カインが中心に
この話で第1章が終わります。次から第2章になります!
「さて、始めようか?我々とて暇ではないのだから手短にな」
「あ…そうですね。始めましょう」
“コンコン”始めようとカインが口を開いた時ノックとともに1人の男が入ってきた
「いったい何の用でしょうか?アルスタ王国反国家組織総統、ミキトさん」
「あれ、僕の事を知っているんですね。大総統閣下様」
「大総統しかいない所に1人で来るなんて正気ですか?」
「今日は公明しにきました。大総統閣下、戦線布告です我々反国家組織、クラックは世界の全反国家をまとめ、世界を我々のものにします」
会場内は水を打ったように静まり返った。
「では」
言いたい事を短く率直に伝えミキトは出て行った。静寂は続いたままだった。
「なぜ、何もしなかった?反国家だと分かっていたなら捕まえるべきだろう?」
「何かしなければ逮捕はできません。さっきの状況では反国家に入っているだけで事実的な活動は何もしていないので不可能です」
反国家に対しての処置は曖昧なものだった。反国家に入っているだけでは逮捕できないが、何か問題を起こせば逮捕できる、しかしその場での逮捕つまり現行犯でなければならない。この処置の仕方は様々な問題が起こる、問題が発生してから国保や警備隊に連絡していては反国家は転移魔法で逃げてしまうため逮捕はほぼ不可能だ。
「法律の改正が必要だな」
「明日までにまとめて、提出します。明日再び会議を行います」
その日会議は唐突の戦線布告によって打ち切りとなった。
「どうする気だ?」
1人大神殿に残っていたカインにレンが声をかけてきた。
「う〜んとりあえずは、全面見直しかな。今日は徹夜だね〜」
「呑気なもんだな」
「僕だって少しは焦ってるよ。正直言えば余裕だってない。でもさ、焦っても慌てても、答えなんか出ないじゃん」
「まぁそうだな」
「だったら焦らずゆっくりと考えた方がよっぽど頭いいと思うんだよね」
「ゆっくりすぎるのは困るがな」
「あはは、そうだね」
その日の夜、法律の改正案が完成した。カインが焦らなかったのには理由があった、こうなる事は予想していたため、法律の改正案もある程度はできていたのだ。カインが出した改正案は次のようなものだ。
改正案
1.反国家に関与した疑いがあるものはいかなる場合であろうと即座に逮捕もしくはその他の処分を下すことを認める
2.反国家を逮捕した場合その国で判決を下すことになる。ただし世界的な反国家の場合は国家安全保障連合が判決を下す
3.各国の国保は全街に最低二つの緊急避難信号受信機を設置する事を義務付ける。これは国保の活動効率向上のためである。
4.各国の聖民はその国の判断に任せるが総統と第1聖民を一緒にする場合は申請を必要とする。
5.聖民だけでは防衛は困難と判断したため、各国は弓、銃、剣、その他12の武器部隊を作る事を義務付ける(魔法部隊を含める)
6.国保の活動を阻害する行為をしたものはいかなる場合であっても、反国家の一員として逮捕する
〜会議2日目〜
「まさか本当に1日で案を作成するとはな」
「こうなる事は予想できていましたから」
最初から最後までを全て予想できていた訳でないがある程度反国家の動きは予想していた。何らかの機会を待って攻撃を強めてくることくらいは分かっていたのだただ、その機会がいつどのようにしてくるのかが、分かっていなかっただけだ。
「この法案で今までの問題が悪化する可能性は?」
「ゼロとは言えません、しかし絶大な効果が出ると思われます」
「それはどのようなものだ?」
「反国家関与の疑いがある者は即座に逮捕することが可能になりました。今までは事が起きてからしか逮捕できなかったのでこれは大きな進歩です」
「この国家安全保障連合とは具体的にどの国が当てはまるのだ?まさかアルスタ王国だけではあるまい?」
「もちろんわが国だけではありません。しかし何かあるたびに会議を開くのは効率がいいとは言えません。ですから今ここに居る5国で国家安全保障連合の本部を組織しようと思います」
