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別れ

二人は昨日と同じ山中の休憩所から町を眺め話しをしていた

幸与と出会ってから今日までのたくさんの思い出を余すことなく語り合った

二人の視線の先にある町は夕焼けがオレンジ色に照らしていた


「夜景も見たし、昼間の景色も見た。そして今日は夕暮れの景色だね。」


そう話す幸与の横顔は少し悲しそうな、今までより大人びた雰囲気を感じさせた


「ねぇ、幸与さんの家ってこの山にあるんでしょ?登山客とかに見つかったりしないの?」


「私の家は登山客は滅多に寄り付けないくらい深い所にあって、一応結界が張ってあるから普通の人間には見えないし近寄れないんだ」


「へぇ〜、どうせなら一回くらい行ってみたかったなぁ。」


「あ、じゃあ今から...」


今から行こうよ、そう言いかけた所で町が段々と白い光に包まれていくのが見えた


「幸与さん、そろそろ時間みたいだね...」


賢人もその光が何なのかを察した


このまま時間が止まればいいのに、ここに残って記憶を失った後に幸与から事情を聞けばまた友達としてやり直せるんじゃないか

そんな考えも浮かんだ

別れたくない、でも別れなくてはいけない

ここに転校して来る前の友達と別れる時よりもずっとずっと名残惜しい

幸与の方へ目をやると、とても悲しそうな、せつなそうな笑顔を賢人へ向けていた

そんな幸与の表情を見て賢人の瞳に涙が浮かぶ。

ここでお別れをしても自分も幸与もこの町にいることは変わりない

この町にいる限りまたいつかきっと会えるはず

そしてまたいつかきっと友達に...

心を決めた賢人は幸与に背を向け歩き出す

数歩進んだところで振り向き


「じゃあ、また明日」


と、いつもと変わらぬ挨拶をした


「うん、また明日」


幸与もいつもと変わらぬ笑顔で手を振る

いつもと変わらぬ明日を迎えられたら...

再び幸与に背を向け、溢れ出す涙を腕で拭いながら歩き出す

背後からは幸与の大きな泣き声が聞こえてくる。

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