クジラと眼鏡
初の童話投稿です!
少しだけ、寒い冬の日へ…ほのぼのをお届け出来れば幸いです。
西の空は、真っ赤に染まっていた。
山間から覗く夕陽が、街を空をオレンジ色に染めて、今日という日に別れを告げていた。
桃子は、オレンジの混じった青い空をボーッと眺めていた。
小学校の裏には、小高い山がある。
そこには、子供たちのためのアスレチックがいくつも建てられた公園があった。
肌寒い冬の夕暮れ、頬や鼻の頭を赤くした子供たちが、お腹を空かせて家路につく頃。
桃子は、公園の一番高い木の上の秘密基地から足を投げ出して、西の空をキラキラと輝く目でジッと見ていた。
「モモちゃん、なにを見てるの?」
「ヒロくん? あれ?帰らないの?」
桃子の隣に飛呂彦が座った。
二人で、床の端からぶらぶらと足を投げ出して揺する。
「今日、僕は鍵っ子なんだ。父さんも母さんも帰りが遅いから、まだ帰んないんだ。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
「それで、モモちゃんは何を見てたの?」
「え~とね、クジラを見てたの。」
「…クジラ?」
「うん、クジラ!」
飛呂彦は、西の空を見た。
田舎街の田園風景の先には、そびえる山々。
空には薄い雲。
散らばるような街並みは、中心に向けて雑然として建物が増えている。
飛呂彦は、その風景を見るたび、玩具箱を引っくり返したようだなぁと思っていた。
「クジラ、見えないよ? モモちゃん、どれ?」
「あ、そっか……、見えないのかぁ……。」
桃子は、今気付いたようにバツが悪い表情で飛呂彦をチラリと見た。
「……ごめんね。でも、嘘じゃないんだよ?」
悲しそうな顔で俯く桃子に、飛呂彦はニッコリと微笑んだ。
「僕の方こそ、見えなくてゴメンね?
ねえ、モモちゃん、クジラってどんな感じ?」
「えっ!?」
桃子は、ビックリして飛呂彦を見つめた。
桃子はクラスで、『嘘つき桃子』と呼ばれていた。
意地悪な子には、『モモッキオ』と、ピノキオと桃子を足して二で割ったアダ名を投げ付けられていた。
いつも人の居ない所なのに誰かがいるように、独りで延々とお喋りしたり、空に向かって手を振ったり、学校の溜め池を覗き込んで奇声を発したり、写生大会で訪れた神社で突然泣き出したり喚いたり。
桃子には、普通の人には見えないものが見えていた。
当然、そんなことを知らない人は、気味悪がって桃子から離れて関わらないように遠目で見ていた。
とにかく、桃子は奇妙な子として学年では有名な問題児だった。
しかし、見た目は愛らしい美少女だった。
真っ黒の髪はいつも波打っていて背中の真ん中まで伸ばしていて、歩くとふわふわと空気に舞って、柔らかそうなのが遠目でも良くわかった。
黒い瞳は大きくパッチリとしていて、それを縁取る睫毛は長く、瞬きをするたびに風が起きそうだと言ったのは誰だったか?
唇はぷっくりと盛り上がった桜色で、リップクリームを塗ってないのに、いつもツヤツヤしていた。
肌は色白で、蜂蜜を溶かしたような象牙色をしていた。
頭もさほど悪くは無いので、『嘘つき』さえなければ、学校のマドンナとして位置付けられることだったろう。
嘘つきも美少女も、田舎の小学校では気味の悪い突飛な子として、近寄りがたく馬鹿にしやすく妬みやすく。
意地悪する子は居ても、桃子と友達になってくれる子は殆どいなかった。
だからこそ、桃子は驚いた。
同い年の男の子が、桃子に謝ったことも、桃子の言葉を肯定的に捉えてくれたことも、桃子には初めての事だった。
「ヒロくんは、信じてくれるの!?」
「うん! モモちゃんは、嘘つきじゃないよ!
僕ね、……思うんだ。
僕に出来ないこと、いっぱいある!
