二人で過ごした証
「ん...ううん...あれ!!?俺寝ちゃってた?」
「うん、もうグッスリ」
賢人は慌てて飛び起きた、空を見上げるとまだ日は高く昇っている。
そんなに長時間眠っていた訳ではなさそうだった。
同時に体に異変を感じた
「あれ?怪我が治ってる?」
「さっき寝てる間に魔法で治したの」
「そうなんだ、ありがとう」
「ねぇ...今日もけんちゃんに大事な話しをしなくちゃいけないの」
幸与の表情が曇った
「その前に、ちょっと山まで行かない?」
とおもむろに箒を取り出す幸与
「え、人に見られちゃマズイんじゃ」
「大丈夫大丈夫猛スピードで行けば見られないよ」
川から山までは結構な距離があったのだが流石猛スピードと言うだけあって一瞬で辿り着いた
相変わらずよく振り落とされなかったもんだと賢人は心の中で自画自賛する
山は登山用に道が舗装されていて誰でも登れるようになっている
二人は登山道を歩き上を目指す
しばらく登ると登山道から少しそれた所に休憩所と思われるスペースがあった
木のイスと机が用意されており二人はそこに腰を掛けた
「私は今日のこと絶対に忘れないからね」
「何だよ急に改まって...まぁ俺も忘れないだろうな今日のことは」
「そっか...」
「うん。それより大事な話って何?」
幸与は深刻な表情でうつむいている。
「昨日災いがやってくるって話ししたよね。」
「うん」
「その災いを退けた後にね、この町の人々の記憶から魔女の記憶を消すんだって」
「覚えてたら大変なことになるし。当然といえば当然だな」
ふと幸与の方に目をやると幸与がこちらをじっと見つめていた
「な、何?」
「だから、魔女の記憶が消されるんだって!」
「幸与さんは何が言いたいんだ?」
「その日一日だけの記憶じゃなくて今までの全部魔女に関する記憶は消されちゃうんだって!」
「え...?」
ここで賢人はようやく理解した
魔女に関する記憶、幸与に関する記憶が消されてしまう
"幸与との思い出が消えてしまう"
「そ...そんな...どうにかならないの?」
「どうにもならないんだって...」
「そんな...」
せっかく友達になれたのに、たった3ヶ月ほどで終わってしまう
賢人は涙目になっているのを気づかれないように顔をそらした
すると目の前には山から見える町が広がっていた
前に幸与と見た夜景ほど高い場所からの見晴らしではないものの心を奪われる程綺麗だった
「幸与さん見て、町が見える」
「うん、知ってるよ。」
「今日みたこの景色も前に見た夜景も忘れちゃうのかな」
「絵に書くとか写真に撮るとかしたら残るかもね」
「絵に書く...そうだ!」
突然何かを思いつき賢人が立ち上がった
「幸与さん、二人の名前を彫ろう。このイスに!形で残そうよ!」
賢人の提案を聞きさっきまで曇っていた幸与の表情が一気に晴れた。
「いいね!けんちゃん賢い!」
「記憶が無くなっても二人で過ごした証は消えないはず」
「うんうん!」
「ねぇ幸与さん、明日も遊べるよね?災いがやってくるギリギリまで思い出つくろうよ」
「うん!」
その頃山中家では幸与の祖母の元へ他の魔女からの連絡が届いていた
「ほう、明日にはやって来ると...なるほどね。孫にも準備させておくよ。はいそれじゃあご苦労さん」
通話が終わり幸与の祖母は受話器を戻し溜め息をついた
「思ったより急だねぇ...ユキは大丈夫かね」




