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要の意味  作者: かなりあ
10/63

試験



翌朝、準備満タンで一階の依頼掲示板を見ながら待った。

うん。超はりきってる。


ぞくぞくとハンター達が入ってきて暫く、アルとギルがやってきた。

ガキの私と一緒にいたら、ガキを使う下郎と蔑まれたら不本意だ。だから、テーブルに座って待った。

仲間になれたら堂々としてやるつもりだが、まだ正式に仲間になれるかわからない。

何気なく、離れてついて行こうと、タイミングを計っていたらアルに手招きされた。


馬鹿!コッチは気を使ってやってんのに!


ため息をついて近寄ると、背を向けて組合所の外へでた。


今日の依頼は、暴れ牛二頭。草原に群れでいて、バッファローみたいな黒牛だ。

あと余裕があれば追加も有りらしい。

大物を殺ると息巻いているアルを尻目に、私は緊張でいっぱいだった。

私はアルとギルの采配一つで失格になるのだから。




草原に付き、群れはすぐに見つかった。刺激しないように近づき、アルとギルから荷物を受け取って、岩影に隠れた。



途端に全力疾走の挟み撃ちである。

アルは二剣使い。ギルは大きめの一剣だ。

威嚇し、体当たりしようとする暴れ牛をひらりと避け、首に剣を差し入れたアル。

何を思ったか、暴れ牛の脳天に剣を刺し、宙返りして背中に乗っているギル…


ドスン、ドスンと牛が倒れて唖然とした。

びっくりした。

めちゃくちゃ強いじゃないか!


ギルはもう一頭狙うらしい。

私もやることをやらなければ!



私は無心でやった。

全力でやれば牛は引き摺れた。岩に引っ張り上げて血抜きもしたし、皮剥もうまくできたと思う。

その間、アルは手伝ってくれたし、ギルは警戒していた。

ヤッパリ人数は多い方がいいと実感した。

私も暴れ牛を殺す事は出来なくはない気がした。三人なら。



アルは私にびっくりしていたようだった。

何がかはわからなかったが、力があるだとか、剥ぎ取りが上手いとか、そんなプラスなことだと嬉しい。

問題があればすぐ言うだろうし、そう思いたい。

袋に詰め込んで、革手袋から手を抜き取ると、手とナイフを水ですすいだ。


思ったより早く済んだので、歩きながらどうするのかと聞いたら、スイカが生えてる場所があるんだって。

嬉しいね〜。

夏にはスイカだよ、スイカ。


ターニャにあげたら?と言ったら、アルは大袈裟にキョドった。笑って、緊張がほぐれた。

その場で食べようとするギルに、冷やさなきゃ駄目だと抗議し、大荷物を抱え、走って帰った。


ホクホク顔で少し冷えたスイカにかぶりつき、気になっていたことを聞いてみた。


「なぁ、いつからハンターしてんの?」

「一年程だ。」

「まぁ半年しか旅はしてねぇけどな。」

「ん?何歳?」

「18」

「ええー?25ぐらいと思ってたよ…」

「いやいや、それはねぇだろ…」

「ハハハッ、そう落ち込むなって!」



今日は任務成功と言えるだろう。

荷物持っても走れるぞとアピールしたし、無駄なく牛処理できた。

晩飯ぐらいは奢ってと少しの期待を込めて聞いたら、ギルの無言の頷きをいただいたので、万々歳だ。

晩飯はターニャの所と、約束をして別れた。そして武器屋に寄ったり、作業場で武器道具の手入れをしたり…



ターニャの店の名前はないらしい。オヤジがガルドって名前だから、ガルドの酒場が通称になってるんだってさ。

アルがスイカ渡した時に聞いてみたんだ。

意外に照れまくって話さないもんだから気を使ったよ…

私は仲介人かよ!

まあ、今日の私の駄目出し評価のことは触れなかったので、ホッとして眠りに就いた。







2日目も難無くおわった。くまさんデカすぎだ。って言うのが感想かな。

2人の息の合った連携は、目を見張った。仲間を増やしたらすぐに上級に上がれるだろうに…ギルは残念なやつだな。

まあ、そのおかげで私にチャンスが巡ってきたんだが…。







そして最終日。

またも暴れ牛。

そして、ギルから「殺れ…」……と。

…やってやらー!最終試験は戦闘だ!!


「何匹殺んの?」


あー調子乗った…


「3…無理はするな」


ありゃ?…お気遣いどうも。


「行ってきます!」



手針を出して、呑気に草を食ってる獲物に投げる。狙いは目。

ああ、独りで暴れてる。そいつの周りに居る驚く牛の背に飛び乗り、下りると同時に首を落とす。

次だ。

逃げる牛の足を斬りつけ、動きを鈍らせ、首筋に刺し、切り上げ、致命傷をあたえる。

そして暴れに暴れる目刺し牛。

残虐だなぁ、私。

さよなら。

骨を断つ感触が伝わり、牛から離れた。



三頭転がったこの光景は、ただただ無残だ…


モノクロに見える風景。

荒い息を止め、歯を食いしばりながら牛を引き摺り、処置を施す。

ふと影が差して、頭にポンと手を置かれた。ギルだった。


認められた瞬間だった。

視界の色が戻って、ニッと無理矢理口角をあげて見上げた。

そしたらアルが駆け寄ってきて、言ったんだ。




「これからよろしく、カナメ!」





ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー





お試し期間中、ダメ出しも褒めもしなかったアルは、鬱憤を晴らすかのように質問責めを仕掛けてきた。

答える合間もない攻撃にイラッとして、チョップを食らわせてやった。


「作業しながら答えてやる」

「…どっちがガキだ…」

「ホントその通り…」

「そんなことはいいからさ、何でそんなガリガリの癖に力あるんだって!それとあの身軽さ!猫か?猿か?」

「…手を動かせ。百歩譲って猫は許す。猿は余計だ」

「怒ったのか?…なぁ!ギルも気になってただろ?」

「まあ…」

「さぁ…そんな体質だっただけ。だと思う。兄と一緒に訓練はしてたけど…」

「なら、兄貴もお前みたいな動きすんのか?!スゲー!」

「いや…もうそれでいいよ…手を動かせ!手を!」

「ハイハイ……へぇ〜どっかの山奥で、密かに暮らしてる種族とか…」


なにやら変な妄想してるアホはほっといて、手を動かす。

ギルは言わずとも、辺りに目を光らせながら 処理をしている。

真面目なんだろう。

二人とも悪そうな奴じゃ無い。

いつか私が、欠かせない存在になれたとしたら、女だと言っても許してくれるかな…





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