背が低いから、まだ見えない景色もいっぱいあるし、読めない漢字もいっぱいあるんだ。
ニュースで言ってることも、新聞に書いてあることも、まだ良くわからないし…。
モモちゃんは、逆上がり出来ないけど、僕は出来る。
モモちゃんは、算数で百点取ったけど、僕は93点だった。
モモちゃんが見える景色と、僕の見える景色が違くっても、それって当たり前の事なんだと思うの。」
ハッとして、桃子は飛呂彦を見つめた。
飛呂彦は無邪気にニッコリと笑うと、桃子の頭をなでた。
桃子は、じんわりと目頭が熱くなるのを感じた。
桃子にだって、分かっていた。
自分が周りの子供と違うことを。
それでも、もって生まれた特徴や個性を否定することや変えることは自分を否定することで、桃子にとっては本当に難しく、辛くて変えることの出来ないことだった。
桃子には、普通のこと。
目があって見える、耳があって聴こえる、口があって話せることと何らか変わらない普通のこと。
けれど、他の子には理解できない事だった。
当たり前の事なのに、面白がって、気味悪がって、誰も桃子を理解しようとしてくれなかったのだ。
嘘つきと、『モモッキオ』と呼ばれる度に、心がえぐれて気持ちが萎んで落ち込んだ。
『モモ、大丈夫さね。分かる人には分かる。
理解しようとして側に居てくれる子は必ず居るのよ。』
泣いて帰る度に、おばあちゃんは桃子の頭を撫でながらそう言う。
(…おばあちゃん、居たよ! ここに居たよ! )
徐々に滲む景色の中で、飛呂彦が無邪気に微笑むのが見えた。
「ヒロくんは、すごいね…!」
「そんなこと無いよ~。
それで、クジラって、どんな感じなの?」
桃子は、袖で涙を拭うと、キラキラとした目で西の空を見て指差した。
「あそこに、沢山居るのよ!
おばあちゃんが言ってた!
あれは、"旅するクジラ"だって! 」
「"旅するクジラ"? 空に浮いてるの?」
「そう! "旅するクジラ"は、様々な世界や次元や時間を旅するんだって。だから、今はこの空を泳いでいるの!
さっきからね、『フィーーーォ、キュルーォ、クィーーー』って歌ってるのよ!
とっても、ステキだわっ!」
桃子は、聞かれたことが嬉しくて、聞いてくれる人がいるのに興奮して頬が真っ赤になった。
嬉しくて嬉しくて、ニコニコと早口にまくし立てる。
「うわぁ~! 良いなぁ~!!
僕も、見てみたかったなぁ…。
とっても大きいのかな?」
「うん! スッゴくスッゴく大きいよ!
田んぼが五つあっても足らないくらい、こーんなに大きいよ!
色はね、真っ白なんだけど、瞳がね!虹色なのよ!」
「すごいね! ステキだなぁ~!」
「おばあちゃんがね、言ってたよ!
"旅するクジラ"は、時々歌いながら踊るんだって!
それでね、…あっ!!」
「えっ、どうしたの、モモちゃん?」
「そうだ! ウロコの眼鏡だ!!
ヒロくん! 大変だわ!!
おばあちゃん家に行こうっ!!」
「えっ!? おばあちゃん家って?」
桃子は、興奮して立ち上がると、飛呂彦を引っ張って無理矢理立たせた。
「あのね! クジラがたまに踊ると、鱗を落とすの!
それで、その鱗を磨いて眼鏡にすると、見えないものが見えるようになるんだって!
おばあちゃん家にはね、そう言う不思議な雑貨がいっぱい、い~っぱいあるの!
クジラのウロコの眼鏡、借りに行こう!!
そしたら、ヒロくんも見えるようになるよ!
ねっ!早くッ!」
それを聞いて、飛呂彦はびっくり仰天!
「ぼ、僕にも見えるの!?うんっ、行くよっ!
