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放課後乱闘ライヴズ  作者: (=`ω´=)
四日目
59/109

05-05 明暗。

 一時限目と二時限目の間の休み時間に、一年D組の生徒たちは視聴覚室から元の教室へと移動をしなければならなかった。

 その途中、他の生徒たちから白い目で見られたり、「ほら、例の」、「ゲームの」、「一年D組が」などと当然のように囁かれたりする。

 ただこれは、昨日、今日とそれなりの騒動を起こし、特に今朝の騒ぎなどは巻き添えになって少なくはない犠牲者も出しているからであり、決して理由がない蔑視でもないので抗弁もしづらい。

 少なくはない友人たちが病院送りにされ、また、今後もいつ巻き添えになるかわからないというこの状況では、一年D組を忌避する感情が出てくるのも決して故のないことではないのだった。

 現に、一年D組のたいていの生徒たちは、そうして悪評を囁かれている中を、ただ俯いて通りすぎていた。

 委員長の三峰刹那は胸を張って、田所一は露骨に不機嫌そうな顔をして周囲を見渡して、本来の、自分たちの教室へとむかっていく。

 しばらくは、「一年D組に所属している」というだけで、肩身が狭い思いをするしかないようだ。

 

「昨日、渡来からスキルを奪ったんだって?」

 そうした移動の最中に、西城沙名は林道鈴にはなしかけていた。

「うん、そう」

 林道は、素直に頷く。

「いろいろあって、芦辺くんとか睦月さんと組むことになって、その結果、渡来からスキルを貰った」

 基本、単純な林道は物事を深く考えるという習慣がない。

 駆け引きなどをしようともしなかった。

「そうかそうか」

 西城は頷く。

「そいつはよかった」

 西城が鷹揚な態度を取れるのは、彼女たち自称魔法少女の四人は、なんだかんだいってこのクラスの中でも突出した攻撃力を持っているという自負があったからだ。

「わたしら、経験値だけは有り余っているからなあ」

 西城と連んでいる、その自称魔法少女の一人である夢川明日夢も、林道にはなしかけた。

「なんなら、少し持って行くか?

 渡来のスキルっていうのは、そういうこともできるんだろ?」

「え? いいの?」

 林道は、目を丸くする。

 実のところ、渡来治樹のものだったスキル『シーフ』が「他者から経験値を奪う」というのは、状況から導き出された推測にすぎなかったわけだが……夢川のかまかけに林道があっさりと引っかかったことにより、その推測が正しかったことと証明されてしまう。

「いいよ、いいよ」

 夢川は、あっさりと頷いた。

「経験値なんて、これからでもいくらでも稼げるし」

 そういって夢川は、林道の方に手を差し出した。

「スキル『シーフ』を使うときは、相手に触れる必要があるんだっけ?」

 そういう夢川は、レベル十を越えたスキル『シーフ』が「他者からスキルを奪う」ことができることまでは知らない。

 こうして林道に便宜を図っているのは、この小柄で素直な林道のことを最初から「強敵には鳴らない存在」として認識していたからだった。

 この夢川に限らず、小さくてどこか幼い言動する林道のことを、マスコットみたいなものとして扱う生徒はクラスの中にも少なくはない。

「それじゃあ、遠慮なく!」

 そういって、林道は夢川の手を握る。

 昨日の時点で、林道は芦辺から、

「機会があれば、経験値は奪えるだけ奪っておけ。

 ただし、無理をする必要はない」

 といわれている。

「誰かからスキルを奪える機会があったとしても、すぐには奪うな。

 その前に芦辺か睦月に相談をしろ」

 ともいわれている。

 この時点ではまだ、「スキル『シーフ』が他者からスキルを奪うことができる」という情報は、ほとんど誰にも知られていない。

 功を焦るよりも、慎重を期して動く方があとあと有利になる、という芦辺の判断に、睦月も賛同していた。

 だから林道は、スキル『シーフ』を使用して夢川から経験値だけを奪う。

 ごっそりと、「なにか」が林道の体内に移動してくる感触があった。


「……おお、すごい!」

 夢川は、自分のステータス画面を確認して、感嘆の声をあげている。

「本当に、経験値がなくなっているよ!」

 林道も、自分のステータス画面を確認する。

 この一回だけで、林道のスキル『シーフ』のレベルは五十を上回ってしまった。

 そして、ステータス画面の中に、新たに、

 スキル『シーフ』のレベルが50を越えました。

 →新たに、「経験値を強奪する」、「スキルを強奪する」という機能が解放されます。

 という表示がつけ加わる。

 この「強奪する」というのは、必ずしも直接接触をする必要はなく、何らかの方法により相手に攻撃をした際に、スキル『シーフ』の機能が発動するというものであった。

 この攻撃は、他のスキルを使用したものでもいいし、別の道具を使用したものでもいい。

 小石を投げて相手にぶつけるだけでも、「攻撃」として識別されるらしかった。

 この機能が解放されたことによって、スキル『シーフ』の使い勝手はかなり向上したといえる。


 ……これは、はやく芦辺くんに伝えなければ……と、根が素直な林道は、そう思う。

 どのみち、素直すぎる自分の性格と単純な思考能力では、どんな有利なスキルを持ったとしてもすぐに行き詰まるということを、林道は本能的に悟っている。

 昨日、芦辺と組んだはあくまで偶然の成り行きではあったが、芦辺のような参謀を得たことは林道にとっても幸いであり、かなり心強く感じていた。

 要するに、この時点での林道は、このゲームについて考えることを芦辺という存在に丸投げしているのであった。


「……はぁ」

 一方で、俯いてため息をついている者もいた。

 今朝の昇降口での騒動の原因となった、木ノ下紬だった。

 もともと友人らしい友人がいなかった彼女は、あれから誰からもはなしかけられることもなく、従って、誰かに非難をされたわけでもない。

 ただ一人で、「自分のスキルが原因となって、あんな騒動を起こしてしまった」という事実が、彼女の中で反響して、勝手に傷ついて落ち込んでいるのだった。

 この学校に入学してからというもの、流石に誰かに露骨にいじめられるということもなかったのだが、だからといってそれまでに培われた木ノ下の性格があっさりと矯正されて楽観的なものになるということもなく、なにか理由があればこうして沈みこんでしまう。

 誰かしら相談相手がいたりすれば、それなりに発散したり気分転換にもなるのだが、あまり社交的な性格ではない木ノ下は、その相手にも事欠いていた。

 少し離れた場所で、はしゃいだ様子で語り合っている林道鈴を中心とした集団を横目に、木ノ下紬はますます気分を沈ませていく。 


 誰も傷つけるつもりはなかったのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。


 昨日、あれだけ強い決心をしてこのゲームに取り組むことにした木ノ下であったが、その決意も、今ではかなり鈍ってしまっている。

 現在取得しているスキル数からいっても、この木ノ下はクラスの中でもかなり有利な位置にいる。

 本人もそのことを自覚しているのだが、メンタル面の弱さが、その強みを完全に打ち消していた。


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