気になること
幸与が賢人を家まで送ってから帰宅すると、美味しそうな匂いが漂ってきた
祖母が夕飯の準備をして待ってくれていた
「ごめん!ちょっと遅くなっちゃった」
もうすぐ災いがやってくると聞かされてからずっと幸与の中で気になっている事があった
しかしその事については、多分自分が期待している通りの答えが返ってくるだろう、いつか聞けばいいし聞けないまま当日を迎えたとしてもなんとかなるだろうと楽観的に考えていたが一応今の内に聞いておくことにした
「災いを撃退した後にさ、町の人達の記憶を消すんだよね?」
「あぁそうだよ」
祖母は味噌汁を啜りながら返答した
「それってさ、その災いが襲ってきたっていう記憶を消すってことだよね?」
「ちょっと違うね、災いの記憶を消すのもあるけど魔女に関する記憶も勿論消えるよ」
「それってつまりその日一日の魔女のことだけ忘れるって事だよね?」
祖母は幸与が何を聞きたいのかよくわからず首をかしげた
「私今までずっと町で人助けとかしてきたじゃん?そうしてる内に顔馴染みの人とかもできてさ、まぁ私の事魔女って知らないんだけど。そういう人達は大丈夫だよね?それと、例えば私が飛んでるとこを誰かが目撃したとして。ハッキリは見えなかったけどあれは伝説の魔女だーとか噂されてたとしてそういうのも消えたりしないよね?」
軽い気持ちだった。どうせ災いがきた日の記憶だけなくなるのだろうと。
しかし祖母から返ってきた答えは幸与の想定外の答えだった
「何を言いたいのかよく分からないけど、とりあえず"魔女に関する記憶"を消すことになるから今までユキと関わったことのある人間全員の記憶からユキの事は消えるよ。ユキが魔女だって知らなくても、話したことある人間もただ見かけただけの人間も全員あんたのことを忘れてしまう。残念だけどそれは仕方ないことなんだ」
愕然とした、頭が真っ白になり時間が止まった気がした。
いつも挨拶をするおじいさんも小学生も、そしてなにより賢人すらも自分の事を忘れてしまうのか。
幸与の手から箸が滑り落ちた。
「そん...な...」
「...ユキがそこまでショックを受けるほど人間と関わっていたなんてね...やっぱり山から降りる事を強く反対するべきだったのかもね。ユキの社会勉強になればと魔法を人前で使わない事を条件に自由にさせてあげてたけど...でも仕方ないんだ、これが私達の役目。人間は私達の存在を知っていてはいけない。私達はひっそりとこの世のバランスを守り続ける運命なんだ」
うつむき涙を流す幸与の頭を撫でながら祖母は優しく言葉をかける
受け入れなくてはならない、でもそんな簡単に受け入れるなんて無理だった
夕食を終え食器を洗いながら幸与は考える
明日は賢人が幸与のために男気を見せてくれる日だ。必ず見届けると約束した。引きずったまま暗い表情で明日を迎えるわけにはいかない
さっきの話は一旦心の奥にしまっておこうと




