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偽刑事、ひよこ、ロリ

「・・・・・・似合わない」

「ほっといてよ」


本当に就職活動をしていた学生以来スーツを着た。このシャアハウスに来てからは初めてみんなの前にこのスーツ姿をさらすことになるだろう。その第一声が似合わないときた。そうだとも背が低くて細いから子供が背伸びしてスーツを着たようにしか見えないでしょうね。

第一声に似合わないと言った榎宮さんがさらに僕のガラスのハートを砕くような発言をする。


「七五三みたい」

「それはひどいよ!さすがに僕はそこまで小さくない!」


半分くらい涙目になって出かける。


「どこに行くんですか?お仕事じゃないですよね?」

「うん、ちょっと別の用事」


そう適当に言葉を濁して共同のリビングから逃げるように出る。そういえば、三根くんの姿を朝から見ていない。今日の捜査に当たって必要な物を用意するからスーツだけは自分で用意して待っててと言われたんだけど、まだ部屋から出てきている様子はない。

ついでだからこのシャアハウスについて説明しよう。このシャアハウスの構造は本当に普通の家なのだ。大きな違いとしては大きな部屋がリビングくらいしかないのだ。後は細かく部屋が存在する。2階女性専用で1階が僕ら男性陣のそれぞれ個室となっている。住んでいる男性は僕に三根くん、藤見さん、そして、もうひとり山下くん。山下くんは新人の刑事さんらしく今回の事件も捜査しているかもしれない。遭遇しないようにしなければ。

女性陣は現役女子高生の榎宮さん、女子大生の八坂さん、会社に入社したての新人OLの喜海嶋さんの3人住んでいる。

みんないろいろと事情を抱えてこのシェアハウスに身を寄り添合わせて暮らしている。毎日楽しく暮らしている。

僕の覗映像がばれなければの話だけど・・・・・・。


「お待たせ、ひよこくん。あれ?どうしてそんなに表情が暗いの?」

「気にしないで」


ちなみに三根くんもスーツ姿だ。彼のスーツ姿は見慣れている。三根くんは絶賛就職活動中なのだ。大学は卒業したのだがなかなか職が決まらず苦戦しているのだ。僕みたいにすんなり決まらないのには理由があるのだが今はそれについては触れないでおこう。


「さぁ、行くよ」

「どこに?」

「まぁ、ついてきなさい」


そう言われて三根くんについて行って到着した先は事件現場の娯楽施設だ。


「なんでここに来たの?」

「なんでって容疑者の足取りを掴むにはまずは現場を見ておかないと」

「でも、どうやって入るの?事件以来現場には関係者以外立ち入り禁止だよ」

「分かってないな、ひよこくんは」

「何が?」


不敵な笑顔を見せながら三根くんは語る。三根くんはこういう厄介ごとは本当に好きだな。


「現場はすでにひよこくんの覗映像で確認している。実際のところ浴場では犯人を特定する物は見つからない」


髪の毛とかたくさんあったらしいけど、多くの人が使う浴場だ。犯人の髪の毛かもしれない者を見つけたとしてもそれのどの髪の毛が犯人の物なのか分かるはずもない。


「警察は犯人を特定することに躍起になってるけど、ひよこくんは違う。ひよこくんはすでに犯人が分かっている」

「まぁ、顔もしっかり見てるしね」


僕は三根くんの指示に合った犯人の写真を取り出す。写真と言っても覗映像を最大まで拡大しただけのものだ。背景は消してそこがここの露天風呂で撮られた物ではないとパッと見では分からないようにしてある。


「その写真さえあれば、大丈夫だ!」

「でもさ、どうやって聞き込みをするの?僕たちは警察じゃないよ」

「まったくひよこくんは何も分かってない」

「いや、分かりたくもないよ」


そもそも、言い出したのは三根くんでノリノリなのも三根くんだ。


「なんのためにこんな暑苦しいスーツ姿で歩いていると思っているんだい。ひよこ刑事(デカ)

「ひよこ刑事(デカ)って・・・・・・」


なるほどなんで三根くんがスーツ姿で来るように指示したのか分かったぞ。


「まさか刑事に扮するなんてよくこんなことを使用なんて思ったね、三根くん」

「三根くんじゃない。ロリ刑事(デカ)と呼んでくれ」


ああ、めんどくさい。


「でもさ、いくら刑事みたいな格好しているからと言ってそれを証明するものがないと聞き込みなんてできないよ、み・・・じゃなくてロリ刑事(デカ)

「それに関して心配ご無用だよ、ひよこ刑事(デカ)


すると三根くんは胸ポケットから二つの手のひらサイズの黒い革製の手帳を取り出した。


「何それ?」

「見て驚け!」


その取り出した手帳は縦に開いてその中には警視庁の紋章と僕の写真が入っていた。それどこからどう見ても。


「警察手帳だね」

「その通り。まぁ、レプリカだけど」


これを使えば確かに警察に扮して事情を聴くことが出来る。


「ちなみにこのスーツ写真はどこから入手した物なの?」


僕が就職活動に使っていたものと同じだ。


「勝手に使わせてもらったよ。すべてはひよこくんのためだよ」

「楽しんでるよね?」


それについては答えなかった。手際よく僕に専用の偽警察手帳を渡してくる。渋々自分の胸ポケットにしまう。こんな風に毎日のように遊んでいるからいつまでたっても仕事を見つけることできずにプー太郎をやっているんだよ。


「さぁ、行こうか」

「ちょっと待って」

「何?まだ何かあるの?」

「素人ならこのレプリカで騙せるかもしれないけど、本物警官や刑事は騙せないと思うんだけど」

「・・・・・・大丈夫」

「その謎の沈黙は僕を不安にしかさせないよ」


それでも三根くんはずかずかと進んでいく。一体どこにそんな自信があるのだろう。とりあえず、三根くんの後をついて行くと最初の難関が訪れた。

娯楽施設には黄色いテープが敷かれていて関係者以外は進入できないようになっている。さらにそれを見張る警察官もいる。腰には拳銃と警棒。胸には明らかに何十キロもありそうな防弾チョッキを身にまとい手にはその警察官の身長と同じくらいの木の棒が握られている。

僕は三根くんを捕まえて物陰に隠れる。


「やばいって。いきなり本物の警官だよ」

「大丈夫。こういう雑務はきっとまだ警察官になって日の浅い奴がやるもんだよ」

「その根拠は?」

「ない」


三根くんを信じた僕がバカだった。

でも、確かにあの警察官は見た感じは僕らと同じ年くらい若いことは確かだ。僕が未だにひよっこであるようにあの警察官も同じひよっこのオーラを感じる。同類の匂いがする。


「お疲れ様」


行っちゃったよ。僕も慌てて後を追う。


「お疲れ様です」

若い警察官は礼儀正しく敬礼をする。その話し方には子供みたいな無邪気感を感じる。なんか本当に行けちゃいそうだ。

三根くんが警察手帳を見せるとそれに合わせるように僕も手帳を開いて見せる。それをチラッと確認すると通してくれた。大丈夫か?日本警察。


「刑事殿。まだ、捜査を再開する時間には早いと思われるのですが?」

「個人的に確認したいことがある。君は自分の職務に就きたまえ」

「はい」


本当に大丈夫か?日本警察。

目の前にいるのは刑事じゃなくてただの刑事の格好をしたニートだよ。

溜息が出る。こんなことじゃあ犯人なんか捕まえることなんて不可能なんじゃないのか?


「ひよこ刑事(デカ)。遅いぞ。遅れるな」

「何か腹立つ」

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