第7話 ファーストコンタクト
どうにか固有結界から脱出に成功すると、両親が心配そうな目でこちらを見ていた。
どうやら気絶した俺たちはベッドに移動させられていたらしい。
「アリス、大丈夫かい?」
パパさんまじ泣きそう。
「ごめん、パパ、ママ」
起き上がったアリスは、両親とハグを交わす。
「無事でいてよかったわ。何があったの?」
「魔法が使えたと思ったら、すごい勢いで。 それからクラクラしたの」
「たぶん魔力切れね。 アリスは初めてだったかもね。これから気をつけなさい。」
なるほど、魔力が切れるとああなるらしい。
自分も気を付けなければな。
パパさんとママさんとのやりとりを終えてアリスが部屋に一人になった。
アリスとしては両親に心配をかけて少し反省しているようだ。
「しかし、驚いたな。魔法が使えるにようになってすぐの魔力量と威力じゃないぞ、あれは」
「そうね。黙っていたけど実は剣技ももうすぐ中級クラスだそうよ。」
「何をしているか実は俺も知っていたんだが、中級だって? 魔法も合わされば俺を超えるかもしれんな。」
「性格もそうだけど、あの娘は成長が速いわね。どんどん大きくなっていくわ。」
「心配はつきないが、成長が速い分アリスにはいろいろな機会を与えるべきだ。二人でアリスを見守ろう。」
扉の向こうから両親の声が聞こえる。
アリスも聞いていたみたいだ。今では嬉しさの感情が大きくなっている。
「修行がばれていたのは想定外だけど。でも魔法が! 魔法が出るようになったわ!両親も喜んでいたし!」
『いや、魔法使ったの俺なんだけどな。』
「え?」
『え?』
あ、行かん。つい感情が漏れた。
そういや、魔女さんが馴染んでいくうちに分かるって言ってたけど、これも魔眼の能力か。
『あー、俺ね。悪い奴じゃないよ。俺は君の眼でカナタっていうんだ。』
アリスの感情が伝わってくるが、どうやらそこまで怖がってはいないようだ。
「……うーん、確かになんとなく私の眼から声が聞こえる気がする。不思議な感覚だね。分かった。信じてあげる。確かに最近、眼がうずくと思ってたけど。あなたのせいだったのね。」
『ごめん、どうやらそうみたいだ。』
「あなた……ううん、カナタか。……カナタっていったい何なの。正直、怖いんだけど。」
『いやぁ、俺も人づてに聞いた話なんだけどな―――』
◇◆◇◆
白の世界までを話を聞いたアリスの最初の一言はこうである。
「……あなたのせいで私、魔法使えないの!?」である。それに関しては謝り続けるほかなかった。
「ふーん、そっかエルフの里かぁ。まぁちょうどいっかな。私も冒険者になろうと思っていたし。」
やはりアリスはお転婆さんのようです。
冒険者が将来の夢なのだろうか。
「惜しいけど違うわ。私はすぐにても冒険者になりたいの。」
こんな歳から可能なのだろうか。
「私はこう見えてももうすぐ10歳なのよ。人にもよるけどもう働いている子もいるくらいなんだよ。」
やはり早くから働く子がいるような時代みたいだな。
あのパパさんの言い方からすると案外、冒険者になるのも許してくれそうではあるな。
「それに私、剣の腕なら年上の人にだって負けないんだから。」
『なら、そこに俺の魔法が加われば最強だな。目指すか最強の魔法剣士』
案外、剣を振り回しながら魔法が打てるとすると本気で強くなれそうだな。
「いいねぇ、魔法剣士。かっこいい響きだね。でもカナタは魔法なんてまだ使いこなせてもいないんでしょ。ちゃんと腕を磨いといてよね。」
もちろんそのつもりである。彼女の夢が冒険とあっては強さはいくらあっても足りないだろう。
さしあたって知識も必要になってくるだろうしな。
知識面でいえば俺はサポートできそうだ。
『確かにそうだな。そのためにも魔法書の類とか冒険に関する書物をもらえると助かるんだが……』
「そっか、固有世界があるからそこで勉強できるのか。便利だね」
彼女は呑み込みが早くて助かるな。
「とりあえず明日当たりパパに相談ね」