表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
要の意味  作者: かなりあ
15/63

手紙



あっという間にナハルに着いた。

1人、苦痛のナハル脱出劇は何だったのかと、軽くショックを受けた。

ハンター組合所に泊まるかと思いきや、宿にするらしい。



「会いに行くんだろ?」

「…会わない。手紙にする。」

「…何故だ」


「ウィルナードに捕まったら逃げられないだろうし、エヴァに会ったらあいつ、泣きそうだ…シルエラも。自惚れかもしんねーけどな。」

「……」

「ま、手配のことと、無事を知らせりゃ大丈夫だろう。私は見つからないように覗くけどっ!ハハッ」

「…わかった。」

「…会えばいいのによ…ま、俺らは皮売ってくるからな。」

「うん。私が行っちゃ捕まるからよろしく。あ、フード付きの服買って来てくれないか?」

「おう、わかった。適当に見てきてやる。」





リュックに入っている、日本産シリーズ…ボールペンと、茶封筒、手帳を取り出し、手紙をかく。


手配を取り消してもらって……

死んでないということと……

アルとギルは…書いちゃ駄目か。

仲間ができた…ぐらいは言って良いよな。




皆、元気か?




窓の外をふと見ると、見知った顔が見え、思わず隠れる。


シスルだ!


何故こんな所に…

あ、組合所に聞きに行くのか?

すまん、シスル。迷惑かけて…

首から下げた、勝手口の鍵と一緒に通してある指輪を握る。

無くしてないぞ、シスル。

…そうだ、シスルに手紙を渡そう。


書き直し、書き直し!

丁寧にかくと、私か?って疑うかもな。

偉そうにかいてやろっ!


びっくりするだろなー。


「ふふふ…」






翌日買ってきて貰った、カーキ色のフード付きローブをきて、町にでた。

もちろん手紙も持って。


毎日は流石に来ないか…

しばらくウロウロしてみたが、結局渡せず仕舞いで宿まで帰ると、玄関先で調度アルとギルに会った。



「おお〜その服買ったのか?」

「おう!やっぱ俺も欲しくなってな。」


アルは黒い外套で、ギルは黒に近い灰色。


「色違いとか仲良しだな!」

「気色悪ぃ事言うなよ…機能せ・い!機能性がよかったの!…って、ギルも脱ぐな!」

「ハハハハッ!ウケるわ〜!でもアルが黒って意外だな。」

「渋くいこうかと。」

「ふふふ…まあ、良いんじゃない?」


さて入ろう…として、今日探していた人物がギルの向こうに見えた。


サッとギルを壁にして隠れる。

いや、隠れてどーすんだ?

でも、手紙を渡したら、サッとバイバイしたいしな…

こっそりポケットに突っ込むとか…


「…何をしている?」

「……………あ、ごめんごめん。シスル…家の護衛が居たからさ………あ!」


閃いた!ギルは、ゴツいから却下。

まだマシなアルの方がいいかも。


アルの前に行き、外套を掴む。


「ちょっと失礼…」

「な、なんだ?!」

「いや、中に隠れて行こうかと…」

「は?」

「ほら、あの黒服の茶髪分かるか?…あいつとすれ違ってくれ。その時に手紙を落とす。いい?」

「いや、いい?って…こん中に入るのか?」

「うん。」

「…ギルじゃ、」

「ギルはキツそう。…駄目なの?」


あれです。少女モードです。首傾げて切ない顔です。外套掴んだままだから、バッチリなんじゃないかい?


「……わかったよ!やる…やってやる!」

「フッ」


素晴らしい!子供の特権。


「私、前見れないから、手紙落としたら教えて。ギルもおいでよ。行けー!見失うぞっ!」

「あー振り回されてる俺…ぐっ」

「ククッ…わからないもんだな…」

「重い…ぶら下がってやがるコイツ。」

『歩くと足見えるじゃんか!』

「フクククッ…よくこんなこと思いつくな。」

『まだー?』

「まだ追い越してもねーって。」


…………まだか?

…………分厚くて透けないから全くわからん。

…………ムアッとする、ムアッと!

…………腕もキツくなってきたぞ。まだか?



「…今だ」



ーーー探すな!ーーー



『なっ!?カナメ!?…どこだ!』


焦ってる…くっくっくっ。ヤバい面白すぎる!

アル!お前は笑うな。バレるバレる。


『……メ!あいつ、ふざけやがって!!』



「い、いったぞ。くくくくく…めちゃくちゃ怒ってたな!」


「ブハッ!暑かった〜。大成功?イエーイ!」



にやけ顔のアルにハイタッチしてみたが、手を出さなかったので胸を思いっきり叩いてしまった。


「いってぇ!」

「手を合わすように2人で叩くんだよ…駄目だな〜アルは。ギル…イエーイ」


パァンッ


「バッチリ!さー帰ろ帰ろ〜」

「俺の働きで、成功したのによぉ…」







ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー





「…どうしたシスル…」

「はぁ、はぁ…先程カナメ…お嬢様から手紙を…!」

「なっ、なに?!どこで?!話はしたのかっ?」

「…声を聞いた、が正しいです。探すな、と一言。追いかけようとも姿はなく、足元にこれがありました。探しますか?」


縦長の茶封筒に入った、愛娘からの手紙を取り出す。



シスルヘ


手配を取り消せ。

探すなっていっただろ!

それに私は生きてるよ!

大丈夫。

仲間ができた。

何かを得てから戻る。

私の家はそこだけだ。

黙って私の帰りを待っとけ!

家族に元気だと伝えてくれ。

それと、周囲のうるさい奴には娘じゃないと言え。

私の計画の邪魔になる。

正式に養女になれるように頑張ってくるからさ!

また、手紙を書く。


カナメ





「ははっ…お前への手紙だ。ほら………元気らしい。探すのはやめようか…カナメは生存報告してくれるようだ……………良かった…」


気が抜けたように椅子に背を預け、片手で目を隠す主にソッと微笑む。


「はい…良かったらエヴァ様に渡してください。少しは元気になるかと…」

「…そうか?すまんな。早速渡してくる。ありがとな。」






翌日、ウィルナード様は、侯爵家からの書簡を見て「カナメは、もう安心だ」と、呟いた。

侯爵家となにか関係があるのかもしれない。



あれから不定期で手紙が届く。

家族全員に宛てて書いた手紙ならいいんだが、個人で来ると、くだらん争いになる。そんなにカナメの手紙が嬉しいのか?

俺に手紙はいらねぇから、巻き込むな。

睨まれ、嫉妬される身になれ!迷惑だ。と、カナメに言いたい……




ある日、変な折り方をした紙が馬に踏み潰されていて、まさかと思えば案の定カナメから……

部屋から手紙が見つかって大騒ぎになることもある。

忍び込んだのかと思って、悔しく、イラッとした。

忘れかけていたその日、白い鳥がエヴァの部屋に入っていったのをみた。

その瞬間閃いた。

俺は飛んできた方へ走った。

間近に迫った黒髪の走る後ろ姿が手をあげる。

その手は、指を二本突き立てていた。


「ははっ…やられたっ。」


笑って力が抜けちまった。





ーーーピース。イタズラ成功って意味だーーー



次話、時はシスルの回想前に戻ります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