お気楽女とヤンデレ君2
ども!お久しぶりです。最上千穂です。
さて、前回からぶっちゃけ三ヶ月ほど経ちました。今は響の家で彼の帰りを待っています。
赤い首輪をして…。
いやいや、好き好んでしているんじゃないよ?首輪に鍵がかかっていて外せないんだよ!!
お風呂の時だけは外してくれるけど…。え?かわいそう?案外そうでもないよ。そりゃ、最初の時は不便だったけど、馴れだね、馴れ。…イヤな馴れだなぁ。
監禁されてから、部屋から出ていない。ずっと響の部屋でごろごろしている。だからかな、昔(といっても三ヶ月前だけど)に比べて、少し太ったかも。響のご飯が美味しすぎて、ってのもあるけど。本当やばいんだよ、響のご飯。今も将来も千穂に美味しいものしか食べさせない!って一心で料理の腕を磨いていたらしい。プロ級で今までの人生で食べてきた母親の手作りというか残飯というか…のご飯が色あせてもう思い出せないくらい。たまに「ふふふ、千穂…俺がいないとダメな体になっちゃったね…」って耳元で囁かれたり「俺の作ったものが千穂の体の中に溜まって行くっていいね…」とか。…こじらせてるなぁって少し引いた。でも嫌いにはなってないんだよね。多分一生、何されても響のことは嫌いになれないかも。
「ただいま〜」
お、響が帰ってきた。お出迎えしなきゃ。
「おかえり〜響」
玄関に行くと、響が両手を広げながらニコニコしていた。(はいはい、あれね…)千穂は響と同じように両手を広げ、ぎゅっと抱きついた。恥ずかしいし、何度やってもなれない。さすがに、響が私のことを、その、恋愛感情で見ていることには気がついている。そこまで鈍感じゃない。それに、監禁なんて非常識なことをやっていても、私が逃げる手段を断っていないところが、響らしい。たとえば、この首輪の鍵。響の部屋の宝物入れ(私が昔、響の誕生日にあげたクッキーの箱)に入っていることは確認済み。だって目の前で鍵をチラつかせながら不安そうな表情でしまっていたし…。玄関の鍵だって、いつでも開けられるようになっている。ほんと、馬鹿だよね…。
「千穂、千穂、ちほ〜!!」
「はいはい。おかえりおかえり」
可愛いなぁ。前から思ってたけど、響って犬みたい。あれだ、ゴールデンレトリバー。いや、違う…?ま、なんの犬でもいっか。監禁生活が始まってからだけど、響のこういう接触が増えた。基本はハグ。たまにほっぺにキスとか。夜は一緒の布団で寝るけど、なんもない。手を握って一緒に寝るだけ。たまに響って本当に私のこと好きなのかな、なんて思うけど、なんていうか、目が語ってる。好き大好き、愛しいって。少し心臓がドキってした。それ以来あんまり響と視線を合わせないようにしているけど、バレてるかも。
「今日遅くなちゃってごめんね。お腹すいたでしょ」
「いや、別…」
ぐうううぅぅううぅ…。鳴った。私の腹が。はっ、恥ずかしっ!!!
