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要の意味  作者: かなりあ
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タイムスリップ?

ハッと身を起こすと、目に入るのは木、草、落ち葉…

そう…森の中。



………は?


どうゆうこと!?


意味が分からない。




飛び上がるように立つと、体に違和感がある。


なに?何がおかしい…


肩にいつもの重みがあり、振り下ろすように外すと、落ちた。

通勤用のリュックだ。すぐさま開けようとして唖然とした。

見るも無惨に破れチャックを開けるまでもなくガバリと開いている。


……あの時私が受けた衝撃は…


ゾッとして肩を震わせ、それでも中をのぞき込んだ。そして、中を探る。手当たり次第に中の物をだす。


「筆箱、無事。手帳、無事。……あー袖が邪魔!!」


袖が邪魔?

………………………は?




これは私の手?

いや、子供の手…慌てて自分の姿を確認するとパーカーがでかい。スキニーのハズのパンツがガバガバ。靴も下着も。

リュックを漁り、鏡を出すと蓋をあけ、

パラリと割れた破片が膝に落ちたが、ひび割れた鏡に映る自分に驚愕した。


『こ、こども…?』


ワケがわからん!

は!?


鏡をぶん投げようとして我に返る。


冷静に、冷静に。

鏡の中の子供をもう一度睨みつけ、見つめること5秒……黒眼、目の下の黒子、興奮気味なせいかほんのり赤い顔色、少し肩より少し長い黒髪、あ、耳もちゃんとあるな。

そう、これは…小さい頃の自分だ。漠然とそう思った。


持ち物を確認し、壊れた物はポリ袋にいれ、パンツのベルトを締め直し、裾をおり、袖をおり、意味をなしていない下着をリュックにいれ、片付け立ち上がる。


飴をひとつ口にいれ、周りを見渡す。

そして、轍のついた道を勘で歩き始めた。


道があるなら人がいる。

携帯が壊れたのには絶望感半端ないが、体は痛みもなく不自由ない。どーにかなる!


いつもの凪いだ心を取り戻した。




黙々と歩く。体が軽い。

何よりこの風景には困惑したが、そんなもの考えてもしかたがない。

広大な草原。

春のようなポカポカと暖かい日差しに、爽やかな風。

ここで昼寝したいぐらいに気持ちがいい。




「少しだけ…」


この誘惑には負けるだろう。


そう言い訳して寝転がった。


これからどーするかな…

日本にこんなとこあるなんて思わなかったな…北海道とか?田んぼもない広い草原なんて…

そういや若返ってるし、タイムスリップってゆうやつ?

「くくっ…ウケる…」

ガキになっちまったし、また孤児院生活やり直しか…ねぇ……眠っ…


「ヤバ…ねむ…す…ぎ………」


眠りについた要のそばには凪いだ風と日差し、草木のざわめきだけ………




ーーーーーーーー

ーーーーー



「ーー!ーーーー!!ー!!!」


騒々しい。揺らすな!起こすな!


「ーーーー!!ーーーー?ーー!!!」


「……あー!!何だよ!」


目の前に、頭キンキン髭男。

馬がいる。


なんだこれ!


重低音で喋る髭男の声は、なにを言っているのかサッパリだ。


首をかしげ、アメリカン的にわからないとジェスチャーすると、目尻が下がった。

可哀想ってか?

自分を指差し、しきりに同じ言葉を言う髭男。

名前か?


「うぃるなーど?」


コクコク頷いている。なるほど、ウィルナード!


「要…私は要」


「ケリャメ?」


「カ・ナ・メ…カナメ。おっけー?」


「…カナメ」


そう!伝わった!…ん?カモンカモンって感じで手招きしている。


ついて来いって?うん、行きます。人探してたんだしね。

え?馬に乗るんですか?

無理無理、のれないです。

問答無用ッスか?

うおっ、やべー乗馬だよ!

あ、後ろ乗るの?良かった。落とすなよ?髭男。

頭なでるな!子供じゃねーんだ。…子供だった。

やべー、爽快!いいよ、スピード出して。

髭男に顔を向けるとニヤリと笑って手綱を振るった。

アハハハハ!チョー楽しい。

髭男いい奴だ。多分。




ーーーーーーー

ーーーーー




楽しいことはあっという間。

町に入り、驚く。周りの金髪茶髪が頭を下げる。ウィルナードに。居心地悪くてたまらん。私は、どんな顔するべきなんだ…

そして敷地に入っていく。

馬から下ろされ、家に入っていった。


「いや、私は?」


手招きしている髭男。

困った顔をしているのは、忘れてたからか?

ちょっと、ぬけてるな。髭男よ。

いや、ウィルナード。


立派なお宅ですな。

座っとけ?了解。


キョロキョロしているとじーさん執事が飲み物をくれた。

頭を下げ、一口飲むとオレンジジュースの味がした。

ニッコリ笑ってまた頭を下げると、お辞儀を返された。


どーしよっかな…

外国だとは…

なんつーか、メルヘンちっくな高級感溢れる服装してたし、家具や老執事…中世とかこんな感じなんだろうな…


あ…!子供!

ドアから顔を覗かせている金髪少年。

目が合うとびっくりして引っ込んだ。

凝視していると、逆のドアからウィルナードとドレス美人が入ってきて、強張った顔の金髪少年も入ってきた。



ウィルナードとドレス美人がむかいにすわり、少年はドレス美人の横に立っている。

相変わらずなにを言っているのかサッパリだが、手を差し出されたので握るとウィルナードはニッコリ笑った。ドレス美人も笑っている。

つられるように笑うと頭を撫でられた。




こうして私、雪村要は、ウィルナード=ユアン=シュベルドの養女となった。


この世界で、カナメが認識された瞬間だった。


ーーーー

ーーーーーー

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