四聖剣襲来
「お前正気か⁉︎」
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ」
「2度と俺の前であんなことするなよ」
その言葉には誰もが感じ取れるほどの殺気にあふれていた。その殺気に思わず身震いしてしまうほどだ。
「失礼する」
フレイは足早にその場から立ち去った。
「まさかレンがなぁ」
「ナナさんの術で消えたの?」
「いや、まず敵反応にレンはなかった。自ら消えたと思われる」
「じゃあ…やっぱりレンは天界側に...」
「そんな訳ないだろ!」
突然のカインの叫びに部屋は静まり返った。
「レンは仲間を裏切るような事は絶対にしない!」
「じゃあ何で攻撃してきたんだ?」
「レンの攻撃に殺気はなかった」
「殺気ぐらい隠せるだろ?」
「お前はレンを信じないのか?」
「まだ会って6ヶ月だぜ?信じるも何もないだろ」
国保が始まってから6ヵ月、世界のことや自国のことをやってきたがここまで空気が悪くなったことは無かった。
「だったら黙ってろ」
今までない殺気だった。多分カインはきずいていないだろう。今のカインには周りが一切見えていなかった。
「落ち着け」
「落ち着いていられる問題じゃない」
「だったらここから去れ。冷静さのカケラもない奴はトップには向かない」
いつ入ってきたのか誰の許可を得て入ってきたのか分からないがそこには三大剣の一人、ミラがいた。
「誰に向かって口をきいている!」
「では聞かせてもらおう。貴様は今何を見て行動している?誰を信じている?仲間は見えているのか?」
「俺は俺の世界を進む。ほかの誰にも邪魔はさせない」
「お前の理想はお前が変わらなければ理想のまま果てるだろうな」
カインの理想は世界を手に入れることだった。しかしそれが成し遂げられた今、どこに向かって歩いていけばいいのかわからなくなっていた。
「どう変わればいいというんだ?」
「それを見つけるのはお前だ」
カインが変わるにはカインがどうなるのか、これからどう進むのかを見つけなければいけない。それを気付かせるためにみらはここにきたのかもしれない。そう思ったのはナナだけだった。
「今、俺がやるべきことは...」
「一つしかないだろう?」
「あぁ、今は天界の情報を集め、レンを探し出す!」
それからの行動は速かった天界に関する情報を有りとありゆるところから集めた。魔界から人間界の歴史書まで全て調べ尽くした。その結果有る程度だが天界の事が明らかになった。
「天界には四聖剣と呼ばれる4人の剣士がいるらしい」
報告書の中でもひときわ目を引いたのがそれだった。今まで『天界=天界術』とい言う固定概念があったため剣士がいる事には強い衝撃を受けた。
「firstsword、憤怒ディリナイア」
「Secondsword、迅速エクスアルヴァ」
「thirdsword、嘘ヘル」
「今はこの3人しか分かっていない」
世界の自記録でも四聖剣のうち一人の情報は出てこなかった。隠されているのか、伝説的な何かなのかそれすらもわからない今は、気にすることではなかった。
「憤怒、迅速、嘘これにはどういった意味が?」
「詳しいことは不明だ、だが…」
「称号みたいなものだよ。破壊、憤怒、迅速、嘘強い順に言ったよ」
「随分詳しいんだな」
「まぁね」
あれ以来フレイはカインとあまり話さなくなった。フレイの過去は分からないが誰も詮索しようとしはしなかった。無言のまま時が流れるのに嫌気がさしたミラが口を開いた時、扉が開いた。
「ミリアナ王国全エリアに緊急危険避難信号が出された。詳しい状況は届いていないが、すぐに戻れ」
「すまないが先に失礼する」
「ほかの者も何があるかわからない、非常時に備え戦闘態勢を整えておいてくれ」
三大剣の1人の国が襲われたとなれば他の国も狙われていてもおかしくない。数日後、フレイから被害と現状の報告書が届いた。簡単にまとめるとこうなる。
〜被害〜
今回の天界との戦闘における被害は甚大なものであった。街の75%の家屋の崩壊、城の99.1%の崩壊よって被害ランクAとする
現状
即急な復旧活動により現在の被害ランクはA-となった
三大剣の1人がいる国がここまで被害を受けるのはかなり予想外だった。他が被害を受けたと言う報告はないがいつきてもおかしくない状況だ。
