出会い
平日の昼間から中学生が出歩いている。しかも春休みはとっくに過ぎ、学生達は学校に通い授業を受けている時期に。
いわゆるサボり、ズル休みというやつだ
だからといって賢人が不良なので学校をサボって出歩いているというわけではない。
賢人は去年の中学進学のタイミングでこの町にやって来た
両親が離婚し、母親に引き取られる事になった賢人は母の実家で暮らす事になったのだ
都会からやってきた転校生、この田舎の中学では芸能人がやってきたかのように騒がれた。
彼の周りには人だかりができ、都会の娯楽についてや芸能人に会ったことがあるか等質問攻めにあった
しかしそんな日々も長くは続かなかった。
転校生が騒がれるのは最初の一週間程度なんてのはよくある話で、実際賢人も一週間もすればほとんど騒ぎは収まった
それだけなら良かったのだが不運にも賢人はクラスのガキ大将に目をつけられてしまったのだ
「お前よぉ!都会から来たからって調子のってんじゃねぇぞ!」
ガキ大将に体育館裏に呼び出され大声で怒鳴られた
周りの取り巻き数人が詰め寄ってくる
「生意気なんだよお前」
「チヤホヤされて嬉しかったか?」
こんな状況アニメやドラマじゃなく現実で起こることなんだな...と賢人はうつむき考えた
「なんとか言えよオラ!」
こうして賢人はガキ大将と取り巻き数人に殴られその話は瞬く間にクラスに広まり、賢人に関わるとあのガキ大将に何をされるかわからないと、誰も賢人に近寄らなくなった
友達も出来ない、ガキ大将達からはイジメを受ける
そんな生活に一年耐えた賢人だったが中学二年の始業式でのクラス発表にて再びあのガキ大将と同じクラスだという現実に直面した時に心が折れた。
それでも新学期始まって数週間は我慢して通ったが、ガキ大将からのイジメは終わる事は無かった。
そして今日の朝、賢人はわざとらしく額に手を当てながら、普段より弱々しい声で母に声をかけた
「なんか今日体調悪いかも...」
「あら?大丈夫?学校行ける?」
「いや、無理っぽい...」
「そう、じゃあ仕事行く前に学校に連絡しとくわね。ゆっくり寝るのよ」
「うん」
ついに人生で初めてズル休みをした。
なんとも言えない罪悪感で少し胸が苦しくなったが、すぐに学校を休めるという喜びで満たされた
ゆっくり休みを満喫するぞ!と意気込んだは良いものの、部屋にある漫画は全て読み飽きた、何だかゲームもする気分でもない。どうしたものか...
ちょっと散歩にでも出掛けよう。祖母に散歩に行くと声をかけ家を出た
しかし外出する度に毎度毎度思うが本当に田舎すぎて暇を潰せる場所がない
ショッピングモールやゲームセンターなんてものは電車を使って隣町にまで行かないと存在しない
散歩なんてしたところで暇は潰せないな...
なんて考えつつ気が付けば結構遠くまで歩いてきてしまった。
「あれ?どうやって帰るんだっけな、大分前にこの辺には来たことあるような気はするんだけどなぁ」
とにかく来た道を戻ろうと考えたがそもそもただ真っ直ぐ歩いてきた訳でもないしどこで曲がったかも曖昧だ
「うーん、なんかここ通ってきたような」
民家と民家の間の細い路地へ入り進んでいく
すると目の前に一人の女がいた
彼女は路地から道路へ顔を出し何かを見つめている
おもむろに女が杖のようなものを握りそれを道路の方へ向けてかざした
すると突然麦わら帽子が彼女の元へ飛んできて、女はそれを手にとった
一体何なんだ...と賢人が呆気に取られてると彼女がこちらへ振り向いた
「え、え、え、あ、え?」
女は取り乱した様子で頭を抱える
「み、見てた?」
「見てたって...何を?」
「よ、よ、よかった~。そっかそうだよね。ううん」
女はホッとした表情でその場を去ろうとするが、明らかに様子が怪しい
「その麦わら帽子どこから飛んできたんですか?さっき杖みたいなのを使ってたのと関係あるんですか?」
賢人が質問を投げ掛けると彼女は目を回したような表情で再び取り乱す
「あ?え?なにが?麦わら帽子???え?あぁなんか飛んできたね、たまたまね。うんたまたま」
「いや、でも軌道がおかしかったというか、風にのってきたって感じじゃなかったような」
「いやいやいやいや風だよ風!いやぁ今日は風がつよいねハハハ!じゃあまたね」
これだけ取り乱しているという事は何かあるはずだ、と賢人は顎に手を当てて考える。
本当に風が吹いただけなのかそれとも
そうしてうちに女はコソコソと賢人の様子を伺うようにしながらその場を去ろうとしている。
「魔法とか...」
無意識のうちに言葉が出てしまった、さっき魔女がどうのこうのと叱られていた子供の事が一瞬脳裏に過ったからだ。
我ながら恥ずかしい事を言ってしまった。訂正しようと賢人が口を開こうとした瞬間
「お願い!誰にも言わないで!絶対に絶対に!誰にも言わないで!」
女が手のひらを合わせ頭を下げた