「ふっ…、先にご飯作ろっか。今日は何がいい?」
「…オムライスで」
「了解」
響は離れがたい!と強くぎゅっとした後、鼻歌を歌いながらキッチンへと向かった。
それを見送った千穂はへなへな、と床に体を横たえ顔を手で覆った。
(甘い…甘すぎる…!顔が熱い。心臓もドキドキしてるし、耐えられない…)
頬を床に押し当て、熱を覚まそうとするが床の方が私の熱を吸い取っているみたいだ。
「いつも通りに、できてたかな…」
そう、私は響きに惹かれている。認めよう。いつからかわからないけれどゆっくり、だが確実に好きがどんどん増えていった。ていうか、ほだされた?が正解かも。だってあれが日常茶飯事…そりゃやられるよ。
「ちーほー、ご飯ー!」
「はーい!」
うう、顔赤くないかな…。まだ熱い気がする…。
キッチンへ行くと響が湯気のている熱々オムライスをちょうど机の上に置いたところだった。
「今日はケチャップ?デミ?」
「デミグラスソースで…」
「了解」
こういう何気ない仕草とか、会話とか、幸せだなって思える。それは相手が響だから…かな。
じっと見つめていると、その視線に気づいたのか響が私の方を向いた。
「…ん?何?」
「いや、なんでも…ない…」
明日…。明日、伝えてみようかな。響のことを好きになったって。響…喜んでくれるかな…。
***
起きたら響がいなかった。まぁ、こんな時間だから当たり前か。現在、16:30。響がもうじき学校から帰ってくる頃だ。昨日、夜遅くまで目が冴えてたからかな。今思うと緊張してたのかも。
響、早く帰ってこないかな…。
ドキドキしながらソファに座りクッションを抱えていると、玄関の方から声が聞こえてきた。響の声と、もう一人…女の子の声。どこかで聞いたことあるような…。
気になった千穂はゆっくりと立ち上がり、玄関へ向かって歩き出した。
***
「…うざい。その手を離せ」
「も〜っ照れちゃって!早く響くんのお家に入れてよ〜!」
「聞こえなかったのか。さっさと離せ」
「お家に入れてくれたら離してあげる〜♪」
玄関に向かうにつれ、喋り声がはっきりと聞こえてきた。
(この声って…美希?なんで響の家に…)
美希は、千穂の一歳下の妹である。ウェーブがかった明るい茶髪に、明るい茶色の瞳を持つ可愛い系の美少女だ。
なぜ美希がここに来たのか気になった千穂はそっと玄関のドアを開け、二人に対峙した。
「っ千穂…!!」
千穂を見た響はとろけそうな顔で千穂を抱きしめようと近づこうとしたがそれよりも早く、美希が千穂に近づき胸ぐらを掴み叫んだ。
「お姉ちゃん!!なんで響くん家にいるの!!?」
「なんでって…」
え、三ヶ月たってたけど気付いてなかったの!?まぁ、そんな予感はしていたけれども!
美希はドン、と千穂を押しのけ響の腕にすがりつき、その衝撃でよろけた千穂に指を突き指した。
「響くん!なんでお姉ちゃんがいるの!?私、二人きりがいいって言ったよね!?」
「…なんで俺がお前のいうことを聞かなきゃいけないんだよ。そもそも、勝手についてきたのはお前だろ」
「なんでそういうこというの?響くんのバカ!」
「ちっ…」
舌打ち…。響めちゃイラついてるし顔が…。
そんなこと気にもせずに…美希って、すごい。
「ねえ!響くん!!」
「はぁ…用がないならもう帰れ。邪魔」
響は美希の腕を振りほどき、千穂の方へ近づいてきた。
「えっ!ちょっと待ってよ!」
美希はまた響の腕を掴もうとするが、さっと避けられた。
「なん、で…」
俯いた美希の体が震える。千穂は心配になり美希に声をかけようとしたが、突然顔を上げた美希と目が合い、睨まれた。
「…の」
「え?」
「お姉ちゃんの…お姉ちゃんのせいだ!昔から響くんはお姉ちゃんばっかり!なんで私じゃダメなの!?お姉ちゃんよりも可愛いし、お母さんもお父さんもお姉ちゃんよりも私のことが素直で可愛いって!お姉ちゃんなんか産まなきゃよかったって言ってたよ!お姉ちゃんはいらない子なんだよ!響くんも…いらない子のお姉ちゃんじゃなくて、皆に愛される私のことを愛してよ!!」
わかっていた。わかっていたつもりだったけど…胸が、傷んだ。
響はそんな私をみたからだろうか。私の腕を引っ張り、優しく、強く、とても強く抱きしめた。
「ひび、き…」
響は千穂を抱きしめたまま、鋭い目つきで美希をみた。
「…千穂が、いらない子?そんなことない。俺はずっとずっと昔から…初めて会った時から千穂のことが好きだし、俺のこの先の人生においてめちゃくちゃ大切で必要な存在だ。それに…千穂はとても可愛い。可愛くて可愛くて他の男や女、誰にも見せたくないくらいめちゃくちゃ可愛い。誰よりも可愛い。千穂は俺にとっての心臓だ。なければ生きていけない大切な人だ」
「なっ…!そんなの嘘!!」
「嘘じゃない。俺は心の底から千穂のことが…好きだ」
(にゃっ、な、な…!何を言っているんだこいつは〜〜っ!!しかも最後の好きだ、でなんでこっちを向いていうかな!)
