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騎士とパナッシェゼリー ☆

 マイナー……かも?

「やぁ、待たせたかな?」


 私は目の前にいる彼女ら──たぶん彼女であってるはずだ──に微笑みかける。最後に会ったのはほんの少し前だというのに、ずいぶんと綺麗になっているように思えた。


 ぱっちりとした目は魅力的で、今日も元気が良い。私のことなど気にすることなく悠然としているさまは、ある種の凛々しささえ感じさせた。


 やはり、美しい。


「ねえ、シャリィちゃん。あの騎士様は、とうとう仕事のしすぎで頭がおかしくなっちゃったのかな? おねえさん、見ちゃいけないものを見ているのかもしれない」


「まさか、そんな。あれで騎士様、真面目なんですよ?」


 私は、うっとりと彼女たちを見つめる。恥ずかしくなったのか、彼女たちはひらひらと動きながら物陰へと隠れた。そんな姿も、たまらなく愛おしい。


「ここに入って来るなりこれですもんね。僕もなんか不完全燃焼気味と言うか、決め台詞を言えなくてすっきりしないというか……」


「今言えばいいんじゃない? おねえさん、別にそういうの気にしないよ?」


「ようこそ、《スウィートドリームファクトリー》へ……ううん、やっぱりなんかしっくりこないなぁ」


「いちばんしっくりこないやつがそこにいるけどね」


 あの夏祭から早三日。まだ三日しか経っていないというのに、私はこらえきれずにここへと来てしまった。


 いつも通りの店内。暖か──と言うには少々きつ過ぎる日差しが差し込んでいるが、不思議と暑くはなく、どことなく涼しい。うっとりとするお菓子の甘い香りに交じって健やかな花の香りが漂っており、なんとも安心できる空間だ。


 さて、そんな私の隣の席には緑色の相棒を連れた獣使い──ミスティがいる。そして、私と同じ席──私の前に座っているのは、今日も見慣れたメイド服を着こんだシャリィ。珍しいものを見るかのように、彼女たちを見ていた。


「えーと、何て名前でしたっけ?」


「尾のとがっている方がエイミー、尾が丸まっている方がヘレンだ」


 彼女たちは、私が祭りで入手した金魚だ。異国の魚の飼育法など私が知っているはずもなく、そもそも面倒を見る時間もない故、無残に死なせるよりかはと、ヤギョウさん、マスター、そしてシャリィに面倒を見てもらえるように頼みこんだのである。


 金魚鉢なる綺麗な透明の水槽に入れられた彼女らは、その赤く優雅な尾をひらひらと振って、のんびりと泳いでいた。


「おねえさん、魚に名前を付ける人を初めて見たよ」


「愛着がわいていいんじゃないでしょうか?」


「そうかもしれないけどさあ……。セイン? あんまり情が移ると、いざってときに食べられなくなるよ?」


「これは食べないぞ!」


 どうやらミスティも勘違いしているらしい。そりゃあ、私だって最初は食用の魚だと思ったけれど、今でははっきりと違うと断言することができる。


 見よ、この美しい姿を。こいつはまさしく、観賞用の魚だ。


 ……水槽を大きくすればするほどデカくなると聞いたとき、ちょっと迷ったのは内緒だ。


「ちょっとのエサですっごく大きくなるんだってね。おねえさんもラズのごはん用に飼おうかなあ? ねえセイン、もしそいつらが卵を産んだら、ちょっとおねえさんにもわけてよ」


──オン!


 なんという物騒なことを言うのだろうか、この獣使いは。


 おまけにラズ、なんでお前はそんなにも目をキラキラさせてこちらを見てきているのだ? なんで媚を売るかのように私の足に擦りついてきているんだ?


「ダメだダメだ。こればっかりは譲れない。なんていったって、私とユキさんの思い出の結晶なのだからな!」


 あの日のことを思い出すと、今も心が震える。うまれてこの方、あれほど素晴らしい気分を味わったことはない。恋の素晴らしさを説く吟遊詩人の気持ちを、あの時初めて理解した。


 ああ、できることなら、もっと若い……マスターくらいの年ごろの時に、この気持ちを知っておきたかった。そうすれば、また違った未来もあったかもしれないのに。


「チッ……こいつも色に浮かれてやがる。ホント、おねえさんイライラしちゃうよ。なに? おねえさんに対するあてつけなの?」


 おっと、自然に笑ってしまっていたか。こいつは不覚。


 騎士たる者、いつだって己の感情を制御しなくてはならないのだから。


「それでそれで、いったいどこまで進んだんです?」


「ふむ……答えるのは吝かじゃないが、シャリィにはいささか早すぎるかもしれないな」


「そんなところまで!? ぜ、ぜひ教えてください!」


 やはり幼くとも女性なのだろう。シャリィの食いつきは思った以上だ。これは、人生の先輩としていろいろ教えねばなるまい。


「いいかね……よぉく聞くといい……!」


「わくわく!」


「けっ」


「なんと──!」


「なんと!?」






「──手を、つないでしまったのだ」







 喫茶店内が沈黙に包まれる。どうやら、彼女たちはあまりのことに言葉が出ないらしい。


「……それだけ、ですか?」


 うん?


