そして始まる大問題 1-03
「ん?」
ふと、小さく聞こえた異音へ視線を向ける。
そこにはしかし誰の姿もなく、
「あっ!梢ちゃんっ!」
慌てて駆けられた声に反応し、視線を戻すと
「わっ!っとと!」
大きく弧を描くように飛んできたボール、
珍しくノーバウンドで頭に届きそうな球を
慌ててキャッチし事なきを得る。
威力無い緩いボールだが、
硬式球のため、当たればそれなりに痛い。
その事を知っているだけに怪我には十分注意が必要で
「はー良かった……」
「えへへ、ごめんごめん」
相方の女性に苦笑いを浮かべながら謝る。
「ううん、こっちこそごめんね」
本当に申し訳なさそうにボールを投げた彼女が謝る。
全く悪くは無い、むしろ練習中に目を離した自分の方が100倍悪い。
だけど彼女は心底優しいから、
昔から変わらないそんな彼女に今一度手で謝りながら
「それで、千尋なんか聞こえなかった?」
「え?……うーん?」
梢の問いかけに頭を巡らせる千尋。
小さく小首を傾ける姿はまるで小動物のようで
その愛らしさに抱きつきたくなる衝動に駆られる。
でもそこは我慢、彼女からの返答を待ち
「特に何も……」
「だよねぇー」
それと同時にまたボールを投げ
朝のキャッチボールが再開する。
梢自身も確信は持てなかった、だが聞こえた言葉、
『悪くない』
「……どういう意味、かな……」
今は分からないその言葉だったが、
どこか心地良く、彼女の中に収まっていた。
ご無沙汰してます作者です。
こちらの更新は久しぶりです、実に1ヶ月ぶりくらいですかね
その間もなんとか首位をキープしている我らが楽天ですが、
最近けが人続出でこの夏が本当の正念場になりそうです。
頑張れっ!イーグルスっ!
ここまでお読み頂きありがとうございます。