熱い。顔が赤くなっているのが見なくてもわかる。じわじわと先ほどの言葉が胸に迫る。とても、嬉しかった…。
ああ、落ちた。今の言葉で完全に響のことを心の底から好きだな、って思った。
「それにさ、お前さっき皆に愛されてるって言ってたよな」
「そうだよ!だから響くんも私のことっ!」
「皆に愛されるなら、俺のことなんていらないでしょ」
そう言った響は私の肩を抱き、家の中へ入って玄関のドアを勢いよく閉めた。
「やっ、響く…!!」
閉まる直前に、伸ばされた手と美希の泣きそうな顔が見えた。
***
しばらくドンドンとドアを叩く音がしていたが、しばらくするとそれも無くなった。
響はため息をついてから靴を脱ぎ、しゃがんで私の足元に跪いて靴を脱がせようとしてきた。さすがにそれは申し訳ないやら恥ずかしいやらで自分で脱ぐから!と急いで靴を脱いだ。そして立ち上がった響は私をお姫様抱っこして、リビングに向かった。
リビングに着くと、響は私を抱いたままソファに座った。響の膝の上に座る形になった私は重くないかな、と気になりつつも動けないでいた。
(気まずい……)
「千穂」
「な、なに…」
響は深呼吸をし、そして…。
「さっきも言った通り、俺は千穂のこと好きだよ。もちろん恋愛的な意味で。ずっとずっと、好きだった」
「響…」
「本当は、あんな状況で告うはずじゃなかったんだ。でもあいつが千穂のこと悪くいうからつい…」
響と目が合う。その視線が熱くて、無意識に体が震えた。響はそれに気づくと震えを抑えるかのようにぎゅ、と私の体を抱きしめた。
「千穂、愛してる。これから先もずっと、すっとずっと、俺とともにいてほしい」
熱を込めた真剣な眼差しで言われたその言葉はまるで…。
「プロポーズみたい…」
「うん。プロポーズだよ」
…え、私口に出てた!?バット両手で勢いよく自分の口を塞いだ。恥ずかしい…。
そんな千穂を愛おしそうな眼差しで見つめ、響は話し始めた。
「俺はまだ高校生だし、自分で稼いだり自立していないけど、その時まで待っててほしい」
響は千穂の左手をそっと手に取り、薬指の先にキスをした。
「いつか千穂に一番似合う指輪を買って、この指につけさせて」
響のこの言葉に全身が熱く、頭は真っ白になっていたけれど、私の答えなんて一つしかなかった。
「は、はい…」
***
後日。そういえば響に告白していないことに気づいたが、プロポーズを受けた=告白になる…のか?と悩みまくり結局告白することに。直後、響が号泣してデロ甘になった。好かれているのはわかっていたが、恋愛相手として好かれてると確信が持てなくて悩んでいたらしい。その時、私は一つ思ったことがある。
響の泣き顔って、可愛い…。
今回は甘々にしました。ヤンデレ要素はあまり出てないですが、思いついたら3か番外編としてヤンデレ全開な響くんを書きたいと思ってます。