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世界征服、明日から  作者: にしじま
9/9

2回目の月曜日

 「魔法陣はこれで……合ってるッスね。じゃあ、2代目魔王城、召喚するんで、ちょっと下がっててくださーい。」

 魔王城建設(?)予定地に移動したオレ様達3人。

 準備を整え、夜中の0時キッカリに、呪文を詠唱し、魔王城の召喚を開始する。

えっ? 城って召喚するもんなの?とかいうツッコミは……

 「よくわかんねぇけど、城って召喚するもんなのか?」

 とまあ、残念な感じになっちゃうから、よい子のみんなはしちゃダメッスよ。

 「勇者さん。」

 イッコマエさんが人差し指を口の前に立て、静かにするよう示す。

 召喚には集中力が必要ッスからね。

 「コノ・ケタノ・ゴ・ウロ・シオル・ク・テデ……出でよ、魔王城!」

 地面に描いた魔法陣が光を放ち、ゴゴゴという低い地鳴りと共に魔王城がゆっくりとその姿を現す。

 「おお~……すげぇー、あっ。」

 慌てて口をふさいだ勇者に向けて、親指と人差し指でマルを作って見せる。

 「もうしゃべってOKッスよ。」

 1分とかからずに、2代目魔王城が完成した。

 「召喚っつーと、悪魔とか精霊とか、そういうモンを呼び出すイメージしかなかったけど、まさか建築物まで出てくるとは……」

 「正しくは召喚とはまたちょっと違う術なんスけど、使ってるオレ様自身も詳しい原理は……」

 「わかってねぇのかよっ!」

 「細かいコトはいいじゃないッスか。フグの卵巣を塩漬けして、さらに糠に漬けておくと無毒化できるんスけど、なぜ毒が抜けるのかは謎のままなんスよ?」

 「いきなりなんの話だよっ!」

 「まあまあ、いいじゃありませんか、勇者さん。無事お城が完成した、そういうことで。」

 「ああ、まぁ、そうだな。でも、なんでこの場所にしたんだ? 建設地公募するとか言ってなかったか?」

 「それは3代目魔王城からッスね。」

 「何代目まで建てる気だよ?」

 「そもそも2代目だって予定なかったッスよ! ようやくやってきた勇者が残念だったばっかりに、こんな憂き目に……」

 「俺のせいかよ!」

 「ああ、魔王さん、お気の毒に……」

 「イッコマエさんまでっ! はいはい、色々とすんませんでした! 2代目魔王城完成おめでとうございます!」

 「あざーっすっ! さて、新居に入ってみるッスか。」


 「……目新しさ、ないんだけど。」

 「外装も内装も間取りも、まったく一緒ッスからね。」

 「では、私は今までと同じ部屋を使わせていただきます。」

 「了解ッス。はい、部屋の鍵と、伝説の剣入れとく宝箱の鍵ッス。」

 「はい、確かにお預かりしました。では、魔王さん、勇者さん、お先に失礼します。」

 「おつかれっした~。」

 自室に戻っていくイッコマエさんを見送っていると、勇者が首をかしげた。

 「ん? あれ? 伝説の剣、また仕舞うのか?」

 「当たり前ッスよ。次の勇者が来て、箱開けたらカラッポでした、じゃ困るっしょ。」

 「えっ、そしたら俺、丸腰なんだけど。」

 「自分で調達するッス。」

 「マジかよぉ~。売らなきゃよかったぜ、呪いの剣……」

 「……それは売って正解ッス。ま、武器のコトは置いといて。オレ様も今まで通り最上階の部屋使うッスけど、残念勇者は……地下牢と屋根裏、どっちがいいッスか?」

 「2択っ!? 9階建てでアホほど部屋数あるのに、2択っ!?」

 「寝袋があるから、外でもいいッスよ。」

 「野宿ぅっ!!?」

 


 朝6時 起床

 魔王城の朝は早いッス。

 起きて何かするコトがあるワケじゃないッスけど、早寝早起きは健全な征服生活の基本ッスよ。

 さて、勇者は起きてるッスかね。

 7階の部屋なら、どこ使ってもいいってコトで話着けたッスけど……

 「あ、起きてた。早いッスね。あれ? なんか目の下、血色悪いッスよ。」

 「……寝てねぇからな。」

 「徹夜ッスか? ダメッスよ-、徹夜は。どうしたんスか?」

 「どうしたんスか?じゃねぇよ! 1部屋目を覗いた瞬間思い出したわ。7階っつったら、攻略するのに1番苦戦した階だ、ってな!」

 「へー、7階ってそうなんスかー。知らなかったッス。」

 「把握しとけよっ! で、最後の部屋開けたら、これだよ、これ! 何だよ、この超汚部屋はっ!」

 「汚部屋じゃないッス。そのうち使うかなーってものとか、必要ないけど、ゴミとして出すにはもったいないものとか、収集日に出し忘れたゴミを一時的に置いてあるだけで。で、そのゴミが袋からあふれちゃったりしてるだけで。」

