第4話 修行2
シノンとじいさんとの剣術の修行を終え、帰宅すると親父さんが帰宅していたようだ。
親父さんの容姿もまたイケメンであり、黒髪のほどよいマッチョであった。アリスの黒髪は親父さんからの遺伝のようだ。
「おかえりアリス、今日もシノンちゃんと遊んできたのかい?」
親父さんが手を広げると挨拶代わりのハグを交わす。
男性が俺にハグをするとか正直気持ち悪いが、アリスの心の影響なのか嫌ではなかった。この感覚なら下手したら男性に抱かれても嫌ではないのかもしれない…そんなのは嫌だが。
「うん、おなかすいた」
今回は朝と違いどうやらやせ我慢ではなく食欲があるようだ。そりゃあれだけ動いたら腹がへるよな。
「そうか、もうママがお昼ご飯を作ってくれているよ。身体の汗を落としておいで」
身体の汗を落としたアリスは食事にありついていた。
グラタンのような見栄えのものに香辛料がふんだんに入った料理をいただく中で、お昼後の予定を親父さんが訪ねた。
「お昼のあとはいつもの修行かな?」
「うん」
「アリスはこの2、3日で進歩があったみたいよ」
「それは本当か? それなら、いつもの雑務をさっさと片付けたらアリスの様子をみるとしようか」
昼食後も修行のようだ。一日通して遊びなしの子供とか聞いたことないが、目標があり努力することは悪いことじゃない。
話の内容からして剣術のように技術習得に時間を要するような内容のようだ。魔法の修行であればなおのこと、はやく見てみたい気もする。
「さて、今日こそはやってみせるんだから」
昼食が終わって、家の庭のちょうど木陰になるような位置にきて独り言を漏らし、おもむろにあぐらをかく。
宗教的な祈りなどでないのなら十中八九で魔法かそれに似た力の行使の修行であろう。
アリスが目を閉じる……集中しているのが分かる。
アリスが集中する先を俺も感じることができる。
正直、俺は驚きを隠せなかった。まるで昔からあなたには尻尾や翼が生えていたんですよといわれた気分だった。
アリスが集中してはじめて、俺はその体の一部を認識することできた。
そこにあることが当たり前すぎて気づかなかったのだ。
尻尾や翼のように物理的に目視することができるものではない。ここが魔力を発動するための器官なんだろう。
次第に脊髄や胸にかけてから熱さや振動にも似た何かを感じだす。実際に身体が熱くなったり揺れたわけではない。
これが魔法を使うという感覚なのか。
その魔力を感じてかアリスは目を開け、右の手から魔法を放つようなポーズをとる
魔力はとんでもない熱量を持ち始め、集積した魔力のほんの一部が腕に流れ始める。
一つの魔法にここまでの熱量を感じるものなのだろうか。
すさまじい熱量をせき止めている抵抗のようなものを器官から感じる。それゆえに腕には微々たる量しかまわっていかない。
「くぅうっ! まだまだここからよ! せっかくここまでできるようになったんだから! 」
あまりの辛さにアリスが漏らし始めた。……そういやアリス独り言多いな。
「っまだまだなんだからぁあ!」
だがもう限界だと俺は思う。痛いとさえ思えるほどの抵抗だから子供のアリスが耐えられるはずがない。
しかし、そんな俺の思いを裏切りアリスはあれから1分以上耐え続けた。
子供なのにここまで我慢できるのか。
どうにか助けてやりたいが俺は眺めるだけしかできない。手や足が動かないのはすでに確認済みなのだ。
…いやまてよ? 手足は無理でも俺の自我もまた魔法的なファンタジーにより成り立っているのなら魔法的器官を動かすことは例外的に可能ではないだろうか。
すぐさま俺は試してみる。そしてすぐさま確信する。
抵抗が動いたのだ。やったぞ! 動かせる。
『動く! 動くぞ! っはは! 』
「え!?」
『え?』
俺の声が彼女に届いたと分かったのも束の間、魔力の奔流が一気に腕に流れ出した。
『やっやべぇ! 何とか抑えないと…』
そんな思考と同時に腕からは爆発音を伴うとんでもない量の閃光があふれ出し、俺とアリスはその衝撃で地面を転がり家にぶつかる。
「っうぅ」
衝撃による声を漏らしつつ顔をあげると木が倒れ燃えているではないか。
「お父さんかお母さん呼ばなきゃ」
すぐさま行動にうつしはじめたその時、視界がゆらいだ。
ああこれ、本当にまずいことになったぞ。火の前で気絶しちまう。俺の異世界人生1日で終了の可能性……見え…てき――
最近、1話ごとの文字数に悩んだり。改行の仕方に悩んでいます。好きな作家さんを見るとそれぞれ改行の扱い方は違うみたいですね。
いつかきれいに書けるようになりたいなぁ。と、思うようになりました。
この作品を通して、執筆の技術・作法や表現力もあげられたらと思います。