幸与の決戦
古い一軒家の2階にある賢人の部屋の窓が叩かれるような音がして昼寝をしていた賢人の目が覚めた
風の音かそれともイタズラで石でも投げられたかと窓を見ると箒に跨った幸与がいた
「幸与さん?どうしたの」
「あのね、今日ついに災いがやってくるの。だから絶対に家から出ちゃ駄目だよ?」
そう言い残し幸与は去っていった
まさかこんなに早く災いがくるなんて、賢人は力なく倒れ込み、天井を見つめる
「家から出ちゃ駄目、か...」
確かに、ただの人間である自分には何も手伝える事はない...
でも、このまま何もしない訳にはいかない。
自分が戦いに臨んだ時、幸与が応援してくれた。力をくれた
今度は...自分が幸与の力になる番だ
賢人は手のひらを見つめ、あの日幸与が包んでくれた感覚を思い出す
「何だか嫌な気配がどんどん強くなってきたな」
「そろそろ出現しだす頃かもな」
夕方に近くなってきた頃
二人の魔法使いの男が空から町を見下ろしながら会話をしている
すると町の一角から煙があがっているのがみえた
「きたか」
二人は煙の方へ向かう
「どこだ?」
「一体だけだといいんだが」
と煙の近くへ降り辺りを警戒する
すると当然背後から何かが飛びかかってきた
「クソ!」
ギリギリのところで回避し男は杖を取り出し火炎弾を放つ
災いと呼ばれる全身黒の人に似た形をした生物は火炎弾が当たり倒れ込んだ
「やったか!?」
「いや、まだだ。こんなもんでくたばっちゃくれないよ」
一方、幸与も別の場所で祖母と共に災いと対峙していた
幸与の祖母が災いへ向けて魔力弾を連発するが相手のスピードが速く、ことごとく外れてしまう
幸与も魔力を光線にして放つが当たらない
「まいったね、こんな速い奴は初めてだよ」
何度も災いと戦ってきた祖母も今までにない速さの災いに対して焦りを感じ始める
「至近距離で撃てば当るかも!」
幸与は祖母の攻撃を回避する災いの背後へ距離を詰めて光線を放つ
見事攻撃はヒットした
「やったぁ!!」
と幸与が喜んだのも束の間、相手は全くダメージを受けた様子もなく幸与へ向かって飛びかかってきた
「うわぁぁあ!!!」
やられる...
幸与は目を閉じ防御の体制をとる
しかし、痛みを感じることは無く、幸与はゆっくりと目を開けた
「あれ?...」
すると目の前で祖母が幸与を庇い敵の攻撃を背中で受けていた
「お、おばあちゃん!!!」
祖母の背中には大きな爪痕が残り大量に出血している
「ユ、ユキ...自分で治せるから...あいつを...倒しな...」
そう言うと祖母は回復魔法を自身に施し始めた
幸与は涙ぐんだ目を拭って災いを睨みつける
災いへ向けて何度も光線を放つがやはり当たらず
災いが幸与へ飛び掛かり攻撃を仕掛けてきた
なんとか回避するも次からつぎへと攻撃を繰り出され避けるので精一杯になりなかなか反撃ができない
大きく後方へジャンプしなんとか距離をとるがこのままでは自分の攻撃は回避されまた相手の攻撃を一方的に受けるだけになってしまう
やはり自分なんかじゃ勝てないのか...自分の無力さに焦りと苛立ちを感じたその時
「幸与さーん!!!負けるな!!!」
聞き覚えのある声がどこからか聞こえた
「え?」
声のする方へ振り向くとそこには賢人がいた
「俺、ちゃんと見てるから!だから幸与さん頑張れ!」
「賢ちゃん何してるの!家から出ないでっていったでしょ!」
賢人が巻き込まれてはいけないと慌てて賢人の元へ駆け寄る
「俺昨日さ、幸与さんにおまじないかけてもらったじゃん?だからそのお返ししなきゃって思って」
「バカ!それでもこんな危険な所に来ちゃダメでしょ!」
「ゴメン...それでもちゃんとお返ししたくて。俺、幸与さんのおかげで勝てたから...だから!」
賢人は幸与の手を両手で包み込んだ
「幸与さんも勝って!絶対に」
「けんちゃん...」
と、その時災いが二人へ向かって飛びかかってきた
普段の幸与なら慌てていただろう、しかしこの瞬間の、賢人と手と手で繋がっている幸与は違った
ゆっくり息を吸い込み魔物へ向かって杖を向け、そして魔力の光線を放った
さっきまでより威力とスピードの増した光線は災いへ直撃する
光線を途切れさせることなく災いへ当て続けるが相手も踏ん張り光線を受けたままこちらへ向かってくる
賢人は幸与の杖を持つ方の手へそっと自分の手を添えた
二人の視線が合い、お互いに頷いた後に災いを見つめグッと力を込める
幸与の放つ光線の威力はどんどん増して、災いを飲み込むほど巨大な光になった
光に包まれた災いはやがてあと方もなく消滅していった
それを見届けると二人は顔を合わせハイタッチをした




