カインの力
カインの真の力が現れます。
学校が魔法陣に囲まれたのを1番最初に気づいたのはナナだった。とっさの判断でナナは校舎外に転移していた。
「ほぅ、高度な封印魔法だ。このままでは中にいるカインは2時間弱で窒息死するな…。さて、解除を試みるかな」
ナナが詠唱を始めようとしたとき、後ろから何かが近づいているのがわかった。封印解除魔法の詠唱をやめ、防護魔法壁を展開した。ナナの詠唱を超えるには0.02秒で詠唱をしなければならない。これは無詠唱以外にはありない速度だ。
「私の詠唱より早い攻撃は初めて見た。しかし、実力ではないなブーストが付いているようだ。して、貴様何者だ?」
「私をお忘れですか?ナナさん」
「その声、ミコトか…」
「覚えてくれてたんですね。ナナさん」
「忘れられるものか、私の目の前で死んだのだからな」
「いやだなぁ~勝手に殺さないでくださいよ。私は転移魔法を失敗しただけなんですから」
ミコトはナナと会話しながら、右手に魔法陣が展開した。それをナナの方に向けたと同時に指をはじき魔法を放った。
「死んで、ナナさん」
「無理だ」
ナナの言葉は爆音にかき消された。が、ミコトにも今の速度ではナナには当たらないことくらい分かっていた。爆発により巻き上がった砂煙が収まったころにはナナの姿は無かった。
「マスター、ナナさんの生体反応は?」
ミコトは魔道通信機を使い、誰かに連絡した。おそらく彼女のボスであろう。通信機には声ではなくメッセージが表示された。
【生体反応有り、半径20km圏内】
ミコトはそれを見ると再び笑顔になった。まるで死を呼ぶ死神のような笑顔であった。
校舎外・1組&2組
魔法陣に気づいたレンは安全確保のため、ルイの所に向かっていた。体術が優れているレンでも総勢168名を1人で守るのは無理だと判断したのだ。
「ルイ!そっちは無事か?」
無線かを使いルイと連絡を取る。いまは生徒を守るためにはルイかナナ、カインと合流するしかなかった。そうなると合流するのは一番近いルイになったのだ
「あぁ、全員無事だ。今そっちに向かっている」
「そうか、今どの辺だ?」
「第4教室の前だ」
「その近くにシェルターがあるからそこに行け!1組の生徒もそこにいる。そのシェルターはこの国が誇る最高級の防護魔法が....」
無線が切れた。おそらくレンになにかあったのだろう。しかし今のルイにとって一番優先すべきことは生徒の安全を確保することだ、だからルイはシェルターへと急いだ。
〜シェルター近くの通路〜
そいつは音もなく、気配すらも感じさせなかった。気づけたことが奇跡だが、反応が遅かった。レンはそいつの氷魔法をもろにくらってしまった。大事には至らなかったもののダメージは大きかった。
「テメェ何者だ?」
「貴様に名乗る必要はない」
聞き覚えのある声だった。レンは一度どこかでこいつとあっている、しかし誰なのか、どこで会っているのか、何も思い出せなかった。
「じゃあ、嫌でも名乗らせてやるよ!」
レンは無詠唱で雷魔法最強の“ライジングボルト”を放った。だが、そいつはあろうことか片手でそれを消し去った。魔法陣も詠唱もせずに魔法を消すなんて不可能だ。いったいどんな仕掛けがあるのか色々考えたがわからなかった。
「私はゼロ、全てを無に変えるものだ」
「へぇ、ゼロさんね〜じゃああんたに魔法は効かないのね」
「魔法だけでなく全てだ。体術、魔法、武器あらゆるものが私には効かない」
反則だろ!思わず声に出してしまいそうになった。今までそんなことは聞いたことがない。そんなことを思っていると後ろからナナとルイがやって来た
「そいつから離れろ、レン!」
そう言われるまで、レンは自分の魔力が削られていることに気づかなかった。慌て離れたがその時にはすでに全体の80%の魔力が削られていた。
「その状況じゃ戦うのは無理だな」
「クソッ、何なんだよこいつは?」
「仕組みは簡単だ。対象から魔力を奪い、その魔力を自分の魔力と合算する、そうすると対象の魔力と自分の魔力はほぼ同じ成分になる。自分の魔力を使い自分を攻撃することは不可能なため、発動した者にも攻撃は当たらなくなる。ってことだろう」
「流石は大魔道士ナナ、といったところかな」
「魔道士ナナ?」
今まで来たことがない響きだった。大魔導士の称号を持っている人間はこの世に片手で数えられる程度しかいない。そもそも大魔導士の称号は魔導において素晴らしい軌跡を残したものにしか与えられない。
「そう、そいつは元アバロン帝国魔道部隊隊長・ニイナ・ナナだ」
「ニイナって超有名な魔道士一家じゃん。」
「そんなことよりルイはどうした?」
さっきまで一緒にいたはずのルイの姿が見えなかった。
「ルイとはこの子かな?」
ゼロがそう言うと魔法陣が起動しミコトと一緒にボロボロのルイが出て来た。
「またあったね、ナナさ…」
ミコトの姿が一瞬にして消えた、その数秒に遠くで何かが崩れる音もした。そこにいた全員が何が起きたのか理解できていなかった。
「そうだよ。そいつがルイだ」
後ろからカインの声が聞こえたその時ようやく理解できた。今のはカインがやったのだ。だがカインは中級魔法しか使えなかったはず。さらに、校舎内に封印されていたはずだ。だが確かにカインはここにいる。
「ほぅ、ミコトを吹っ飛ばすとは…なかなかやるな」
「貴様ゼロとかいったな?なにも効かないないのは魔力を吸っているかだけじゃないな、お前...」
カインの右手には見たことない魔法陣が展開されていた。それはどこか恐ろしく、じりじりと心を削られていく、闇か悪、どちらかに近いような感じがした。
「何だそれは?」
「案ずるな、見ればわかる。吹っ飛べ!」
それと同時にあたりは真っ暗になっていた…確かにナナにはこれが何の魔法かわかった。これは神話に出てくる魔王サタンが使う魔界術だ。暗闇から抜け出すとそこにはカインがいた。
「抜け出せて当然だ。これくらいで自分を見失ってもらっては困る」
「なぜお前が魔界術を使える?」
ナナはカインを大きく揺さぶり、問いただした。カインはゆっくりと語り出した
「俺は神話に出てくるサタンの子孫だ。なんだ?ずいぶんときょとんとした顔をしているな。驚いたか?
まぁ俺はナナさんが魔界術を知っていたことに驚いているがな」