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要の意味  作者: かなりあ
14/63

歳の弊害

ん、あったかい…


「……はっ!…」

「…んん……」


アル!?……ごめん!無意識とはいえ、膝枕は…

勝手に枕代わりとは、図々しいにも程がある。

まぁ、熟睡出来たよ、ありがとな。

……バレてないよな?

退散退散!





「…見張りありがと。町じゃないってのに熟睡しちゃったよ…」

「別にいい。その分疲れがとれる」

「…ほら…昨日も言ったけど、夜の見張りとか、御者とか、出来ないってヤバいと思うんだ…てか、出来ないのが嫌なんだ。」

「…経験だ。数を積めば出来るようになる。昨日はまだ初日だった。心配せずとも教えてやる」

「ホント?なら、今日から?」

「…ああ。御者やってみろ。…だが急がなくて良い。お前はよくやっている。」

「なっ、何?やけに優しいじゃん…」

「…そうか?…そうだ、お前は飯番だ。頼むぞ」

「うん、わかった!」

「…毎回だぞ?」

「ずっと?毎回?」

「そうだ。」

「マジかよ!責任重大じゃねーか…えーっと、どうしよう?ハンバーガーでいいかな?んー…ギル、野菜持ってないよな?」

「…ない」

「ですよね〜。了解でーす…ホントにどっかに生えてねーのか?…ナハルにはあったのに…」

「野菜を探してたのか?」

「うん、昨日な。肉を包んで食べようとしたんだけど、なかった…ギル、肉焦がさないように見といてくれ!パン取って…あ!顔洗うわ!」

「…ああ。」





朝飯も食べて、準備もOK。

いざ出発!


「…ギル、荷車で寝た方がいいんじゃないか?」


御者の後ろで、腕組んで座ったまま寝ているのだ。


「大丈夫。いつもの事だ。」

「へぇ〜…私は横にならないと眠れない。」

「ハハッ、何処ででも熟睡してそうだぞ。お前」

「繊細なんだよ!」

「クククッ、ないない。あんな寝相で安眠してたやつが。」

「…あんな寝相?」


言うな。バレてない。バレてないはずだ!


「ここ蹴られただろ〜?布もとられたし…」

「あー!!ごめん!もういい。言わないでくれ!……最悪だ……」

「ハハハハッ!よく組合所のあのベッドで落ちなかったな。」

「…落ち掛けたことはある。夢で、穴に落ちるんだ。そこで起きる…」

「分かる!夢じゃねぇが、落ちる感覚!」

「おお!あれはホント、心臓に悪い。こう…ヒュッってする!柵つけて欲しいわ…」

「ハハハハッ!ガキかよ!…ガキだったな。ククッ…てか、お前何歳?」

「あれ?言ってなかったか?自称16歳で、推定14歳。精神28歳だ。」

「……………」

「おーい!聞いてんのか?」

「…………14?」


そんなにびっくりする?どっちかっていうと、28歳の方が本当なんだけど…


「……ん?14だが…」

「…う、嘘だろ?…拾われたのは何歳の時だ?」

「…9歳で、にじゅ『うわぁ!』」

「ま、マジかよ…お前、14で飛び出したってのか?よく…よく、無事だったな…」

「いや、アル?」

「………お前、やっぱシュベルド家に戻るべきなんじゃないか?」

「アル…」

「だから、手配までしてさがしたのか…」

「……アル…」


何故そんなこと言うんだ?

認めてくれたんじゃなかったのか?

この先も一緒に行くんじゃないのか?

たった2つの違いで、その資格はないのか?


「アルっ!!聞いてくれよ!!私は、14だ。だがな…だが、駄目なのか?!たかが2年で大人なのかっ?私は、確かにひとりじゃ生きていけない。でも、お前らに力借りて、出来ることして、それで、それで…認めてくれたんじゃねーのかよ!馬鹿野郎!!」





くっそぉ…私は無力だ…なっさけない…

泣くな…泣くな…泣いたら終わりだ。

ガキじゃねーんだ!







ふわっ





な、な、なんだ?!


は?


黒…い服?……ギル?


抱きしめられてる!?


「っ、ぎる?」


「アル…コイツの歳は関係ない。腕も、頭も…覚悟も俺らと遜色ない。そうだな?」


「そうだ…だが、成人前だ。保護者が監督する義務がある。第一、それを親が求めている。愛するが故に。コイツも離れたくて離れた訳じゃない。思うが故に、だ。」


ギルに頭を撫でられながら聞こえる、アルの真面目な言葉。口調。

アルも、私を思って言っている…



「そうだ。だが、それで男爵家は良くなるのか?確かに気持ちは安心するだろう。だがそれだけだ。コイツが偉業をなし、イベルナ人嫌いの伯爵を見返し、男爵家を認めさせるまで、カナメは後ろめたいままなんだぞ…それが最良か、否か…どっちだ!!」



アルの答えを真剣に聞きたくて、ギルの体を押し、アルを見た。



「………成人まで、保護者監督されるべきだ。急がなくても出来る。その間、学び、策を練り、仕掛ける準備をする。家族と一緒に考えるべきだ。」

「…カナメに決めさせる…俺は、どちらでも受け入れる。考えろ。」

「俺も、自分の意見は言った。お前は、どちらを選んでもかまわない。お前の力は申し分ないし、よく考えて決めたなら文句はない。もし帰るとなっても馬車代は気にするな。成人したら取りに行ってやるからよ…」


「……私はっ……うん…ありがとう。アル…ギル……ちょっと考える……」





荷車に籠もることにした。




アルの意見…

そういう方法があるとは思わなかった。

策を練る…

私はただ突っ走り、から回っていたのか?



