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『顔無存在が集う冥夜。迷える子羊達は己が全てを晒け出し、己の存在を証明する。見失ってしまった最愛の欠片を探すため、それは白染烏が飛び立つと開かれる。静かに怪しい乱舞世界――』

こんにちわ!(^-^)現役女子高生の藤峰男です!(*´∀`)♪



愛読書『ライザップごはん』

 


 チリーン、とベルの音が鳴りました。どうやらお客様が来られたようです。

 わたしはすっかり脱力しきっていた頬をパンと叩くと、表情を引き締めます。出勤してから、実に6時間後のことでした。


 光の粒子がお客様の肉体を作り上げると、私はわあっ、と声を上げました。なんと珍しい、この空間に目覚めた状態で転送されるお客様は、1000人に1人と言われています。なんだか今日はいいことがありそうです。1つ前のお客様のお名前にさっそくあやかったのでしょうか。わたしは特に取り乱すことのないお客様に視線を向けました。


 伸びきった髪はぼさぼさで、やや不衛生な印象を受けます。しかしお肌はつやつやでした。前髪が左目にかかっているのでとても見辛そうです。右手に巻かれた包帯はなんでしょうか? 見たところ怪我をしているようには見えないのですが……。あっ! 今一瞬だけちらりと隠された右目が見えました! もしかしてオッドアイというやつでしょうか。左目の黒い瞳に対して右目の青い瞳、お洒落なんだから前髪を切って両方見えるようにしたらいいのに……。それに服装が全体的に黒いです。寒がりさんなのでしょうか。黒い色は太陽の熱を集めやすいですからね。我々天使がいつも白い羽衣を着用している理由は、一説によると人間界に降り立った時に太陽の熱を浴びすぎないように、らしいです。なんでも、一定量以上浴びてしまうと、溶けて地面に染み込んで、お花や植物の養分になってしまうのだとか。


 まず、お客様のお名前を尋ねます。長髪なので、男性か女性か、判断がし辛いため、念のために事務員が用意したお客様の履歴書を手元に呼びました。履歴書によると、男性らしいです。最近天界もクレームに対して敏感になっているので、万全を期する意味でも疑問は即座に解決していきます。

 お客様は答えました。


「俺の名は、『漆黒之奏者ザ・ダーク・イン・ダーク』。人間界では『小鳥遊たかなしあきら』の名を被って生活していた……。俺が生まれたのは『断裂空間アナザーワールド』、とある神社を彷徨っていたところ、仮初めの両親である小鳥遊夫婦に拾われた。だが俺が地球で生きていることを良く思わない連中もいた。それが『不審者達タヴー』だ。やつらとの死闘の末にとうとうリーダー『御偉様ザ・ボス』を倒したが、持病の悪化により愛する者たちに見送られながら死亡。そして今に至る……」


 わたしは驚愕しました。学生の頃、人間界の組織構成については散々学んだはずなのですが、小鳥遊さんの説明の中にはわたしの知らない単語がいくつも出てきました。なかでも『断裂空間アナザーワールド』、履歴書によると彼の出生は日本の某県某市となっています。つまり天界側の調査不足です。これは由々しき事態です。出生地を間違うなど、誕生日の一週間前にサプライズパーティーを開かれるぐらいに重大案件です。


 しかし訂正を求めるためには正式な書類に記入し、上司の承認を得なければなりません。確か、この仕事についてからそれらの書類の記入方法は一通り教わったような気もするのですが、この件に限っては教わっていなかったような……。いずれにせよ、上司からも散々「残業代はでないからな、余計な残業はするなよ」と言われているので、今回は見なかったことにしましょう。もちろん葛藤はあるんですよ? 


 さて、小鳥遊さんには例によって3枚の書類のうち1つを選んでもらいました。小鳥遊さんが選んだのは異世界転生。続いて要望の異世界を探すべくアンケート用紙への記入を行ってもらいます。

 果たして、『断裂空間アナザーワールド』で生まれ、『漆黒之奏者ザ・ダーク・イン・ダーク』として世界の闇と戦ってきた小鳥遊さんの要望にかなう異世界があるのか不安でしたが、記入済みのアンケート用紙に目を通し、条件にあった異世界を見つけることが出来ました。


「ここなんかどうでしょう」


顔無存在ノーフェイスが集う冥夜よる。迷える子羊達は己が全てを晒け出し、己の存在を証明する。見失ってしまった最愛の欠片パートナーを探すため、それは白染烏ホワイト・クロウが飛び立つと開かれる。静かに怪しい乱舞世界ランデヴー・ワールド――』


 小鳥遊さんは目をパアッと輝かせて、首を縦に振りました。やはり『漆黒之奏者ザ・ダーク・イン・ダーク』にはわたしでも理解できないような異世界がぴったりです。しばらくして小鳥遊さんは、光の粒子になってこの空間から消えてしまいました。


 興味を持ったわたしが転生先の異世界を覗いてみると、仮面舞踏会が盛んな世界でした。

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