カイン
この話をもってカイン〜全てを手に入れるまで〜は終わりです…ですが4月ごろにカインの息子と娘の物語を続編として出す予定ですので、楽しみにしていてくれたら嬉しいです!
今までカインをありがとうございました。
国民の意見により大総統閣下という身分も明日には消えることになった。国家安全保障連合通称“国保”それは数々の栄光と権利を持った世界最高峰の安全保障連合。世界安全を謳うにはこの組織なしには謳えないとまで言われた最高の組織だった。しかし今では加盟国は一国もなかった。
「もはや国保もこれまで、加盟国が無ければ活動はできない」
「良い時代ではあったがな」
現大統領閣下、ユーク・カインは自記録として、書かせた最後の書類にサインをしていた。思えば長かった。反逆者の子として生まれてから、王になり皇帝を失脚させ、自分が世界の中心となり、魔界、天界までをも支配できるようにまでなった。しかし、どんな権力にも限界がある、その限界を迎えた時そのものは崩壊する。カインは今まさに崩壊している。
「私が消えた世界はどうなるのだろうか?」
「案外何も変わらないかもな」
カインが支配し、カインが中心だった世界。その中心が消えてしまうということは誰にも想像できなかった。
「カイン様に報告が…魔界より追放令が出されました。天界からも関係の打ち切りを...」
「世界から…切り離されたか…」
国保本部も今日の夜には全てが消失されることになっている。これにより、各界との通信も移動も一切できなくなる。まさにカインと国保のメンバーは世界から切り離され、完全に孤立してしまった。
「失礼するよ、突然だが国帰ることになった。真の国も国保から脱盟したからな、もうここにいる必要がなくなったってことさ」
アルスタ王国安全保障連合第3聖民・内山の脱退、それはアルスタ王国の安全確保の上でも、大きな打撃だった。どうやら切り離されたのは国保ではなく、カインだけだったのかもしれない。
「ははっ…華の時代は本当に終わるのだな…………」
ナナの目には涙がうかんでいた。普段は強いナナもまさかの自体を受け入れきれていなかった。キッド、セイ、ツバサも各国からオファーが来ており、今のアルスタ王国にいるよりも有利な位につけるため脱退するとのことだった。どんどん減って行く聖民たちを引き止めることすら今のカインにはできなかった。
そしてその夜、国保本部、国保支部が国民意思決定部により、魔法消失させられ数十年間続いた国家安全保障連合は解散した。
「次は我々の時代だ。ユーク・カイン…貴様には消えてもらう」
反国家組織、最強であるチームクラック。そのリーダーを務める男、ミキト。この男は天界最高神を使い、天界と地上界を戦わせるという行為をし天界の失脚だけでなく、当時天界の王として君臨していたアダムを殺したのだ。さらには天界最高神までを手にかけ、天界を大混乱に導いた。そのミキトが再び本格的に動き出そうとしていた。しかし、その情報はカインのもとに届くことはなかった。そして、なんの予兆もないまま、ミキトの攻撃は始まった。12月の聖夜の前日だった。
「まさかこの私にここまで執着しているものがいたとはな」
「お前が生きていると困る者もいるとゆうわけだ」
カインの剣とミキトの剣はアルスタ王国城の玉座で乾いた音響かせていた。打ち合うたびになる乾いた音、その音はどこか悲しく、あまりに冷たい音だった。
「ここまでだな」
ミキトの剣がカインの剣をはじいた。回転しながら飛んでいき、カランカランと床に落ちた。カインはその剣を取りに行くことなく、ただ床に跪いていた。今のカインには魔法を使うことすらできない…カインの魔力は国保本部から共有してもらっていた魔力で自身の魔力では到底ミキトには敵わなかった。
「そうだ、最後にいいことを教えてやる。俺はとある国の皇帝になった、サルトーリ帝国だ」
「サルトーリ帝国だと!?」
サルトーリ帝国は魔導の最高峰の国でその実力はナナと同格かそれ以上だ。なぜそんな国がミキトを皇帝として迎えたのか謎だったが、今更考えたところで無だった。ミキトは手にあるその剣をカインの胸元に突き刺した。白い服が徐々に赤く染まっていく。かろうじて心臓には触れていなかったが、助かるような刺され方ではなかった。
「カッ…」
「そうだ、君の形見として地上界の神記録はいただいていくよ」
ミキトは王座の後ろの本棚から一冊の本を取り出した。もはやカインは声すら出せない。ミキトはカインから剣を抜き、カインの玉座に突き刺した。これは王の死と国の終わりを示している
「じゃあね」
ミキトが王室から出て行こうとしたとき、それを遮るものがいた。従者、ジョーカーだ。
「君、じゃまだよ」
無言で剣を構えるジョーカーをミキトは恐れもしなかった。今のミキトは明らかにカインより強い、そんなミキトがたかが召喚従者一人に負けるはずがなかった。
「そうだ、神記録の力を試させてもらうよ。天界の神記録は何も役に立たなかったからね」
そういうとミキトは神記録にサラサラと何かを書いた。するとジョーカーのからだが薄い光に包まれ、光の粒子となって消えてしまった。
「へぇ、これはすごいね」
ミキトは懐から小瓶を取り出し、魔法陣の中へと消えっていた。その直後王室にひとり、の男が駆け込んできた
「カイン!」
駆け込んできたのはルイだった。しかし、時すでに遅く、カインは辺りを赤く染め、倒れていた。
「これは…一体何が?」
「ルイ…か…。最後一緒にいるのが…お前とはな…はぁ…はぁ…」
「喋るな」
喋れば余計に止血ができなくなる。しかしルイの努力は報われることはない。カインの傷は魔力ですら塞がらないほどの重症だ。
「最後に…頼みがある……ユウとヒカリに……伝えて………くれ……お前たちは……自由に生きろと…」
最後に愛する子供たちへ言葉を残し、カインは眠るように息を引き取った。カインが息を引き取った頃、密かに逃げていたナナとその子供たちは修道院へとたどり着いていた。
「ここまでくれば…」
ナナの目に留まったのは真っ赤に輝くアルスタ王国国王城だった。ミキトがカインとの戦いの後火を放ったのだ。この火はカイン死を意味していた。
「っ……うわぁぁぁぁぁぁぁ…」
ナナ始めて声をあげて泣いた。だった十数年とはいえ愛を誓い、共に一生過ごすと決めた男だ。その男の最後を看取ることすらできない悲しみと自身の無力さに涙が止まることはなかった。
ユーク・カイン…世界を手に入れた男、その男の人生は最初から最後までおわさせることのできなかった最大の敵に幕を引かれる形になった。
ここから先、カインの子供がどのような日々を送って行くかはまた別な話に
物語は次の時代へ……