表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
要の意味  作者: かなりあ
12/63

告白返し



ーー晩はガルドの酒場に集合。あの件の話し合いだ。わかったな?ハーイ解散っーー



極めて軽く言い放ってバラバラに去っていった…

一瞬呆けてしまったが、私もサッサと旅の準備を終わらせなければ。

後は保存食と、武器、防具の手入れ…あと、洗濯だ。

肉用袋はすぐに洗わな気が済まん!

だれか、洗濯機発明しないかねぇ…

ほら…手回し回転とか、ローラー水切りとか、テレビで見たことあんだけど…

でも構造わかんねぇし…

はぁ…バカなこと考えた…





荷物を揃え終わって、後は告白の返事を聞きに、待ち合わせ場所へ…


「くふふ…告白って…私が2人同時にとは、やるなぁ」


冗談を思いつくぐらい、心は落ち着いていた。

だって、別に断られたって、また戻って捕まえればいいと気づいたから。

生きてさえいりゃ大丈夫だ。

ドンとこい!




ガルドの酒場には私が一番乗りだった。席に座る前に…


「ターニャ、ちょっと話が…」

「何の話だ…」

「ガルドさん…も…聞いて欲しい。…俺、一旦帰省するから当分来れなくなる。死んだと思われるのもなんだし、一応報告しとこうと思って!ターニャにもガルドさんにも何かと良くして貰ったしさ。」

「そうなんだ〜。……寂しくなるね…」

「俺いないと寂しいの?」

「あ?」

「はははっ、冗談。ちょいちょいお二人さん、耳かして。わたしは実は…………『女』」

「っえ〜〜〜!?」

「しー!秘密だぞ?」

「……」

「えっと…う、うん…わかった。でも、ホントに?だって……」

「…言いたいことはわかる。でも、ついてない。」


胸がねぇっていいたいんだろ?それとも髪か?

下半身を指差してそういうと…

途端にターニャの顔が真っ赤になり、口をパクパクしている。

純だなぁとほのぼのしてたら頭に石が落ちてきた。


「いってぇ!…拳骨…?」

「お、お父さん…」

「嘘吐いた罰だ。これで許してやらぁ!」

「大丈夫?」

「あはは…マジ痛い…良かった。許してくれて…ターニャに会いに来れなくなっちまうとこだった。」

「…無駄にカッコイイこと言わないでよねっ!…ふふふっ」

「ざんね〜んっ!ふられた〜!!」


大袈裟にリアクションすると、周りからヤジが飛んできた。


『あったりめーだ!』

『アイツ命知らずだな…』

『ターニャちゃんはみんなのもんだ!』


その瞬間カウンターにドンッと包丁が突き刺さった…

それはもう、禍々しい殺気で、客全員が凍りつく程のもの…



「ゴラァ!俺の娘は、俺のもんだ!どいつが言いやがった!!」



………………




…………………………




この静寂をぶち破る天使がいた。


「…お父さん?みんなの冗談だよ。ほらほらお料理お願いしまーす!」

「…ターニャ最強…」

「ん?」

「…む、麦酒をひとつ…」





運良く一波乱の後に入店してきたアルとギル…

まだ動揺の残るざわめきに違和感があるのだろう。

アルが首を傾げている。


「…なんか」

「しっ!後で説明する…俺がやらかした。ハハッ」

「ん?…まあいいけどよ…麦酒2杯頼む!」

『はーいっ!』


乾杯して、くだらない話をしていると、徐々にいつもの騒々しさが戻ってきた。

なので、私が発端の修羅場を説明。

アルは、ビビる真似をしておちゃらけただけだったので、ちょっと悔しい。

是非あの場に居てほしかった。


晩御飯も食べ終わり、ちびちび酒を飲んでいると、遂に前触れとも呼べる沈黙が流れた。

切り出したのはなんと…ギル。


「…俺らも言わねばならないことがある。出るぞ…」


なに?何ですと?!出る?……





ターニャにまた来る、と声をかけ、ギルについていった。

ギルは淡々とどこかに向かっていて、アルはズボンのポケットに手をいれ、ダラダラと隣を歩いている。

静けさが緊急を煽る。

心臓がバクバクしだして逃げたくなる。

しかし…ギル達が話さなければならないこと…?





着いた場所は、門扉の閉められた教会の前だった。

階段に座ったアルが私に座るよう促し、ギルも腰を下ろした。

端から見れば怪しげな光景だな。

ダベる場所が教会の前とはなんたる不謹慎!と怒鳴られそうだ…

信仰は全くないけど。



「…俺らも、カナメの内情を聞いたからには、こちらも話さなければ道理が通らない。だから、お前がこの先どうしようとも、漏らさないと誓って貰いたい…いいか?」




全然意味わかんねぇけど、漏らされたくないことを話してくれるんだな?


「…うん。誓うよ。」

「………俺はこの国の貴族、フレデリック侯爵家の嫡男だ。アルは従者。」

「ちゃくなん?」

「あー…長男、跡継ぎってこと。」

「なる程………で?」

「…そんだけ?」


アルが情けない声を出す。

何で?可笑しい?


