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第十一章 優月のターンと空中戦01★

 リング上。オレは左手奥のコーナーから、場外に落ちたかぐやをジッと睨みつける。


『さあ、佐野! 場外の栗原の様子をうかがっている! これは何かを狙っているのかっ!?』


 通常より広めの場外。かぐやがいるのは、リングと鉄柵のほぼ中央。右腕を抑えていたかぐやは、ようやく立ち上がろうと片膝を着いた。


 ここだっ!


『おーっと、佐野! 対角線のコーナーに走る。そしてオンザ、トップロープ! これはまさかっ!? バミューダ・トライアングルだぁぁぁーーっ!!』


 そう、明菜さんの解説の通り。場外のがぐやが立ち上がった瞬間を狙い、コーナーポスト左手側のトップロープに跳び乗り、バク転で右手側のトップロープを跳び越えながら場外へと跳んだ。


「アマいわ、優人っ!」


 放物線を描いて跳ぶオレ。しかしかぐやは、その放物線の内側へ素早く移動して躱しにいく。


『ああっと、栗原っ! 素早く躱すっ! これは自爆だぁぁーっ!』


 ふんっ! アマいのはお前だ、かぐや。躱されるのも折り込み済みだよ。


『い、いや、なんとっ!? 自爆かと思われた佐野! バミューダを躱されながらも、足から場外に着地っ!?』

「えっ!?」


 明菜さんの実況に驚きの表情を見せ、振り返るかぐや。


 オレは正面からその肩に跳び乗り、かぐやの頭部を自分の両膝でシッカリとはさみ込んだ。そしてバク転をする要領でかぐやの身体ごと後方へ回転し、場外の固いマットへ頭頂部を叩きつける。


『決まったぁぁぁっ!! 大技、フランケンシュタイナー(*01)が場外で栗原に炸裂っ!!』


 よしっ! 手応え充分。ただでさえ固い場外マットに、不意を突かれた形でのフランケンシュタイナー。かぐやは充分な受け身が取れずに、軽い脳震盪を起こしてるはずだ。


 フラつくかぐやを強引に引きずり起こし、オレはすぐさまエプロンへと上がった。


 そして、かぐやに背を向ける形でトップロープを両手で掴むと、そのトップロープへ両足で飛び乗り、勢いつけ後方へ宙返り。そのまま場外のかぐやへ体当たりを敢行する。


『ラ・ケブラーダ(*02)が栗原にジャストミィィィィィートッ!! しかもトップロープからのケブラーダ! 地上3メートルからの急降下爆撃がビヨンドジャストミィィィートッ!! まさにジャストミートを超えるジャストミートだぁぁぁぁーーっ!!』

「ぐっ、がっ!」


 よしっ! 確かにジャストミートだ。


 仰向けにダウンするかぐやの上へ覆い被さるような体勢だった身体を起こし、オレはスクッと立ち上がる。

 フランケンシュタイナーとラ・ケブラーダの二連発をマトモに食らったんだ、ダメージはかなりのモノだろう。


 オレは、なかなか立ち上がれないかぐやの腕を掴んで、強引に引きずり起こし、その身体をリング内へと押し込んだ。



  ※※  ※※  ※※



「フフン♪ よくやった、佐野。これで、場外を広くした甲斐があったってもんだ」

「…………」

「…………」


 異様な程の盛り上がりを見せるファン達に対して、満足そうに笑う佳華。そしてその両隣では、詩織と絵梨奈がア然とした表情でスクリーンに目を向けていた。


 ファンの様相は先ほどまでと一転、かぐやをリングに戻した佐野のクリーンなファイトに拍手を贈り、会場は優月コールの大合唱が起きている。


『試合は序盤から凄い盛り上がりを見せています! 今日がデビュー戦という佐野が、あの元三冠王者にして絶対王者の栗原かぐやを一方的に攻め立てるなど、誰が予想したでしょかっ!? 解説の川井さん。ここまでの試合展開をどうご覧になりすか?』

『い、いや、あの……佐野のセンスは、し、新人としては、中々ですね……ま、まあ、それでも栗原は、佐野の攻撃を余裕で受け止めています。まだまだ栗原選手の横綱相撲と言ったところですね……』