モモちゃんのおばあちゃんに、会いに行きたいっ!」
桃子も飛呂彦も、ぎゅーっとお互いの手を握ると、はじけるような笑顔がこぼれた。
それ、急げと言わんばかりに、二人は秘密基地の梯子をかけ降りて、なんのためらいもせず、手を繋ぐとキャッキャッ良いながら走り出した。
目指すは、おばあちゃん家の雑貨屋だ。
**********
煉瓦造りの雑貨屋は、街の南の端に建っていた。
壁に蔦が絡み、玄関脇にはワイン樽のプランターに様々な花や草が生い茂り、雰囲気は優しくて明るい。
敷地と道路を区切る黒い鉄格子の塀に薔薇が絡まっていて、今は黄色い小さな薔薇の花が咲いていた。
一見、雑貨屋には見えない、コジャレた洋風の家だ。
しかし、玄関脇にのワイン樽の上に木の看板があった。
『 万屋 竹雀堂 』
桃子と飛呂彦は、お店の前に立っていた。
桃子は、飛呂彦の手を引っ張って店に入ると大きな声で、おばあちゃんを呼んだ。
「おばあ~ちゃ~ん! 来たよぉ~!」
飛呂彦は、桃子に手を引かれながらキョロキョロと店の中を見回した。
食器にカラフルな布に置物、古い本や液体の入った瓶、使い方も良く分からない雑貨が棚という棚に、所狭しと並び立っていた。
どれもこれも何とも言えない魅力に溢れていて、キラキラとしていた。
飛呂彦は、感動と興奮が徐々にワクワクと膨れ上がるのを感じた。それでも、なんとか昂る気持ちを押さえ付けて、棚にぶつからないよう気を付けながら歩いた。
「おばあちゃん、こんにちはぁ~っ!」
「あいあい~、こんにちは~。
この元気な声は、桃子かね~?」
「そうだよぉ~っ! 桃子が来たよ~!」
カチャッ、キィー…と奥の方から扉が開く音がした。
一番奥のカウンターの後ろの扉から、ほっそりとした上品な老女がゆっくり現れると、桃子と飛呂彦を見て嬉しそうに相好を崩した。
「おや、桃子、お友達かい?」
「えっと、ねぇ…」
友達かと聞かれて、桃子は躊躇うようにチラリと飛呂彦を見た。
それに気付くと、飛呂彦はニコーっ!と満面の笑顔を桃子とおばあちゃんに向けた。
「僕は、飛呂彦!
モモちゃんのお友達です!
今日はお邪魔しまぁ~す!」
その言葉に、桃子は嬉しくて少し泣きそうになって顔をそらすと、おばあちゃんと目があった。
パチンッと、おばあちゃんが嬉しそうにウィンクを一つ桃子に投げ掛けると、桃子は照れ臭そうに満面の笑顔を返した。
おばあちゃんは、小さな二人の満開に咲く花のような笑顔を、少し垂れ下がっ暖かい眼差しで見つめた。
「あいあい、飛呂彦くんだね?
桃子を宜しくねぇ~。
はいさ、はてさて!今日はどうしたのかな、桃子や?」
「あっ! そうだった!
あのね、あのねっ、おばあちゃん!
今ねっ、街の上に"旅するクジラ"が来てるの!!
それでね、その姿をヒロくんにも見せてあげたくて、ウロコの眼鏡を借りに来たの…。」
断られたり叱られたら、どうしよう…と言葉の最後は口ごもってしまい、徐々にうつ向きながら桃子はもじもじと服の端を握ったり揉んだりした。
「おばあちゃん、お願いしますっ!
僕に、ウロコの眼鏡を貸して下さいっ!
壊さないよう大事に使います! 今日中に返します!」
飛呂彦は、必死になって頭を下げた。
そんな様子の二人を見て、おばあちゃんは目を真ん丸くした。
「おやおや!
飛呂彦くんは、桃子の言葉を信じるのかい?」
「はい! 信じます!
モモちゃんは嘘つきじゃないと思います!」
飛呂彦は、じぃっとおばあちゃんを真っ直ぐに見つめました。
そんな様子の飛呂彦を見て、飛呂彦の少し後ろにいた桃子の目に、涙がまた盛り上がりました。
おばあちゃんは、ニッコリと笑って、『うんうん』と頷きました。
「飛呂彦くんは、ええ子だわね。
桃子、分かっとると思うけれど、こういう子を大事にしなさいね。
さて、『ウロコの眼鏡』だったね?
