ジョーカー
「なす術なしか…」
「ならば、ここで散れ」
サタンが魔刃を大きく振りかぶるとそこに魔力が集中していくのがわかった。先ほどまでカインが纏っていた魔力とは比べ物にならないくらいの強大な魔力だった
「儚く散れ、“デモンズサーク”」
「秩序乱し者を裁け、従者召喚“法典神・アルキメデス”」
「法のもとに命ずる、命取りしすべての術、魔法を禁ずる」
アルキメデスの命令で、今まで発動していたすべての攻撃系魔法が消滅し、使用禁止となった。これにより、サタンのデモンズサークも消滅したのだ。
「チッ…まぁ良い、法で禁止するなら、その法を書き換えればいい」
「アルキメデスの法は絶対であり、強制だ。それを書き換るなど不可能だ」
「それがあるんだなぁ」
魔法陣が発動され、そこから一人の青年が出てきた。
「お初にお目にかかります。ルイ・アルバドル様、確か第3聖民でしたよね?」
なぜ名前も階級も知っているのか全くわからなかった。まずこの青年は誰なのか、何をしに来たのかを判断しなければならなかった。
「こいつは天上魔界第1魔道部隊総隊長、ユースハル」
ようやく意識を取り戻したカインが現れた青年の名前と階級をしらせた。天上魔界第1魔道部隊総隊長...聞いただけで天上魔界の重鎮だと分る階級だった。
「これはこれは魔界王カイン・ゼルク・サタン様、お久しぶりでございます。お元気そうでなによりです」
「ルイ、アルキメデスをしまえ!早く!」
「もう遅いんですね、“カーニバルプランダー”」
ユースハルの短略詠唱により、魔法陣が発動しその魔法陣に吸い込まれるようにアルキメデスが消えていった。
「showはこれからです、“従者召喚法典神アルキメデス”」
さっきまでルイの従者として召喚されていたアルキメデスが今度はユースハルの召喚従者としてカインたちの前に現れた。普通召喚従者は契約者との契約が切れるまでは契約者の従者として召喚され、いかなる場合でも他の者の従者として召喚されることは無いのだ。
「ピエロと似た力か…まさかとは思うが、ピエロの参考案はこのユースハルってやつじゃ無いよな?」
「うん、ユースハルだよ。彼は強いからネ」
「はぁ…道理で無理難題な者を作ろうとしたわけだ」
ユースハルの魔法は相手の召喚従者、召喚獣の契約を一時的に改変し自在に操作するという効果だ。一方ピエロは相手の召喚従者、召喚獣をカードの中に封印する。そのカードを使い、封印した召喚獣、従者召喚では無い別の従者を召喚すると言うわけのわからないものだ。
「アルキメデスを奪われた今、ピエロの置き土産を使うときかな」
「もう使っちゃうの?まだ早いよ、君の体が心配だ」
「うん、使うよ。“反転せよすべての秩序、裏は表に表は裏に、黒は白に白は黒に従者解放、ジョーカー”」
カインの詠唱により、さっきネロを封印したカードから今まで見たことのない従者が解放された。従者が解放された同時に封印されていたネロが封印から解放され、サタンのもとに戻っていった。
「今日は前代未聞の魔法ばかり使われるな」
「時代は絶え間なく進んでいく、あなたのように古き者は若きに代を譲るべきなのですよ」
「それは、無理だねぇ〜。ユースハル、全力で相手して差し上げなさい」
「はーい!じゃあとっておきを使おうかな。“花園を納めし花女神、我に光を与えよ、ライトニング・エルバ”」
魔界の者はほぼ全員が光系の術を嫌うのにユースハルは自ら好んで光系術を使う。とくにライトニング・エルバは光系術の中でも即死レベルの強力な魔法だ。
「あんな強力な光魔法を魔界人が使って身がもつのかね」
「ユースハルはダメージを受けるほど物理攻撃力が上がるんだよ」
「なにそれすごい強いじゃん。勝てるの?」
「ジョーカーなら大丈夫」
ユースハルの使ったライトニング・エルバは自らに光の加護を与えてくれる誰もが憧れる魔道障壁の一つだ。だが、魔界人には光系魔法のいかなる魔法でも受けるとその魔法難易度の25%のダメージを受けてしまうのだ。ライトニング・エルバは最難関の魔法だ。どんなにHPが高くてもほぼ即死レベルのダメージを受けるだろう。
「グ、グァァァァァァァ…ハァ、ハァ、武器召喚、雷刃」
「悪いなユースハル、ジョーカーには無意味なんだよ」
「アルキメデス、未登録従者の強制退却を命じろ」
「退却せよ、ジョーカー」
「ジョーカー、よろしく」
「全ては逆になる、裏は表に表は裏に」
ジョーカーの言葉によりジョーカーの能力が発動し、アルキメデスの命令が全て逆になった。退却は召喚にジョーカーは今回はアルキメデスに。これにより、アルキメデスは再びレンにはの従者として召喚された。
「退却せよ、アルキメデス」
「チッ…まぁいい。法はまだ続いている」
「ジョーカー、一時退却して」
「諦めるのか…ぃ」
ジョーカーが退却したと同時にユースハルも倒れていた。ユースハルが武器できたのを挑発だと捉えたカインが、得意の鎌で全力の攻撃をしたのだ。
「残念だったね、こんな簡単な陽動に引っかかるなんて。でも大丈夫、死にはしないよ」
「放て、デス・キャノン」
今まで誰も気づかなかったが魔界の兵器に再び魔力がチャージされていたのだ。そのチャージが終了しデス・キャノンが放たれた。街ではなく、城に向けて
「エベル・カルマ」
「ほぅ、そんなのも使えるのか」
エベル・カルマは今まで味方が受けた総ダメージが多いほどガード成功率が上がる優れものだ。ガード障壁が三枚重なっているような形をしている。
「だが、それごときで防げるわけがなかろう。おっと」
「よそ見は良くないよ」
「武器召喚、魔刃」
「そろそろ決着をつけましょうか」
 




