そして二人は (ショートショート85)
廃棄物の埋め立てからなる島があった。
今はまだ無人だが、いずれ土地を管理する市によって、リゾート地として開発されることになっている。
そんなある日。
この島に大量のハエが発生した。
「早急に駆除するんだ」
市長の指示のもと。
職員によって殺虫剤が散布され、島にいたハエはみるみる激減した。
ところが……。
一年もたたないうちに、ハエは再び島じゅうに広がった。
殺虫剤に抵抗力をつけたのだ。
市長は担当部下を集めた。
「このままではリゾート計画が遅れてしまう。新たな駆除を早急に検討するんだ」
「ひとつ、方法があります」
幹部の一人が提案し、説明を続ける。
「先般、今回のことを知った企業から申し入れがありました。とりあえず、その方法を試してみてはいかがでしょう?」
「どんな方法なんだね?」
「ハエをすべて、薬でメスにするそうです」
「なるほどなあ。メスばかりでは子孫を残せないからな」
「費用はいらないそうです。現在はまだ試験段階らしく、薬の効果を試させてくれと……」
「よし、やってみよう」
市長は即座に決断した。
翌日。
二人の職員が島に派遣された。
上陸して、すぐにテントを張った。そこを拠点として、島じゅうに薬を散布してまわるのだ。
「まるでキャンプみたいだな?」
一人がテントを見て言う。
「ああ、この薬さえなければな」
もう一人が指さす場所には、薬剤の入った巨大なタンクが設置されてあった。
作業は長期化し、過酷になることも考えられる。よって、屈強な若い男性職員が選ばれていた。
ハエ退治が始まった。
ほぼ毎日。
二人は散布機を背負い、ハエの大群を追っては薬の散布を続けた。
汗と薬にまみれながら……。
ひと月後。
薬の効果があらわれ始める。
「ハエが減り始めたな」
「そのようだ」
「がんばろうぜ」
「ああ」
三カ月後。
薬の効果が顕著になる。
「ハエが半分になったわ」
「そのようね」
「がんばろうね」
「ええ」
半年後。
島からハエが消えた。
そして。
二人はオネエになっていた。