ええよ、ええよ、貸したげるさ!
しかし、貸すのは良いけれど、ひとつ条件があるわね?」
おばあちゃんの言葉に、嬉しくて『やった!』と叫ぶ桃子と、目をキラキラとさせる飛呂彦。
「ありがとう! 大好きっ、おばあちゃん!」
「ありがとうございます! 条件ってなんですか?」
二人でカウンターに詰め寄ると、『ほっほっほっ』と笑いながら、おばあちゃんが二人の頭を撫でた。
「飛呂彦くん、本を読むのは好きかい?」
「…はい! 大好きです! 」
「そうかい、そうかい。
そしたらね、飛呂彦くん。
貴方には『万屋目録書の手記』を書いてもらいたいのよ。
そうしたら、ずっとウロコの眼鏡を貴方に貸してあげるわね。」
「えっ…? 『万屋目録書の手記』?
おばあちゃん、それってなぁに?」
「『万屋目録書』というのはね、このお店にある品物が全部載ってる本のことさね。
これに『手記』を付け足してもらいたいのよ。
『手記』っていうのはね、物の正しい使い方や使ってみた人の感想だわね。
だから飛呂彦くんは、定期的に此処に来て、このお店の色んな物を使って感想文を書いてほしいのよ?
どうかしら?
出来そうなら、ウロコの眼鏡を貸してあげるけど…?」
「…『万屋目録書の手記』…!
ぼくに書けるのかなぁ…?」
「大丈夫だよ、ヒロくんなら! 」
「う、うん! とっても面白そうだけど…。」
「ほっほっほっ! 飛呂彦くんは、慎重な子さね!
心配事は分かるわね。
まず飛呂彦くんは下書きを書いてみて、手記を目録書に載せても大丈夫か、必ず私が目を通すから安心をし。
さぁ、どうするかねぇ?」
おばあちゃんは、ニコニコと微笑みながら飛呂彦の答えを促した。
飛呂彦は、考えた。
本を読むのは、大好きだ。
お父さんもお母さんも仕事で忙しくて、家に居ても飛呂彦を構ってくれる人は居なかった。
悲しいことや腹立たしいこと、焦ったことや寂しいことを本の中の住人たちが、いつも慰めてくれていた。
本を書くことと、また少し違うけれど、『手記』を書くと言うことは、誰かが飛呂彦の文を…心の機微や体験を読むと云うこと。
飛呂彦は、ドキドキした。
不安の影から、興奮と嬉しさとこれから起こる出来事に対してのワクワク感が沸き上がってきた。
隣で桃子が、心配そうな眼差しで飛呂彦を見つめていた。
飛呂彦は、真剣な表情でコクリと頷いた。
「おばあちゃん、ぼく、やってみる!
ううん! やらせて下さい!
頑張って書いてみます!」
「…ヒロくん、頑張ってね!
おばあちゃん、宜しくお願いします! 」
桃子と飛呂彦は、カウンターに頭を付ける勢いで頭を下げた。
「ほっほっほっ!
よぅし、よぅし、ええ子たちやね!」
おばあちゃんは、ニコニコと笑った。
二人も顔をあげると、嬉しそうに顔を見合わせた。
おばあちゃんは、『スッ』と人差し指を立てて、唇の前に持ってくると真剣な表情で二人を見詰めた。
「そぅさね、そしたらひとつ。
とっておきの秘密を教えてあげるわね。」
ニコニコと笑ってたおばあちゃんが、突然真剣な表情をしたので、桃子と飛呂彦は『ごくりっ』と唾を飲み込んで、真面目な表情でおばあちゃんを見た。
「此処…『万屋 竹雀堂』にある雑貨たちはね、不思議な力を持った物ばかりなのよ。
ウロコの眼鏡もそうさね、『見えないものが見える眼鏡』じゃからね。
桃子も飛呂彦くんも、これから不思議でドキドキするようなことに、たっくさん出会うでしょう!