「あ、あんなにもったいぶって、それだけなんですか!?」


「それだけって……手をつないだんだぞ? これはもう、存分にイチャイチャしているじゃないか」


「……こいつ、仕事だけしかしてこなかったんだっけ」


──アオン!


 呆れたようにため息をつくミスティ。ポカンとしているシャリィちゃん。さらには、ラズにまで尾っぽでペシペシと叩かれてしまった。


 これはいったい、どういうことだ?


「手をつなぐくらい、普通ですよ」


「正直、今の発言にはおねえさんもドン引きだな。こう、ぎゅって抱き締めたりとか、そういうのはなかったの?」


「だ、抱きしめ──!?」


 そんなの、結婚目前までできるはずが無かろう。まずは最初のデートで手を繋ぎ、そこからゆっくりステップアップしていくものじゃないのか?


「ま、マスター? マスターはわかってくれるよな?」


「あ、あはは……おっと、速くご注文の品を持ってこないと!」


 マスター、逃げた。頼りになると思っていたのに、私を見捨てて逃げやがった。


「……私のカンですけど、マスターってばアミルさんとけっこうイチャイチャしてたみたいなんですよねぇ。お祭りの後、明らかに機嫌が良かったですし」


「あーあ。ホントもう、見せつけてくれちゃってさあ……。へこんだ自分がバカらしくなるよ」


「……その割には、けっこう元気ですよね。あたし、今日はちょっと本気でもこもこのおねーさんを元気づけるつもりでいたんですけど」


「おや、お気遣いありがとうね。でも大丈夫。おねえさん、新しい獲物を見つけたから♪」


「まあ! その話詳しく!」


 私をすっかり無視して、女二人はぺちゃくちゃとおしゃべりに興じる。所々で、私に対するさりげない罵倒を吐いているのが耳に聞こえた。


 へたれだとか、お子様だとか、仕事しかできないダメ人間だとか。


「……そんなこと、ないよな?」


 優雅に泳ぐヘレンとエイミーに問いかける。


 彼女らは、優雅に尾っぽを振りながら、物陰へと隠れてしまった。










「おまたせしました。《パナッシェゼリー》です」


 そんなこんなで待つことしばらく。ようやくマスターが本日のお菓子──注文した覚えは一切ないが、ともかくこれから私たちに幸せを提供してくれるであろうそれを持ってきてくれた。


「ほお、これは……!」


「うん、涼しげでいい感じだね」


 ”ぜりー”だ。こいつは”ぜりー”だ。私の大好物である”ぜりー”だ。


 ミスティの言う通り、透き通った色合いをしたなんとも涼し気な”ぜりー”である。見た目こそはいつもと同じく、透明なコップに注がれたジュースのようにシンプルなものだが、そこにはある種の上品さが感じられた。


 色合い的には……ふむ、金色のそれに近い。黄金に輝く小麦を連想させるような、そんな色だ。上品さを感じたのも、この豪華だけれど静かなる佇まいのためだろう。エレガントでも言うのだろうか、本当の意味での貴族の様な風格がある。


 そこから仄かに感じる、甘い香り。これは果物のものだろう。上手く言葉にできないけれど、なんとなく大人っぽいような?


──オン……?


「だめだめ。まずは私が食べてから、だ」


「もこもこのおねーさん、ラズちゃんの躾は徹底しますよね」


「そりゃあ、獣使いだからね」


 ともあれ、私はこのお菓子に相応しい、銀のスプーンを手に取る。そして、そうっとその表面を掬い取った。


 やはり、弾力がありながらも柔らかい手応え。”ぜりー”特有のこの感じが、私はたまらなく好きだ。


「それではさっそく──」


 ぱくりといってやった。





 上品な甘さ。


 ふわっと鼻に抜ける香り。


 ぷるんぷるんに舌触り。




「──うむ、おいしい」


「それはよかった」


 夏の暑さをも吹き飛ばす幸せ。


 これこそが、私の求めてやまないものなのだ。





 今回のお菓子は、いつもほどの目新しさはない。落ち着いた感じでこそあるものの、見た目は最初に食べた”こんぽーとぜりー”とさしてかわらないし、”もざいくぜりー”のそれと比べるといくらか華やかさに欠ける──ちょっと矛盾するが、新しいおもちゃを見つけた子供の様な気分にはならない。


