなのものを陸は無意識にやってるのか右手に集めながら拳へと変えていく。
そして……。
「その状況を利用して星といちゃいちゃしてる耕史が許せないのぉぉぉお!」
そう叫びながら一気に怪物の懐に入る陸。
そして、凄まじいオーラみたいなものを纏った右拳を怪物に放った。
拳を食らった怪物はすぐに粉々の肉片になり、周りに血飛沫ともに飛び散る。
もちろん近くに居た俺たちは肉片やら血飛沫を浴びた。
「……なんだこれ」
肉片やら血飛沫やらが周りに全部飛び散った後、俺は周りの状況を理解できずに呆れていた。
「恐らくあれが陸の力なんでしょうね」
「あれ詩織さん、いつの間に!?」
いつの間にか俺たちの側に居た詩織に驚く星。
けど、今はそんな事どうでもいいや。
あれが陸の力だって?
いや、俺の力と天と地の差がありすぎだろ!?
何?
さっき俺が右手の剣を見て驚きを隠せなかった状況は?
その状況に驚いていた自分が恥ずかしくてしょうがないわ!
「はぁ、すっきり!」
俺がそう考えている一方で見事というまでに満足した顔をしている陸。
おい、そんな満足した顔を今の俺に見せるな!
守ってやるって言い切りながら何も出来なかった自分が余計に虚しくなるから!
「素晴らしいです! 我が救世主様!」
声を荒げながら陸に近づくリーム。
そして、周りに飛び散った血などを気にせずに彼女の前で跪く。
「やはり貴方を呼んで正解でした。なんかおまけで三人もついてきましたが……」
陸の前でそう淡々と告げるリーム。
それって事はもしかして……。
「僕たちってまさか……」
「陸のおまけで呼ばれたって事ですか……」
俺が口にしなかった事を星と詩織が口に出していた。
おいおい、冗談きついぜ。
こんな所まで連れてこられてまで陸のおまけって。
本当にまじで……。
「ふざけんじゃねぇえええぇ!」
俺は今まで溜まっていた鬱憤ともに叫び声を上げた。
その声にリーム以外驚きを隠せなかった。
声を上げた後、俺はリームの所まで歩いていく。
それに気づいたリームも陸の前で跪くの辞めて立ち上がり、俺の元へと歩いていく。
「こんな世界に無理やり呼び出された挙句、陸のおまけってふざけんの大概にしろ! おまけだったら、俺たちだけでも元の世界に戻しやがれ!」
「それも無理だわ! 召喚された者は全員、召喚した者の願いの対象になるから貴方たちも私の願いを叶えないと帰れないわ!」
「じゃあ、何か? 陸の周りに犬や猫が居て、一緒に召喚されたら犬や猫もお前の願いの対象になるって事か?」
「ええ、そうよ!」
「ますます無茶苦茶な魔法だな!」
「まぁ、星と詩織だっけ? 貴方たちはこの世界でも高い方だから使えるわ! そこに居る守ってやると言いながら我が救世主様に助けられた何処ぞの馬の骨と違って!」
「何だと!?」
お互いに目の前までたどり着くと俺とリームは自分が思ってる事を怒鳴り散らした。
くそっ、こいつ言いたい放題言いやがって!
このままやっても根本的な問題の解決にならなねぇ!
と言っても帰る方法はこいつが言ってる方法しかないのが現状だ。
まぁ、嘘かもしれないが。
……仕方ない。
当初の目的どおりにやるしかないか。
ものすっごく嫌だけどな!
「じゃあ、リーム! お前の願いはなんだ! とっとと願いを叶えて俺たちは元の世界に帰る!」
「あら、そんなにやる気を出してくれて嬉しいわね」
「いいからとっとと答えろ!」
「……分かったわ。言うわ」
俺はリームに願いを言う事を催促すると意外にすんなり聞いてくれた。
さて、どんな願いだ?
漫画とかだとこういう展開だとよくある願いは魔王退治か?
結構無茶苦茶だが帰る為ならば頑張るしかない。
「私の願いは……!」
「願いは?」
「私の学校を有名にして再建させる事! その為に救世主様たちには生徒になってもらい、我が学校の顔になってもらいます!」
『はぁ?』
リームの願いは予想の斜めすぎて聞いていた俺たちは何を言っているか分からなかった。
けれど、これだけは分かった。
どうやら、俺たちの学校生活は異世界に来ても続きそうだ。