此処は、そんな『不思議』が集まる場所なんよ。」
桃子と飛呂彦は目をキラキラとさせて、おばあちゃんと、それからお店の品々を見回した。
棚に陳列された、様々な魅力溢れる品物。
そのひとつひとつに秘密と不思議が詰まってる。
飛呂彦はそう思うと、背筋がゾクゾクした。
お店の中が、キラキラと輝いて見えた。
『ことん』とカウンターから音がしたので振り向くと、そこには、銀縁の薄い眼鏡が置いてあった。
桃子と飛呂彦は、『パァァァッ!』と花が咲いたように笑うと、嬉しさに飛び上がって喜んだ。
「「 ウロコの眼鏡!? 」」
「ほっほっほっ! そうだよ?
さぁ、飛呂彦くん、掛けてみなさい。」
大人がするような大きな銀縁の眼鏡を、飛呂彦は慎重に、恭しく手に取ると、そっと眼鏡を掛けた。
すると、どうでしょう!
大きかった銀縁の眼鏡が、あっという間に飛呂彦に合う大きさに縮んだのです!
「わぁっ! すごいっ!!」
「大きさが変わったわっ! 不思議っ!!」
「ほっほっほっ! さぁさぁ、ほらほら!
"旅するクジラ"が、また次の場所に行ってしまう前に見ておいで!」
「「 おばあちゃん、ありがとうっ!!
いってきまぁ~っす!! 」」
「あいあい、いってらっしゃい。」
おばあちゃんはニッコリとして二人を送り出すと、二人は手をつないで裏山の公園へと駆けていった。
**********
公園の木の上の、秘密基地型アスレチックに桃子と飛呂彦は立っていた。
『フィーーーォ、キュルーォ、クィーーー!』
西の夕暮れに染まった空を、真っ白なクジラが優雅に泳いでいた。
尾びれを動かす度に、鱗に反射した光がキラキラと虹色に輝いた。
円らで優しい瞳は、緑や青や赤や黄色と七色に瞬いて世界を見下ろしていた。
「…わぁ…、きれい……」
「ねっ! とってもステキでしょう!?」
「…うんっ!」
飛呂彦は、感動していた。
あまりの美しさに涙が滲んだ。
「モモちゃん…。」
「うん、なぁに?」
「教えてくれて、ありがとう。」
桃子は、目をパチパチとまたたくと、照れ臭そうに笑った。
「どういたしまして!」
『フィーーーォ、キュルーォ、クィーーー♪』
踊るように、泳ぎながら旅する歌うクジラたちを見送って、桃子と飛呂彦は、いつまでも西の空を眺めていた。
**********
『ヒロヒコの手記』
~ 旅するクジラと眼鏡について ~
世界を、次元を、時間を、さまざまな所を自由気ままに旅するクジラ。
ぼくが見れた、空を泳ぐクジラたち!
夕日をその身に受けて、光をひるがえして輝く鱗は宝石のようにキラキラと輝いていました。
彼らが落とした希な鱗は、不思議なレンズになりました。
ぼくはどこにでもいる普通のひとですが、見えなかったクジラの姿が、不思議なレンズで作った『ウロコの眼鏡』によって目にすることが出来ました。
クジラの歌も虹色の瞳も、雄大な姿も立派な尾ひれも!
そして、次の世界へ旅立つ後ろ姿も!
友達と同じ、とても美しい世界が見えた喜びを、ぼくは一生わすれません。
眼鏡を掛けたら、いつもより更にステキな世界が見えたのです!
『見えないものが見える眼鏡』
それが、この『ウロコの眼鏡』なのです。
知らなかったことを知ることが出来るのは、いつもワクワクしてしまいますよね!
しかし、ただひとつ注意することが…。
ウロコの眼鏡で絶対に、太陽を見てはいけません。
眩しすぎて、目がチカチカしました!
どこの眼鏡も、きっと太陽だけは直視してはいけないんだと学びました。
見えすぎるのも、考えものなのかな?
手記・飛呂彦
つたない文を、最後まで読んでくださってありがとうございます!
また次回の作品でお会いいたしましょう!