国家安全保障連合は各国が連携し反国家組織の対処を行うための連合組織だ。しかし、どの国が代表で在るかはいまだ決まっていない。だが連合である以上1国だけで決めるわけにはいかない。ではどうやって決めるのか?答えは一つだった国家安全保障連合に強い影響を与える、5国で決めるのが最善だった
「私たちで決めてよいのか?」
「むしろ私たち以外に決めれる国はないでしょう。満足いかない国は連合を抜ければいいのです。しかし抜ければ国として残るのは不可能でしょう。反国家組織も一丸となるいま、それを止めるには一国では不可能です」
「では抜けられない状況になった今は我々が何をどう決めようと自由というわけか」
「捉え方によってはそうなりますね」
国力のない国は国家安全保障連合を抜ければ滅亡するしかない。抜けて反国家に国を売るのもありだが、その手段を取ることはまずないだろう。
「面白い。私はこの案に賛成だ」
「僕も賛成だよ」
「俺は認めん。さらに、国保からの脱退を申請する」
「私は賛成だ…」
だいたいは予想通りだったが一つだけ予想していなかった答えがあった。それもかなりの打撃力がある答えだ。
「理由を教えていただけますか?カムイ殿」
「そのような無理やりなやり方は気に食わない、それに我が国は反国家組織を自国のみで沈める自信がある、だからこそ国家安全保障連合本部などというものに力を割いている暇はない」
言われてみればその通りだ。アルスタ王国を含むその他の国は自国だけで自国の反国家組織を鎮めることくらい他愛ない。しかし、その先の結果は見えているようなものだ。
「そうですか。ではガイス王国は国保脱退ということですので、この場から退場願います」
「では失礼する」
「他の方はどうですか?今の話を聞いてなお賛成してくださいますか?」
「変わらぬ」
「僕も変わらないなぁ、楽に越した事はないし」
「変わらない」
フレイ以外には何らかの理由があり、決心は変わらないようだ。
「では、話を続けます。以前話した聖民の件ですが」
「年齢規定の解除だったな」
「はい、年齢規定を無規定にし、開拓者でなくても良しとする事です」
「それでは誰でも良いことになりますが?大丈夫なのですか?」
「そう、問題点はそこです。反国家が潜入するやもしれません。そのため、各国には自国の反国家のメンバーの把握をしていただきたいのです」
「主要人だけならある程度できている。しかし全員は無謀だ範囲が広すぎる」
「主要人メンバーだけで大丈夫です。うちの魔導士に判定機を作ってもらい、全国に配備します」
全国に反国家組織のメンバーか否かを判断する判定機を配備すれば、主要メンバーは少なくとも国家安全保障連合の部隊や聖民には入れないようにできる。そのほかは入団してから調べればいいだけのことだ。
「で、国家安全保障連合の本部組員はどうするの?」
「私を含め10名ほどで組織しようと思っています。仕事内容は国家安全保障連合加盟国の状況管理や世界の反国家組織の状態。世界規模の問題発生時の対応などです」
「ということはカインどのとわたし、ハクア殿にフレイ殿の4人のほかに誰が入る?」
「ほとんどは私の国か選出しようと思っています。ほかの国に負担をかけるわけにはいきませんから」
「では私たちが入らなくてもいいのか?」
「ほかの方々いいのならばかまいませんが」
「ならば我が国は本部所属を辞退しよう」
ミラの事態をきっかっけにそのほかの2国も辞退した。その日の会議はこれで終わり翌朝、各国から公表の準備が整ったとの報告が入ったので、即公表演説を開始した。
「我々制裁者は魔界の一件から聖民のあり方につき、話し合いより完全な安全保障を約束するため、国家安全保障連合としてあらたな活動を始めることを決定しました。これに伴い改変された事項とその内容は国王城の前に掲示してあります」
たった1分程の短すぎる演説だったが、国民には大きな衝撃を与えた。この世界の在り方そのものを根本から変えたのだ。世界の主導権は大皇帝から国家安全保障連合の本部に移った。もともと大皇帝の追放以来大皇帝は存在せず、カインがある程度やっていたのでやり方に大きな変更はない。そして国家安全保障連合の本部のトップはカインになる。これはアルスタ王国大総統であるから問題なく連合に受け入れられた。これにより世界は完全にカインの手の中に落ちたことになった。