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天界

 会場内がざわめき出した。カインには想定内のことだった。神話に出てくるのは天界、魔界、そして人間の住む地上界の三つだ。魔界、天界はどれも架空の存在だとされていた。だが、魔界の存在が明らかになったことにより天界の存在もにわかに信じられ始めていたのだ。


「天界の者がいるというのはどうゆうことだ⁉︎」

「そのままの意味です」


 会場の全員が理解できなかった。魔界の次は天界があると言われてすぐに理解できる者はそうそういな

いだろう。


「魔界があるんですから天界があっても不思議ではないでしょう?」


 確かに不思議ではない。だが、魔界の時のように魔界人が出てきたわけでもないし、天界術が使われたわけでもない。存在している証拠がないのだ。


「なぜ、いるとわかるんだ?証拠はどこにある?」

「決定的な証拠はありません。今は憶測の段階です。ですが、明日にはわかります」

「何故明日なんだ?」


 カムイの言葉と同時に扉が開き、ルイが慌てて入ってきた。手には一枚の紙があった。


「か、会議中失礼します。アルスタ王国大総統閣下にご報告が…」


 紙を渡されたカインは少し微笑んでいた。


「どうした?何かあったのか?顔を見る限り朗報のように見えるが?」

「いえ、朗報ではありません。むしろ悲報です」

「お前の国も大変だな」

「わが国だけのもんだではありません。世界全体の問題です」


 会場が凍りついた。全員が今入ってきた紙の内容を理解したのだ。


「遅れた、もうしわけない」


 凍りついた状況を解放させたのはミリアナ皇国の大総統フレイだった。


「お待ちしておりました。フレイさん」

「何かあったのか?」

「サタンから連絡があり、明日攻撃をするそうです」

「そうか…明日か…」

「我々、アルスタ王国は全力でサタンに対抗します。各国大総統は自国を守ることに専念してください」


 考えている暇はなかった。どうしたら勝てるか、何が正しい選択なのか、今はカインの策にかけるしかないと全員が判断した。


「今日の会議は終わりにします。明日に備え、守りを固めてください」


 サタン襲来が明日だということはその日のうちに国民に知らされた。恐れのあまり失神する者、家財道具をまとめ始める者など様々な人たちで街はある意味賑わっていた。しかしその騒ぎも日没頃には治っていた。カインは国民に知らせると同時に国に仕掛けてあった防護特殊巨大魔方陣(ガーディアン・サークルを起動させ、街を完全に魔方陣の中に入れ完璧な守りの体制に入ったのだ。この魔方陣は約250年前から使われているものだが、未だ誰も突破できていないのだ。


「カイン、ナイラ王国大総統のミラから防護特殊巨大魔方陣の展開が完了したとの報告がありました」

「そうか、レンたちはいるか?」

「レンは明日の準備をしている。ナナは城の防護特殊魔方陣の展開をしている」

「そうか…終わり次第ここに来るよう伝えてくれ」


 3人には話しておかなければならないことがあった。今後ともに戦って行くためにも、明日サタンに対抗するためにも


「城の防護特殊魔方陣の展開が終わった。して、何故呼び出した?」

「何の用だ?」

「明日の戦いについて話しておきたいことがあってな」

「手短に済ませてくれ、魔方陣が安定していないため調整する必要がある」

「わかった。明日の戦いに勝機はない。魔界の援軍は来ない」


 3人は唖然としていた。勝機があるから他の国が協力してくれたのに今更勝機がないなどと言っている。負けるとわかっていて勝負するなどただの間抜けとしかいいようがない。


「正気か?他の国にはなんと言うつもりだ?」

「言わない」

「じゃあどうするんだ?負けるつもりか?」

「負ける気は無い。以前天界の話しをしたがあれは事実だ。天界の者は確実にいる。それが協力してくれれば問題ない」

「天界の者の正体は分かっているのですか?」

「あぁ、だが言わない。楽しみは最後まで取っておくべきだ」

「なら俺たちはどうやって知る?」


 天界の者がいると言う証拠が無いため、信用はあまりされていなかった。証明するためにはその人本人の協力が必要不可欠だが、あまり協力的では無いようだった。この先何があるか分からない、だからこそその正体を隠す尾も当然のことだった。


「明日にはわかる。話は以上だ。各自明日に備えてくれ」

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