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国保の終わり

あけましておめでとうございます!今年もカインをよろしくお願いします!

「大総統閣下様!報告です、イーリス皇国が反国家組織の攻撃を受け敗戦、その領土と民が奪われました」


アルスタ王国一等兵が持ってきた報告は国家安全保障連合に大きな衝撃を与えた。天界の失脚からもう10年が経とうとしていた…未だに反国家組織との和解の糸口はつかめず、ズルズルと泥仕合をしていた。カインも人間的年齢で言えば30になろうとしていた。アルスタ王国安全保障連合軍を初期から支えている面々もカインと同じくらいの年齢になった。


「イーリス皇国がだと…?」


イーリス皇国のあるじハクアとは3日前に連絡を取ったばかりだった。その時には、攻められている様子もなく、いつもと変わりない様子だったのだ。


「間違えではないのか?」

「間違えではございません」


その先は言葉が出なかった。イーリス皇国は国家安全保障連合の中でも1.2を争うほどの力を持っている国だ。その国が落ちたとなればアルスタ王国が侵略を受けるのは時間の問題である。


「至急、四大剣にこのことを伝えろ」


この事態は瞬く間のあるスタ王国全土に伝わった。四大剣、国家安全保障連合の要ともいえる4つの国。そのうちの一つが反国家組織に侵略され、敗戦した。これは国家安全保障連合に加盟している国の民や聖民を大きな不安の渦に引きずり落とした。


「どうする?」

「今回ばかりはどうしようもできん」


ナナと5年前に結婚し、二人の子供ができ、順風満帆とは言えないが順調な結婚生活を送っていた矢先の事態だ。今まで反国家組織が優勢な立ち位置に来ることがなかったため、このような事態は予想していなかった。


「ミラ様、フレイ様、カムイ様がいらっしゃいました」

「わかった」


カムイはだいぶ前に国家安全保障連合を脱会し、なんの助力もないまま我が道を進んでいたが、天界戦の時に反国家組織により落とされ、その後アルスタ王国の協力により王都を奪還したのだった。また、カインの厚意により国家安全保障連合としても、四大剣としても活動を再開した。


「どういうことだ!」


席に着いたと同時に口を開いたのはミラだった。


「今回ばかりは落ち着いていられないよ」

「国保主要国の一つが落ちたとなれば国保の存続すら危ういぞ」

「俺も落ち着いてなどいない、ハクアと連絡すらつかない今具体的な活動内容すら決められない」


国保がどのように動くべきか、ハクアとの連絡が途絶えた以上何もすることが出来ないのが現状だった。今すぐにでも軍を送り、奪還させるべきなのだが必要な兵数も、敵軍の数も分からないのでは話にならなかった。


「ここ10年まともに活動していなかったのだ。ましてや国家安全保障連合大総統が、のんきに新婚生活を楽しんでいたとは笑わせてくれる。私はこの連合から脱盟させてもらうぞ」

「そうか...分かった」

「では失礼する(すまないカイン、これが私の国のためなのだ...)」


ミラが脱盟の意を示し、部屋から出て行ってしまった。しかし、カインの横をミラが通ったとき、その瞳はうるうるとしていた。


「ごめんね、僕の(とこ)も脱盟させてもらうよ」

「お前もか...分かった」

「じゃね...(ごめん、カイン...)」


ミラに続きフレイまでもが国保を脱盟の意を示し、部屋から出て行ってしまった。これで残るはカムイの率いるガイス王国のみとなってしまった。


「申し訳ない再び加盟させてもらったばかりだが、こればかりはどうしようもできまい、我が国も脱盟させてもらう」

「であろうな、分かった」

「では、また逢う日まで(カイン様...申し訳ありません)」


カムイの脱盟表明により、国家安全保障連合は四大剣という最大の組織を失ってしまった。それは同時に国家安全保障連合の名誉とその存在意義までを奪った。国家安全保障連合が国家の安全を保障できる、保障はどこにもなくなった。証明できるだけの力のある国もいない。国家安全保障連合は壊滅しざるを負えなかった。


「私の時代も終わりか…」

「情けないな、お前に終わりなどあるはずないだろ?」

「しかし、今回ばかりはどうにも...」


国家安全保障連合はカインが始めたことであるが一人ではどうしようもできない。そしてこの世界は一度消えたものを同じ者がまた始めたとて受け入れてはくれない。もう一度やり直すのは不可能といっても過言ではなった。


「大丈夫だ、お前ならこの状態をも打破できるさ。なんせ天界をも失脚させたのだからな」


天界の失脚、魔界の制圧と天上魔界王への就任、今まで幾度となくピンチや困難を乗り越えたが、それは国保という世界権力の後ろ盾があったからに過ぎない、その後ろ盾を失ったいま、カインにできることは数少なかった。


「国家安全保障連合は解散するしかないだろうな」

「世界が何と言おうと私はお前についていくそう決めたのだから」


ナナとカインは夕日が沈むのを見ながら手をつないだ、カインが世界を手にしてから10数年何ら不便なく生活してきた。しかしその生活は終わる。きれいに言えば、その任から解き放たれ、自分のままに生きていける。しかしそんな事実がカインにとっては何よりも苦痛だった。世界を手に入れるため、数々のものを切り捨て、追放してきた。そうして手に入れた世界を手放すのは、カインにとっては死より辛いことだ。

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