 イヤホンから聞こえる川井の解説を、佳華は鼻で笑った。


「フンッ、ホントにそう見えるなら、評論家なんて辞めちまえ」


 そう呟いた佳華の横を、数人の記者達が携帯電話を片手に会場の外へと走って行く。


「佐野優月だ、佐野優月っ!! そう栗原の対戦相手!」

「今すぐ資料を集めろ! あと明日の一面の差し替えの準備もしておけっ!」

「ああっ!? 佐野が栗原を押してんだよっ! テレビ観てねぇのかっ!? 下手すりゃ佐野優月の大金星もあり得るぞっ!?」

「なにっ!? 栗原がお情けで受けてやってんだろって? バカヤロー! 俺が何年記者やってると思ってんだ! ありゃあ本物だっ!!」


 プロレス好きなファンの反応が優月コールの大合唱なら、プロレス専門家の正しい反応はこうだろう。

 そして選手の正しい反応はといえば――


 佳華は両隣にいる二人へと目を向けた。


「あ、ありえねぇだろ……バミューダ躱されて足から着地するなんてよ……」

「しかも、着地と同時に場外フランケンからトップロープケブラーダって……」


 実際に選手としてプロレスのリングに上っている二人だからこそ、さっき佐野がやった事の難易度の高さが実感できるのだろう。


 そう呟きながらも、二人の目はスクリーンに釘付けになっていた……

 いや、驚愕に目が釘付けになっているのは、彼女達だけじゃない。赤青両コーナーのセコンド達も呆然としながら、目はリングに釘付けになっている。


 再び満足そうな笑みを浮べながら、スクリーンへと視線を戻す佳華。


 スクリーンの中では、かぐやをリングに戻した佐野がニュートラルコーナー近くのエプロンへと上がっていた。

 そして両手でトップロープを掴むと、一気にコーナーポストの最上階に飛び乗る佐野。


『さあ佐野っ、再びオンザトップロープッ! リング内の栗原に対して、また何か狙っているぞ!』


 頭を振りながらフラフラと立ち上がるかぐや。佐野はそれを確認すると、トップロープから前方へ回転するように跳び、背中からかぐやに向かってぶち当たっていった。


『ジャストミィィィーート! 佐野の空中殺法、ウルトラ・タイガードロップが炸裂っ!! 佐野の身体が流星となって、栗原の降り注ぐぅぅぅーっ!! しかし佐野っ! 栗原に休むヒマを与えません。ダウンする栗原を引きずり起こして更に攻撃をたたみかける!』


 佐野は足元のフラ付くかぐやを対角線のコーナーへと振った。背中からコーナーポストへ勢いよく衝突するかぐや。


 コーナーを背にするかぐやに向かい、佐野が勢い良く走り出す。そして左足でセカンドロープを踏み台にして跳び上がり、後方へと宙返りしながら右足でかぐやのアゴを勢いよく蹴り上げた。


『佐野っ! 打点の高いサマーソルトキックッ! コーナーへ釘付けになっている栗原のアゴを、容赦なく蹴り上げるぅーーっ!』


 顎を勢い良く蹴り上げられ、かぐやは脳震盪を起こしたように膝から崩れ落ちる。


 佐野は綺麗な姿勢で着地を決めると、すぐさまかぐやの足元へと回った。そして、うつ伏せに倒れるかぐやの両膝の裏側を踏み付けながら、足首を自分の膝裏に絡ませる。


 この体勢から次の技を仕掛けるとすれば、膝を着かせたままアゴを掴んで後方へ倒れ込み、相手の上体を反り上げるカベルナリアか、両手首を掴んで後方に倒れ込み両手両足を伸ばして相手を宙吊り状態で絞り上げる吊り天井固めになるであろう。


 しかし……

(*01)フランケンシュタイナー

挿絵(By みてみん)

相手の肩へ正面から逆肩車のように跳び乗り、両足の太股付近で相手頭部を挟み込む。

そのままバック宙のような形で回転しつつ、相手の脳天をマットに叩きつける大技。



(*02)ラ・ケブラーダ

挿絵(By みてみん)

場外の相手に、背を向けるようエプロンに立つ。

そしてセカンドロープやトップロープに跳び乗り、その反動を使いバク転をしながら相手にぶつかって行く。



(*03)ウルトラ・タイガードロップ

挿絵(By みてみん)

前方回転で、背中から相手に体当たりしていく技。

トップロープからや、リング内から場外へ飛んだりと、いくつかのバリエーションがある。



(*04)サマーソルトキック

挿絵(By みてみん)

コーナーにいる相手めがけて助走をつけて走り込み、左足でセカンドロープを踏み切りバク宙をしながら、相手の顎や胸板を蹴り上げる。

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