「フレイが来ている。通していいか?」
「構わない」
意外だった。まさかフレイがみずから来るとは思ってもみなかった。
「報告書見たか?」
「ノックもなしか?全く、あぁ見たよ。お前がやられるなんて珍しいな、いくら天界とはいえお前を倒すほどだ、四聖剣か?」
「そうだ、嘘ノーファールだった」
四聖剣の中でも一番下のランクだ。今回の一件で四聖剣が国保を上回る実力で有ることがわかった。
「四聖剣とは俺が思っていた以上に厄介な存在だな」
「これからどうする?」
「強くなる以外なかろう?ミリアナ王国はアルスタ王国の兵場を使え」
「協力に感謝する」
「フッ…当然だ三大剣が負けては私の名が廃るのでな」
「自分大事かよ」
カインは素直ではないでもそれがカインのいいところでもあるのだ。
「緊急のためノックは省略する、天界だ!それも四聖剣、迅速エクスアルヴァ」
「へぇ、俺相手に下から2番目の奴で十分だと思ってるんだ」
「気をつけろ、侮るなよ」
「うん、わかってるよ」
それだけ残し、カインは敵の元へ向かった。移動途中に他国からも天界の襲撃が来たと連絡が入った。それも国保に加盟している子にばかりがねらわれていた
「君がエクスアルヴァかぁ〜強そうだねぇ」
「きさまがカインか、弱そうだな」
「なめてると死ぬッ…」
カインは遥か遠くに飛ばされていた。さっきまでまえにいたはずのエクスアルヴァはカインが立っていた所に立っていた。迅速は名前からして速さが特徴だとわかっていたが、想像を上回った。
「すまん、聞き取れなかった」
「はぁ…“全てをひっくり返せ、我が従者よ。従者召喚、ジョーカー”」
カインとレンが協力し作った人工従者、ジョーカー。対象の魔法、能力を全て逆にするというとんでもない能力を持っている、今契約されている従者の中で最も強い従者だ。
「フッ…そんな玩具で私を止める気か?なめるなよ」
エクスアルヴァが剣を抜き、カインの元へ移動し始めた時にジョーカーの能力が発動した。しかし、エ
クスアルヴァの速度は下がるどころか、どんどん上がっている。それに気づき防護障壁を展開しようとした時にはエクスアルヴァの剣がカインの胸を貫いていた…
「カッ…グァ…」
「すまん、胸を狙ったつもりは無かったが、手が滑ってな」
「神台を貫く闇よ、聖天をも貫かん“ネクストファージ”」
ルイがエクスアルヴァの一瞬の隙を見過ごさずに遠距離攻撃魔法を放った。しかし詠唱のせいでエクスアルヴァに気づかれてしまいあっさり避けられしまった。
「詠唱が邪魔だったね」
エクスアルヴァがルイの方を向いた時、さっきまで横たわっていたカインがジョーカーに指示を出した。
「ジョーカー....ナイツオブソードを....使え...」
「ダメだ!それではお前がもたない」
「使え...いまは...それしかない』
「現場にいる天界軍に告ぐ、任務は完了した。撤退だ」
「逃げるのかよ」
「我々の勝ちだ。諦めろ」
そう残しエクスアルヴァら天界軍は撤退していった。それを見届けるとカインは気を失ってしまった。
「カイン!チッ…誰か!誰かいないのか⁉︎」
その呼びかけに答えるものは誰もいなかった…。
「こりゃ随分と酷い状況だな」
「⁉︎フレイ殿」
「カインを運ぶぞ手伝え」
「あっ、はい!」
「城まで行けばナナさんがいる」
街は壊滅状態だった。人の声も風の音も聞こえて来ない。そんな状況だった。ルイたちが城に着くとそこには一切壊れていない城があった。街の状況から城も半壊状態かと想像していたが、それは大きく覆された。聖民は全て天界軍と戦っていたあの状況で城を守れるのはただ1人だけだ。
「フレイ殿が城を?」
「いや、これはナナさんの魔法だ」
城に入るとナナは自室で紅茶を飲んでいた。しかし帰ってきたカインを見ると慌てて駆け寄ってきた
「⁉︎これは…早くベッドへ」
ベッドにカインを寝かせそのまま部屋を出るように指示された。
「大丈夫なのか?」
「今はナナさんを信じるしかないだろ」
部屋にこもってから2時間が経とうとしていた時ようやくナナが部屋から出て来た。
「とりあえずは大丈夫だ。しかししばらくは安静だな」
「そうか…」
いつ天界がくるか分からないこの状況下で大総統と聖民一人を失ったのはかなりの痛手だ。しかも現在敵側についている。最悪の状況だ。