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ひよこ、三根、バレる

気付けば、大型娯楽施設には多くパトカーが縦列している。その異変に反応した野次馬やマスコミ関係者も多くやってきているが、警察によって立ち入りが制限されて駐車場には入れていないようだ。まぁ、僕は入れているけど。


「ひよこ刑事(デカ)~!」


僕のことをそんな風に呼ぶのはこの世でただ一人しかいない。三根くんだ。こっち側に入ってきているということは、今はロリ刑事(デカ)か。


「よかった。怪我はないみたいだね」

「映像見てたでしょ」

「はらはらした」


三根くんにはあのカメラが受信する映像を警察の人と見てほしいと頼んでおいた。僕はかなりの危険にさらされることに三根くんは止めたけど僕はそれでも行くことにした。また、同じ被害者を出さないためにも。

すると拘束された藍澤さんが僕の横を通った。

その時に僕にかみつくような目つきで僕に言葉を乱雑にぶつける。


「嘘をついたわね」

「何を?」

「誰も話してないっていう奴よ!」

「ああ、あなたはここに来る前は誰も話してないって確認を取ったよね。確かにここに来る前までは誰にも言ってなかったけど、現在進行形で誰かに伝えてないって聞かれてなかったしなぁ~」


ドヤ顔で藍澤さんに伝える。


「最低な男」

「そっちよりはマシだよ」


藍澤さんは同行している警察官に背中を押されて再び歩き出す。これで一件の事件は本当に終息する。


「ひよこ刑事(デカ)

「何?」

「なんで犯人が藍澤さんだって分かってたの?」

「ああ、おっぱいの大きさで」

「ああ」


覗映像で僕らが一番最初に見た犯人の体の一部は胸だった。逆に顔を見ていなかった。最初は写真を頼りにして探していたせいですぐに藍澤さんが犯人だって分からなかった。でも、あのゆさゆさ揺らしてきた胸を見てピンと来たのだ。


「藍澤さん、覗いた時の写真とは全く違うよね」


確かにそうだ。髪も写真では長髪だったがセミロングまで短くなっている。さらにそこにメガネまでされたらさすがに捜査での観察力に関しては素人の僕たちにはすぐには分からない。でも、その胸の大きさは隠せない。


「なんで髪を切って印象を変えたんだろうね?」

「たぶんだけど、人殺した自分が嫌だったんだと思うよ。だから、少しでもその時の自分から遠ざけるために髪を切って印象を変えたんだと思う」

「あんなこと言ってたけど、結局は普通の人なんだ」


そう結局は普通の人だったんだ。少し道を踏み外してしまったただの人。事実、髪を切ってしまったからすぐに分からなかった。僕らの覗に気付いていたわけじゃない。


「でも、これで一件落着だ」

「そうだね」

「これからもひよこくんの覗映像で幼女裸を見放題なわけだ」

「三根くん、今ここでその発言は控えてほしいな」


まぁ、これで殺人現場を映してしまったという罪悪感から解放される訳だ。また、僕のいつもの日常が戻ってくる。


「日夜古刑事!」

「ん?」


僕らの元にやって来たのは例のとにかく見張り番にさせられっぱなしの新人警察官だ。


「お見事でした。自分はあなたを警察の誇りとして尊敬しますよ」

「い、いや~、それほどでも」


尊敬されても僕は警察官じゃないけどね。


「そういえば、さっき病院から連絡があって意識を取り戻したそうです」

「誰が?」

「日夜古刑事を体を張って助けた」

「あの刑事さん!」

「幸いにも命には別条はないようです。あなたの活躍を知らせたら、まだまだ現役なんぞ退けないなって張り切ってました」

「そう」


なんだかうれしいな。誰かの希望になれて。本当にうれしい。


「君が本庁から極秘に特別配備された日夜古刑事というのは」

「は、はい」


僕の元にやって来たのはスーツ姿をしたいかにも刑事という風貌の男の人だ。10歳くらいと上だろうか。でも、髪はぼさぼさで髭も中途半端に生え、前のボタンは一カ所しか止められておらず、ネクタイもゆるく、胸ポケットからタバコがはみ出ているだらしない格好をした人だ。


「紹介します。うちの所轄の刑事の桧山さんです」

「どうも桧山です。活躍を聞いております」


とにかく握手をする。あまり親密に関わりたくないというのが本音だ。なぜなら、僕は刑事じゃないからもし今後どこかでばったり出会ったらどう言い訳をするか全く考えていないのだ。


「いや~、まだ若いのにすごい。うちの若いのも見習ってほしいくらいですよ」

「は、はぁ~」


なかなか馴れ馴れしい刑事だ。このままだと本気で刑事に転職しないといけないような気がする。


「おい。お前も挨拶をしておけ!」


そういうと桧山刑事の背後から出てきたのは僕と同じ年くらいかそれより少し上くらいのこれまた若い好青年のような刑事。スーツは新調したばかりなのかどこか真新しい。桧山刑事とは全く正反対の好印象を持つ刑事だ。でも、まさかだよ・・・・・・。それがまさか知り合い何て思いもしなかった。


「・・・・・・・・・・あれ?ひよこくん?」

「・・・・・・・・・・山下くん?」


シャアハウスの住民のひとり新人刑事の山下くんだ。何というかあれだね・・・・・・すごくタイミング悪い。


「山下。お前本庁に知り合いがいたのか?」

「いや、知り合いも何もこいつは」


やばいこのどうしよう。山下くんがこの後に何を言おうとしているのか容易に予想できる。でも、この場で山下くんを気絶させれば。いやいや、ダメだよ。僕みたいなひよっこが普段から鍛えている警察の山下くんにかなうはずがない。もう逃げる以外の選択肢がない。

三根くんはもう遥か彼方まで逃げてるし!

僕も逃げないと!

でも、もうすでに時遅しだった


「刑事じゃないですよ」


場が沈黙に包み込まれる。桧山刑事も見張り番の新人刑事も近くを通りかかった警察官もみんな固まった。コンクリート漬けにされたように固まった。


「おい、山下。それはどういうことだ?彼は聞いた話によると警視庁未解決事件防止特別捜査係っていう極秘の組織の人員だって聞いてるが」

「それも嘘ですね」


きっぱり山下くんは言い放った。


「こいつは普段は風呂工事の仕事をしています」

「ちょっと!何を本当ことを!」

「本当のこと?」


見張り番の新人くんから無邪気感が消えた。


「日夜古刑事・・・・・・。どういうことですか~?」


桧山刑事ご立腹の様子。


「えっと・・・・・・その・・・・・・・」


桧山刑事だけじゃない。今までただの一般人にいろいろ言われて命令されてきているいたことに皆若干・・・・・・じゃないね、かなり腹を立てている。


「僕は・・・・・・この辺で失礼します!」

「確保!」


桧山刑事がそう叫ぶと一斉に警官が逃げる僕に飛び掛かる。

こうして僕の中で起きていた人生最大の事件湯煙『覗』殺人事件が完全に終息したのだった。

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