ギルの言葉…

私の意見を最大限に尊重してくれている。

全く持ってその通りだ。

帰って、ウィルナードが、私のわからない所で悪意に晒されるのが嫌なのだ。



アルか、ギルか…


帰って、策を練るか…

家族と…

会いたい。

楽しい日々に、

幸せな日々に、戻りたい。


だけど、策は出るのか…?

ウィルナードに知恵があるのか?

ハハッ、馬鹿だけど、馬鹿じゃないよな。

知ってるよ。

私達に見せる馬鹿っぽいとこは、私達を笑わせるため。

知ってるよ。

補佐官とシスルと、領地の為に、見て、考え、模索していることも知ってるよ。

話し合えば、考えつくかもしれない。

では、そのわからない答えがでない間は?


私がシュベルド家にいる……

それでは、その間、家族は耐えるしかない。

それが嫌なのだ。

もういないと嘘をついて、伯爵を納得させて、泥を拭ったとしても、露見すれば一環の終わりだ。


やっぱり答えは帰らない、だ。

それで、シュベルド家は安心だ。

だが、私が戻る為、貴族を認めさせる偉業ってなんだ?

それがハンターで出来るのか?

闘王か?

なれるわけがない。

なれたら、最強の傭兵集団と、ハンターのトップ。

利用価値はある。

が、国の脅威が、国の、一、男爵家についたらどうなる?

戦時中じゃあるまいし、具合が悪くなるのは間違いない。…逆に帰れないだろう。

ま、ありえない話だが。

何かで国に貢献し、男爵家の戸籍を恩賞代わりにもらうって感じか?


そっちの方が望みがある。

いつになるかわからない。

でも、そっちの方がいい。


ウィルナードには、水面下で策を練ってもらうことにしよう。

私は私で、動く!

何で恩賞をせびれるか、考える。

国に感謝されることはなんなのか…見つけるんだ!

幸い、私の仲間は国の貴族。

知っていること…気づくこと…

旅をしていると、そういうことがあるに違いいない。

それに、コイツらとまだ一緒にいたい。





決めた。






私は、アルとギルと、一緒にいる!







御者席に繋がる布をめくり、2人の後ろに座る。

緊迫した空気は、私が緊張しているからか…


「決めたよ。私…ん?」


違う…何か……いる…


周りを見ても、なんの変哲もない山道。

だが、視線…


「狙ってんぞっ。」

「アル、御者は頼んだ。カナメは弓を持て。」

「了解!」



弓を取り構えると、草が不自然に揺れ、複数いることが分かる。


「挟まれてる!来た奴から殺れ。」

「そっちは任せるぞ…」

「うん、任せろ…」




ギルが、いつもは抜かない普通の剣を抜き、私も前に集中する。

振った気配がして、そっちから来たかと思った時、こちらも姿を現した。

近い一匹を反射的に、射る。


頭を打ち抜かれた狼は転がり、視界から消え、次を、また次をと3本射ったら、飛びかかって来た狼を剣で切り裂く。


もう一匹斬ったら、警戒して少し離れた狼…3匹。




「もうすぐ草原に出るぞ!」

「わかった………また増えた。今からが本番だ」


6、7…8…何匹増えようが、やることは同じだ。

飛びかかられる前に矢を放ち、飛びかかられたら、切り、刺し、跳ね返す。

馬を殺られないよう気をつける。


恐怖は感じなかった。

確かにピンチだ。

取りこぼせば私どころかアルも危ない。

アルは手が離せず、右はギルが、左は私が。

数が多い分、今までで一番追い詰められてる。

だけど、自分が失敗するなんて一つも思わない。

ただただ力がみなぎった。


『任せる』


それだけで。




やっぱりこれだ。


ギルはやっぱり上に立つ人間だな。


やる気になる。


自信が出る。





「私、決めたんだけどっ…!」


「あん?」


「帰らないことに決めたー!」


「いや…今言うか?普通…」


「いつ言おうがっ、一緒。…あぁ〜毛皮が勿体ない………回収行く?」


「行くか!馬鹿!」


「いいのか?…それで。」


「うん!あっちはあっちで考えてるはず!私は、次期侯爵とその従者に、ご教授頂くとするよ!」


「カハハッ、ギル〜!利用されるぞー!ハハッ」

「うわ〜人聞き悪っ!知恵出してもらうだけじゃねーか。減るもんじゃ無し!」


「…わかった。利用されるとしよう。」

「利用じゃねーって!…だから、権力使うなよ?私がやるんだからな!手柄は私の物だ!ハハハッ」

「えー?!ハハハハッ…森を抜けるぞ!」



視界がパァッと明るくなり開ける…


「引いたな…」


狼達は走りを緩め、引いていった。森で決着つけたかったようだ。




「だな。毛皮勿体ない…」

「しつけぇな…」

「なんせ私、借金してるからな!」

「ククッ…精々頑張れ」

「はぁ〜い…」





夜には村に入り、宿に泊まった。

今更部屋を分けようとする2人に、私に女感じるのかと呟いたら、拳骨を落とされ、三人部屋をとった。

冗談だったのに…



晩飯の時、何の嫌がらせか、アルが私をガキ扱いして酒を盗ってきた。そりゃあもうムカついて、幼女趣味野郎と叫んでやった。

ざまぁみろ!




朝になり、少し買い出しをして出発。

川で水を浴び、爽快感が半端ない。

夜は野宿で、今度は2人に野菜を食わせてやれたから大満足。

夜の不寝番を少しさせてもらって寝た。

朝、次は侯爵膝枕事件に会った…いや、会わせた?が、知らん。私は知らんぞ…!





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