そして始まる大問題 1-04
「しつれいしまーっす、っと」
開かれたドアの中に広がる空間。
きれいに揃えられた机に乱雑に広がる資料やプリントの山。
まだ朝間もないのに忙しなくそれに手をつける人いれば
整理整頓された机でコーヒーを啜りながら優雅に過ごす人もあり。
そんな独特な空間が形成されたここは大山高等学校の職員室、
その中で初めてここを訪れた彼は辺りをキョロキョロ見渡し
目的の人に目星をつける。
(茶髪気味のロン毛で野球帽が似合う女性教諭、ね……)
電話で聞いた彼女自身が語った特徴を
頭の中でもう一度反芻し、それらしい人を捕らえると
「あーおはようございます、原口先生」
「……」
近づき挨拶をすると
彼女はチラリと一度視線を向け、すぐにデスクへと戻す。
その表情はどこか苦々しく、腫れ物に触るような表情だった。
(ふむ、ハズレっと)
どうやら人違いだった、と、即座に答えを出した。
それは幼少期から培われた勘と状況判断力がなせる技。
そして、再び周囲を観察する。
しかし、その場には他に女性教諭は見当たらず、
どうしたもんかと思案していたところへそれは唐突に訪れた。
「おっはようございまーっっっっっす!」
ガラガラと乱雑に開けられたドアの音に負けない
馬鹿でかい、轟音のような挨拶で職員室に入ってきた女性。
パッと見、とても若くそれなりに整えられた容姿で
街中ですれ違えば美人と思われる部類だろう。
だが、顔より上にあるそれが彼女の外見をダメにしていた。
なぜなら、彼女の頭には熟れたキャップがあった。
全体がブルーに彩られ、額に輝くBsの文字。
それはどう見ても某プロ野球球団の帽子であり、
そこから彼は即座に前日のスポーツニュースを拾い出す。
先発の完投&打線爆発で快勝した結果を。
そして理解する、
今にも鼻歌を歌いそうなほどのニッコリ笑顔で
茶髪気味のロングヘアーを揺らして歩く彼女、
それを疎ましそうに遠くから眺める先生達の反応を。
(あー典型的なあれな先生かー)
プロ野球ファン、特に熱狂的なファンになると
前日の試合結果で当日のテンションがガラリと変わる。
自分の中だけでそれを完結出来る人物ならいいのだが、
それが対人関係まで及ぶ人だとあからさまに態度が大きく変わる。
快勝すればそれこそ朝から晩まで上機嫌でなんでもこなし、
大敗すれば一日中イライラしっぱなしで周りに八つ当たり、
なんて事も。
だからさっきの女性教諭は嫌な顔をしたんだ、
と、彼は納得した。
強いて言えば、あんな野球馬鹿と一緒にするな、
そんなところなのだろう。
出来ればそんな先生に入学初日からお世話になりたくはなかったが、
そういう訳にもいかず、小さく吐息をつきその女性教諭に彼は近づく。
その行為に彼女も気づいたのだろう、
おっ、と小さく発音しながら彼と視線が合い、
嬉しそうな顔を浮かべながら近づいてきた。
「おやおや早いね、野田昌也君!」
「えーと、おはようございます、原口先生」
とりあえず、無難に朝の挨拶を交わす事に成功した昌也は
今後の自分の学校生活に一抹の不安を残していた。
こちらではご無沙汰してますの作者です。
ただいま、我が楽天は西武との3連戦中でして
3位転落がすぐそこに……
8月でずいぶん貯金を減らしましたが、あと1ヶ月
なんとか踏ん張って日本シリーズ、果ては再び日本一になりたいものです。
頑張れ!イーグルス!
ここまでお読み頂きありがとうございます。