木曜日
「ちはー。魔王いるー?」
「なに、友達んちみたいなノリで来てんスか。しかもまだ伝説の剣じゃないし。」
「その伝説の剣のことで来たんだよ。どこにあるんだ、それ。」
「は?」
「城の中にあるって聞いたけど、どこにあるかサッパリ。」
「えと、オレ様の1コ前の中ボスは倒したんスよね?」
「おう。」
「その部屋に宝箱あったはずなんスけど。」
「おう、あったあった。」
「それッスよ。その中……」
「鍵かかってんじゃん、あれ。」
「……オレ様の、1コ前の中ボス、倒したんスよね?」
「倒したって言ってんだろ?」
「そん時、鍵落とさなかったッスか? あの人。」
「……あ、ヤベ。あれがそうだったのかな。」
「あー、何か聞くのが怖いわぁ。ヤな予感しかしない。」
「誰かの落とし物だと思って、交番に預けて来たあの鍵かな。龍のデザインが入ってて……」
「金色で……」
「そうそう、金色でズシッとしてて、めっちゃ高価そうな……」
「それッスよ! 完っ全にその鍵ッス!」
「じゃあ、速攻行ってくるわ。」
出て行った。
と思ったら、チラッと顔を出す勇者。
「ちなみに、今日の装備、プラチナソードなんだけど、これで挑んだら……」
「教会大喜びッス。」
「行ってきまーす。」
電話が鳴る。
「もしもし?」
『あ、魔王? 俺俺。』
……詐欺?
『俺だよ、プラチナソードの勇者。』
「ああ、残念勇者ッスね。なんで番号知ってんスか?」
『交番近くにいたモンスターが教えてくれた。困った事態発生したから、相談しようと思って。』
「魔王に相談て、どんな勇者ッスか。で、今度はなんッスか?」
『例の鍵だけどさ、落とし主じゃないと渡せないって言われてさ。俺、勇者で、鍵の落とし主は俺が倒しちゃったから取りに来れない、って事情を説明するんだけど、ダメだの一点張りで。』
「……まあ、そうなるッスよね。」
『落とし主倒した、なんて言ったもんだから、傷害容疑かけられそうになって。そこは何とかわかってもらえたけど。で、落とし主が6ヶ月現れなかったら、鍵くれるって言われたんだけど、どうする? 6ヶ月待つ? あれ? おーい、聞こえてる? もしもし? もしもーし?』