神の力
トゥルーデュランダルの力を目の当たりし、何もできずに立ち尽くすことしかできなかった。しかし、カインだけは違った。新たな力を前に、心を躍らせていた。
「カイン!まさかお前?」
カインの様子にいち早く気づき話しかけてきたのはフレイ達三大剣だった。
「余計なことは考えるなよ、今は勝つことに集中しろ」
「天界を支配しようなんて考えないでくださいね」
三大剣はカインのことをよく見ていると改めて思った。ちょっとした変化も見逃さないのは三大剣がみな同じように世界を良くしようと考えているからだ。
「フッ…そうだな、今はこいつを倒すのが最優先だな」
「のるなよ、調子に」
アダムの手にはレンを襲ったのと同じ赤い魔法陣が展開されていた。
「今日に希望は砕かれる。絶望しろ明日に、未来に!」
アダムが赤い魔法陣を発動すると、赤い魔法陣が膨張し始めた。それは聞かずとも世界規模の災害が起きるレベルのものだと分る。
「知っているとは思うがこれが地上に落ちればこの世は終わるといっても過言ではない」
「あぁ、分かってる」
「君には防げないよ、天界の者じゃないからね、レンなら可能性はあるけど…」
レンは今動ける状態ではない、アダムによって展開された魔法陣はレンを苦しめ続けている。ナナが本部
に運び解除を試みているが成果は上がっていない。
「天界の者じゃない俺には防げないのかもしれない、だとしても!最善を尽くすこと無駄ではない」
「最善すら尽くせないよ、君には!」
膨張し続ける魔法陣はかなりの大きさになっていた。もう間もなく地上につく、その規模まで大きくなった魔法陣を止めるすべはほとんど残っていなかった。
「神の姿を見せてやる。光栄に思え」
魔法陣が地面に着く直前、まばゆい光を放った。あまりの光量に目を開けていることすらできなかった。光が収まり、カインが目を開くとアダムの背中には翼が生えていた。白く大きな翼が。
「ここまで抵抗されちゃ、もう翼をいただくしかないじゃないか。これで終わりだよ、君たちは」
「これが狙いか....翼ごときで勝ったつもりか?」
「神が翼を広げる意味を知らないのかい?だったら教えてあげるよ」
アダムの手には先ほどの魔法陣とは違う紋様の青い魔法陣が展開されていた。アダムがその魔法陣を握りつぶすと今までのとは比べ物にならないほどの高エネルギーが溢れていた。
「神の翼の前に跪け」
アダムが右手を横に広げると、無数の魔法陣が展開された。
「消え去れ!」
アダムの声と同時に魔法陣から強力な光線が放たれた。
「神に屈する王ではないので」
カインはアダムの攻撃を魔法陣を展開し防ごうとした。しかし数が多すぎて防ぎきれる代物ではなかった
「グゥア……ジョーカー!無に返せるか?」
「わたしには無理だ。力の差がありすぎる」
ジョーカーは無慈悲にもカードに戻ってしまった。カインが受け止めているのも限界近づいていた。
「お前は一人じゃない!」
サラ、キッド、内山がカインの左右に立ちカインの両腕に手を添え魔力を共有し始めた。
「私たちがついてる」
「俺たちの力を合わせれば!」
「やってやれない、ことはない!」
トゥルーデュランダルの前に何もできずただ立ち止まるばかりだった国保の聖民たちがカインの戦いを見て再び動き出した。それに応えるべくカインは片手から両手に変え、それと同時に防護魔方陣とは別の魔法陣を展開した、その魔法陣を伝いアダムの攻撃はカインたちへと流れていた。しかし神の力を一般人がまともに使えるはない。カインたちに流れていた神の力はカインたちを苦しめていた。
「なッ…これが…神、の力…」
「まるで……闇みたいに…深い…」
「飲まれるな!自分を信じてその力を自分のものに!」
通信機から聞こえたナナの声に四人はハッとし、自分を取り戻した。自分たちが今やるべきこと、誰かのために動かなければならないこと、帰りを待っている人がいること。
「そうだ、俺たちは」
「この力に」
「決して」
「屈するものか!」
四人はアダムが放った神の力を我がものにしようと神器を抜いた。神の器である神器なら、神の力を纏わせることができる。たとえ失敗したっていい、やってみることが何よりも大切なことなんだ。それをアダムに見せつける、絶好のチャンスをカインたちは手に入れた。
「神器!真解放!!!!」
それぞれの神器にアダムの神の力をまとわせることでさらに大きな力を手に入れた。
「俺の力を纏わせただと?此の期に及んで、生意気なことを!」
アダムはここぞとばかりに、魔法陣を展開して高エネルギーで作られた模擬太陽つくりだし、カインたちに向け落とした。あたりは火の海となり、国保本部もかなりの被害を受けた。しかしナナのとっさの判断により展開された防護障壁のおかげで全滅には至らなかった。
「フハハハハ…これで終わりだ」
アダムは立ち込める砂煙の中に輝く4つの光にきずいていなかった。