 「世界はそれを汚部屋と呼ぶんだぜーっ!」

 「え、なんスか? サンボなんとか、ッスか?」

 「サンボでもマンボでもどうでもいいわっ!」

 「大袈裟ッスねー。床見えてる部屋は汚部屋とは言わないッスよ。」

 「片づけたんだよ! 扉開けると同時にゴミ袋が降ってきたから、仕方なく片づけたんだよ、徹夜でなっ!」

 「ああ、それで徹夜ッスか。おつかれッス。」

 「ッッッダアァァァーっ!」

 「おはようございます、魔王さん、勇者さん。朝から元気ですね。」

 「おはようーッス、イッコマエさん。残念勇者が騒がしくてゴメンねー。」

 「イッコマエさんっ! 何とか言ってやってくれよ! どう見ても汚部屋だろ、これ!」

 「個性的なインテリアと捉えてみたらどうでしょう?」

 「あ、白旗あげたッス。」

 味方がいないと悟り、勇者はガックリと膝を折った。

 「朝食ができてるので、どうぞ。」

 「はーい。ほら、行くッスよ、潔癖勇者。」

 「……魂抜けちゃってますね。」

 「仕方ないッスねー。イッコマエさん、右手持って。」

 


 二人で勇者を引き摺り、食堂へ。

 「一日の中で、朝食は特に大事ッス。カロリー、栄養バランス共に完璧に考え尽くされたイッコマエさんのごはん、お残し禁止ッスよ。」

 「どんだけ健康的な生活送ってんだよ? 本当に魔王か?」

 「いつなんどき勇者が来てもいいように、常に万全の状態をキープできなければ、魔王失格ッス。」

 「……結構大変なんだな、魔王って。」

 「大変なんスよ、魔王って。では、いただきまー……あ、占い始まった。」

 『今日の占い カウントダウ~ン 今日の1位は……乙女座のアナタ!』

 「っしゃあ! 1位ッス!」

 「お前、乙女座っ? 乙女座魔王っ!?」

 「どんなジャンルッスか、それ。」

 『新たな仲間と夢に向かってスタートを切るのに最適な日』

 「2代目魔王城始動にうってつけですね。」

 「地味ーに当たるんスよ、この占い。潔癖勇者は何座?って、興味ないか。」

 自分の出生についてはサッパリ、って言ってたのを思い出し、ちょっと気まずさを感じる。

 「牡羊座。」

 「えっ?」

 「生年月日くらいはわかってるし、あんま気ぃ遣わなくていいから、俺の昔のこと。」

 昨日のような卑屈さを、その表情からは感じられない。

 「へー、牡羊座ッスか。まだ出ないッスね。」

 『今日の最下位は~残念! 牡羊座のアナタ』

 「さっすが、残念勇者ッス!」

 「残念言うなっ! だいたい占いなんてのは……」

 『安易な選択で大変なコトに?』

 「う、占いなんてのはな……」

 『パートナーは慎重に選んでね。』

 「……魔王に着いてきたのは、やっぱ間違いだった……か?」

 『でも大丈夫 そんな牡羊座さんの運気回復フードは、せんべい! バリバリ食べて、悩みもバリバリふっとばそう!』

 「あるッスよ、せんべい。」

 「くれっ!」

 「ほい、どうぞッス。」

 「いただきますっ!」

 ガギっ

 「っっったぁーっ! 何だよ、この岩みたいなせんべいはっ!」

 「魔王せんべいッス。何日か前におみやげとして持ってきてくれたヤツッスよ。」

 「運気回復どころか、HP減るわっ!」

 「やっぱ残念勇者ッスねー。魔王せんべいすら倒せないようじゃ、オレ様には一生勝てないッスよ?」

 「ぐっ……やってやらぁ!」

 簡単に挑発に乗り、激堅せんべいに果敢に挑む勇者を、イッコマエさんと観戦。

 「残念、なんて言ってても、本当は認めているんでしょう? 彼のこと、勇者だって。」

 「素質があるのは確かッスよね。じゃないと、伝説の剣に触れた時点で……」

 「ですよね。」

 「あ、すげー。半分いったッス。」

 「凄いですね。我々、一口も食べられなかったのに。」

 「なっ……お前らでも食えねぇ堅さってコトじゃねぇかっ!」

 「オレ様、魔王ッスから、共食い(?)出来ないッス。」

 「私、部下ですから、上司に盾突くなんてとてもとても。」

 「半分いけたんだから、残りもいけるッスよ。」

 「頑張ってください、残念勇者を卒業するチャンスです。」

 「好き勝手言いやがって、魔族共めぇーっ! 見とけよっ! 人類の底力っ!」


 

 前日のど派手バトルシーンと、徹夜明けの疲労の蓄積もあり、勇者は魔王せんべいにHP削られ、完食寸前で力尽きた。

 


 最強ッスね、魔王せんべい。



 ※力尽きた勇者は、スタッフがちゃんと回復させました。 

 


 

 

 

 


 

 


 

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