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10+1(イレブン)ナイン  作者: あまやすずのり
そして始まる大問題
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そして始まる大問題 1-09

「ふぃ……」

 未だ昼休みの真っ最中だけあって

 廊下や教室も騒がしく

 また様々な人が行き交っている。

 そんな中、小を済ませた昌也が

 晴れ晴れとした表情で歩き、そして、気付く。

 ばれないようになのかわざとなのか、

 後方数メートル後ろ、昌也の背中を見失わないように

 ぴったりとついてくる2つの人影。

 自意識過剰、とも思ったがそうではなさそうだった。

 迷ったふりでわざと遠回りで廊下を抜けると

 階段を昇り、屋上へと出ていく。

 その間も2つの人影は一言も話す事無く静かに付いてきていた。

「……俺になにかようがあるのか?」

 誰もいない屋上、吹く風がどこか心地よい。

 しかし、それを堪能する事無く

 昌也は背中越しに声をかけた。

 瞬間、ピタリととまった足音と共に

 小さな笑い声を感じ、

 昌也は振り返りながら視線を移す。

 そこには二人の男性がいた。

 一人は中肉中背、身長も170cmそこそこだろうか、

 綺麗に刈り上げた坊主頭が良く似合う男性。

 そしてもう一人、切れ長の目を吊り上げ

 値踏みするように昌也に視線を送る男性。

 182cmある昌也を上から見下ろす姿は

 なかなかの威圧感だった。

「なるほどね、流石関東の鬼才か」

 昌也にとって何の意味も無い言葉、

 むしろ忘れ去りたい羅列が吐かれ

 心にスイッチが入る。

「ちょっ!やめなよ、慎吾、いきなり失礼……」

「悠人は黙ってろ、俺はこいつに用があるんだからよ」

 慎吾と呼ばれた男性の言葉に

 昌也は自然と笑いが噴出した。

 しかし、それは男にとって屈辱でしかなかなったのだろう

 昌也のしぐさに一気に沸点が増した顔で

 怒鳴り始める。

「んだてめぇっ!なめてんのかよっ!」

「いや、悪い、そういうわけではない」

 宥める様に両手を上げ落ち着かせようとする。

 だが、そのジェスチャーがどうやらお気に召されなかったようで

「チッ!こんなやつ本当に必要なのかよっ!」

「でも、実力は十分だし、監督も認めてるし」

「悠人!てめぇ自分のポジ取られるかもしれねぇんだぞ!」

 いつの間にか昌也を無視して

 2人で喧噪し始める。

 どうやら人一倍沸点の高い慎吾、それを宥める悠人。

 そんな関係なのを理解しつつ、

 昌也は気になった単語を話が分かりそうな悠人へと向ける。

「取り込み中すまないが、監督も認めてるってどういう事だ?」

「はっ?」

「へっ?」

 昌也の言葉にまるで争っていたのが嘘のように

 昌也へと向き直る二人。

 その表情は驚きに満ちており

 最初の二人の印象からかとても間抜け面に見えて

 昌也が気の毒になる。

 同時にさらなる疑問が浮かび、

「……ククッ……ックッハハハ!」

 しかし、それも束の間、

 慎吾が唐突に高らかに声を響かせる。

 優越感に浸る笑い声に流石の昌也も無視出来なかった。

「……何がおかしい」

 静かに怒りを込めながら発した昌也に対し

 余裕たっぷりに慎吾が返す。

「いや、なに、お前何も知らないのか、ってね」

 先ほどとは真逆になった立場が大層気に入ったのか、

 荒々しく張り上げていた声は鳴りを潜め

 もったいぶるかのように話す慎吾。

 その態度は昌也を刺激するには十分だった。

「どういうことだ……っ!」

「クク、まぁそう焦るなって」

 昌也を軽くあしらい楽しむ慎吾、

 だがその時間は長くは続かなかった。

 次の瞬間、悠人が慎吾に何か合図を送る。

 それに舌打ちする形でいきなりこちらに背を向け

 歩き出したのだ。

 流石にこれには面を食らった昌也が

 慌てて声をかけた。

「おい、待てっ!」

「すいません、野田君、もう時間なんで」

 小さくお辞儀をしながらそう返す悠人が先に走り出す。

 そして、慎吾もそれに習いドアまで到着すると

「一つだけ教えてやるよ、今後を楽しみにしてな」

 チラリとこちらを振り返りながら放った言葉

 そして、釣り上げた口元を最後に2人は校舎内へと戻っていった。

「……どういう、事だ?」

 謎が謎のままなのはどうにも気味が悪かった。

 だが、現状どうあがいても答えが出そうにない、

 そう一人結論付けた昌也は

 小さくため息をこぼし終わりかけた昼休みの教室へと戻るのだった。

こんばんわ、作者です。


何やら急に暑さが緩和し、穏やかな日々になりましたね

ただ、各地では台風や震災でやたらと危険な状況が続いています。

みなさんも天災にはお気を付けください


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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