魔女の真実
山中幸与
容姿は若く高校生から大学生くらいに見え、髪は黒のロング、魔女といえば海外の伝説というイメージがあるが顔立ちはモロに日本人だ。正直外見からは魔女らしさは全く感じられない。いや、そもそも魔女らしさというのは我々人間が勝手に想像してしまっているイメージがあるだけで彼女のようなどこにでもいそうな容姿の魔女というのが魔女の世界では当たり前なのかもしれない。
友達になってよと言ったもののよく考えてみれば相手は女性でしかもどうみても年上だ。改めて妙な恥ずかしさのようなものが込み上げてきた
賢人は女友達というのは小学生低学年の頃にいた以来で異性との交際経験も無いわけで、どう接して良いのかわからなくなっていた
賢人は幸与から少し距離を置き後ろを歩きついていく
しばらく歩くと幸与は田んぼで作業している老人に声をかけた
「おじいさん!帽子取り戻したよ!」
「おぉ!さっきのお嬢ちゃんか!こりゃあすまんな!」
帽子を受けとると老人は何かお礼をしたいと申し出たが幸与は丁寧に断り、二人はその場を後にした
「さっきのおじいさんは知り合い?」
「違うよ」
「え?」
「たまたま近くを通ったときにね、あのおじいさんの帽子が鳥に持っていかれちゃってて私が取り返してあげたの」
なるほど、それであのとき帽子が空からやって来たわけだと賢人は納得した
「私ね、毎日こうして山から降りてきて人助け的な事をしてるの。」
「何のために?」
「まぁ山で修行してるだけじゃ暇って言うのもあるんだけど...」
と言いかけて彼女は急に目線を反らし頬を赤らめ話しをつづけた
「私の名前さ、幸せを与えるって書いて幸与なんだ。お母さんがつけてくれたんだけどね。幸せを与える子になって欲しいっていう意味が込められてるんだって。だから私はその通りだれかに幸せを与える存在になりたいなって。」
幸与は照れくさそうに頬を人差し指で掻いた。
「へえ~、ってことは日本人なの?魔女に日本っていうイメージがないんだけど」
「私たちの一族は、かなり昔の時代からあの山で暮らしてきたんだ。時代にあわせていつの間にか名字まで付けてもらったそうで。山の中に暮らしてるから山中ね。」
「ふーん、でもどうやって繁栄してきたんだ?」
「実は日本全国に魔法使いはいるんだ、人間の目につかないようにずっと密かに生きてきた。」
「へぇ~、でもさそれって何か辛くない?というかあんた達は何のためにひっそりと生き続けるんだ?」
賢人は質問をしながらふと思ったがこんなに根掘り葉掘り聞いて良いものなのか、しかし気になるものは仕方ない。それでも幸与は嫌な顔をせず答えてくれた。
「あのね、この世界に定期的に災いと呼ばれる魔物がやってくるんだ」
「え!?」
魔女の存在事態デンジャラスな匂いがするがそれを上回るスケールの話が出て来て思わず驚きの声を出してしまった。
「まぁここ数十年日本には来てないみたいだけどね。その災いを追い払うのが私たちの役目。そうやって世界はバランスを保ってるの。だから日本だけじゃなくて世界中に魔法使いはいるよ」
「いや、でもそんな魔物が現れたなんて話し聞いたこと無いし」
「そりゃあいくら魔物が暴れようとみんなの記憶には残らないようにしてるからね。アフターケア大事」
「そんな...」
自分の中の常識というものが全て崩壊したようなそんな感覚になった。今まで当たり前のように生きてきた裏でそんな恐ろしい出来事が起きてたなんて
「それじゃあいつかまたその災いがやってくるわけ?」
「来るだろうね。いつになるかはわらないけど。私のお父さんとお母さんはね災いについて調査するために世界中飛び回ってるの。だからいつか原因とか詳しい事がわかるかもね」
賢人くらいの年頃になるとだいたい非日常のような出来事に憧れを抱くものだ、しかしいざ目の前で現実に起こったとは思えない妄想レベルの話が現実に起きた事だと知らされると恐ろしさが沸き上がる
もう日常には戻れないのでは...
いや、そもそも自分の日常なんて今は直視したくない悲惨なものだった。いっそその災いとやらに滅茶苦茶にしてもらいたい。
この世の理から外れたような事実を告げられて軽く混乱していた賢人だったが今一番大事なことを思い出した。
「そういえば俺迷子になってるんだった」