「…あ、何でハンター?」

「ハハハハ!ほら、やっぱカナメは、最高だ!貴族?何それ?みたいな!」

「ちょっ、うるさい!近所迷惑だっ。」

「クッ、クヒヒヒッ……ククッ」

「何だよ…真剣な話何だろ?馬鹿にする奴はあっちいってろっ」


足でゲシゲシ蹴って遠ざける。


「………くくっ…」

「お前も!…って、ギルが笑ってる!嘘!奇跡が…」


あーあ。指摘したら引っ込めちゃった…

天地がひっくり返る程の奇跡だったのに…


「…まぁ、事情があってだな。ハンターをしている。」

「ごまかした…アル、ギルがごまかした!」

「く、ハハハハッ!むり!もう無理!笑い死ぬ!俺を、殺してくれ〜!アハハハハ」

「…アホか。お前はもう喋るな。…で、その事情を話してくれんの?」

「…ああ。別に対したことじゃない。実戦で腕を磨くため。それと………」

「それと?」

「………」

「嫁探し!」

「…チッ」

「よめ?ギルに嫁?…またまた…無理難題を…ブッ」


嫁?ギルが恋人探し?こんな無愛想男無理だろ!第一女と接触もねーじゃん。せいぜい店員ぐらいだ。

いや、まあ真面目なコイツのことだから真剣に探してんだよな。

それはそれで…ウケるわ!


「ハハハハッ…んっ…はあ、はあ…笑って…ごめんよ。本当の獲物は嫁なんだな。」

「グハハハハ!やめれ!やめてくれ!」

「…………」


殺気が出ているよ…ギル…


「…あ、アルは付いてきてるだけなのか?コイツも嫁探し?」

「…いや、コイツは恐らく親が決めるだろう。」

「ふーん。ご愁傷様。」

「え?可哀想なの、俺?」

「そうなんじゃないのか?だって、宝石豚とか、香水のドギツイ奴と結婚するんだろ?…いや、ちょっとしかみてねーし、いい子いたかもしんねーな…」

「ほ、ほ、宝石豚…クククッ…」

「…口が悪いぞ…」

「…いーんだ。心ん中で、だけだから。それより……ギルは見つけんのが大変だな。目があってもビビらない子で、話上手で、尚且つその巨体と合う…いねぇ!諦めろ。…いや、ごめん…諦めた時に現れるもんだ。どっかで聞いたし、多分、いづれ見つかるさ。」

「…他人事だな」

「そりゃそうだ。まずはギルが目を付けなきゃ始まんねーからよ。つーか、私も恋とか知らねえし。」

「お前らくっついたらいーんじゃねぇ?」

「ハァッ!?」


何満足気に頷いてんだよ…

あ、そうだ…



「ハハッ、私に惚れたら火傷するぜ?」

「「…………」」

「…黙るなよ…言ってみたかっただけだ。ふん…」


黙られたらハズいだけじゃねーか!


「……帰るか」


うん。帰ろ…



じゃなくて!

何しにきたんだよ!返事だろ?


「ちょい待てい!今後の話し合いはどーなった?」


「………………………」









「……俺らも明日街を出る」



…うそだろ?



「え?なんで?…やっぱ、駄目ってこと…か?」



探し出せるかわからなくなる…

せめて、どこにいくのか…




「付いていく」

「だっ、誰に!?他の奴のとこに入ったのか?」


誰だ!?


…そうなると無理だ。コイツらだけ説得しても無理ってことだ。誰だそいつ!!






「カナメに」

「カナメってーと…は?!」




私?私についてくる?は?!

ってことは…まだ一緒にいる?




「今決めた。いいな、アル?」

「御意に…」

「う、うぜぇ…貴族語…じゃなくて、ホント?待ってるじゃなくて……ついて来る?」


ギルの胸ぐらをひっつかみ、間近でガンつける。

落として、そんで持ち上げといて、嘘でした。とか言ったらぶっ飛ばすぞ?

こちとら切羽詰まってんだ。







「本当だ。」


笑った…優しい微笑み。

月のような、仄かな笑み。

別人みたいだ。

いつもそうなら…

いや、ギャップ萌えだな。

いや、違うだろ。今本当だって言ったよな?


「…本気と書いて、マジ?」


「マジ」

「ィやった〜!!ありがと!マジ、いい奴〜〜〜〜」


やったー!嬉しい!

ついて来てくれる。

抜けなきゃいけねぇと思ってたのに。

また一人で何日も歩く予定だったのに。

寂しく恐々行くことを覚悟していたのに。

なんて心強い!


「……離れろ、阿呆」


ああ、すまん。思わずだきついちまったぜ。

だがな、ポイッと捨てるこたないだろう?



いや、そんな扱いでもいい。

私を受け入れてくれるなら。

仲間でいてくれるなら。




「アル!くぅ〜〜〜!やったぜ!」


「いてぇっ!抱きつくな馬鹿!馬鹿力!」


うるせぇ!わざとだ、ばーか。


「ふふっ」






ーーーうるせぇ!何時だと思ってやがる!ぶっ殺すぞ!!ーーー



「やっべ!逃げよう!退避退避〜!!ハハハハッ」





走りながら思う。


ウィルナード、シルエラ、エヴァ…


私は、仲間を手に入れたぞ!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