 しいて言うならば、名前がほんのちょっと違うだけの、味のインパクトもそこまでない”ぜりー”なんだろう、と私はさっきまで思っていた。


 そう、思っていた、だ。


「こいつは……!」


 鼻に抜けていくすっきりとした香り。これは間違いなく、リンゴの香りだろう。あの特徴的な甘酸っぱさを、この私が間違えるはずがない。ほんのわずかに感じる酸味は、レモンのものだろうか? こうして一度感じると、けっこうしっかりとレモンの風味もあることがわかる。


 しかし、それだけじゃあない。リンゴの香りに交じって仄かに香る、こいつは──!


「マスター、こいつ、酒が入っているのかね!?」


「ええ。ほんのすこしだけ──それも、途中で火を通して飛ばしましたから、香りづけ程度ですけどね」


 この”ぜりー”からは、確かに酒の、アルコールの香りを感じ取ることができた。それも、冒険者たちが宿で飲んでいるような安酒の香りじゃない。もっとこう、大人っぽく決めたいときに飲むような酒の香りだ。


 そんな素晴らしい香りがリンゴの香りと混じりあい、気分をすごくうっとりとしたものに変えてくれる。アルコール特有のほんの少しの苦味が、リンゴの甘酸っぱさを引き立て、その黄金の塊をより素晴らしいものに変えていた。


「いいね、こういうの。この大人っぽい感じ、おねえさん大好き」


 ミスティがぺろりと唇を舐めながら言う。


 実際、私もこれでようやく納得がついた。大人っぽくて上品なのにどことなく華やかなお菓子だと思ったら、なるほど、酒が使われているのだ。普通のお菓子にはない貫禄が出ていたというのもうなずける。


 それでなお、このつるん、ぷるんとした食感は健在だというから侮れない。掬い取ったその黄金の塊は、銀の匙の上できらめき、口の中でくにゅりと形を変え、身悶えしながら腹の底へと落ちていく。


 冷たく香しいそれが喉を通り越していくときの快感と言ったら! これを体験できただけでも、今日ここに来たかいがあったというものだろう。


「つるんって食べられて、大人っぽい気分にもなれて……。なんだろ、なんとなくだけど、夏の夕方ごろにテラスで食べたくなるようなお菓子だね」


 それにしても、この”ぱなっしぇぜりー”はズルいと思う。


 大人っぽい香りに、子供っぽい果物の甘さ。そして、大人も子供も楽しめる”ぜりー”の食感。


 こんなのを持ち出されてしまっては、とてもかなわないではないか。


「マスター、うちにこれの材料なんてありましたっけ? あたし、これお手伝いした覚えないんですけど」


 シャリィがスプーンを口にくわえながらマスターに話しかけた。どうやら彼女も、一息には食べずにちびちびとそれを楽しむつもりらしい。


「リンゴはりんごあめに使ったやつの余りだよ。あと、お酒は……」


 と、ここでマスターは言葉を止めた。そして、挑発するように私たちを見つめてきた。


「セインさん。ミスティさん。これに使われているお酒、なんだかわかりますか?」


 ふむ。そう来たか。


 しかし、侮ってもらっては困る。こちとら、仕事以外での楽しみなど今まで酒くらいしかなかったのだ。一般市民が手を出せる程度の酒ならば、付き合いの関係もあって一通り飲んでいると自負している。


「うーん、なんだろ……。おねえさん、お酒飲むと味まで覚えてられないことが多いからな……」


「記憶はあるんですか? あたし、おねーさんは酔っぱらうとものすごいって聞いたんですけど」


「そりゃ、もちろん。あんなにも楽しい気持ち、忘れられるはずがないよ」


 今度はゆっくり、さっき以上に慎重にそいつを掬い取る。


 切り取った断面に何条もの光が反射して、キラキラと輝いている。私の指先の振動が伝わるたびに、それらは星のように瞬いた。透明な黄金はその先にあるシャリィの顔をも写しており、私から見ると宝石の中にシャリィが閉じ込められたかのようにも見える。


 舌先に感じる冷たい感触。果実と酒の甘さに仄かに交じる、ほんのちょっとのほろ苦さ。


 それはまるで私の舌に体をこすりつけるかのように広がっていき、あっという間に口いっぱいを幸せにしてくれた。さながら蠱惑的な毒を吐きながら心に忍び込んでくる夢魔のようで、もし無限にこれを食べられるのだとしたら、自分でも制御できなくなるほど夢中になってしまうことは疑いようがない。


 なんと表現すればいいんだろうな、この甘さは。子供のように甘いのに、どこか大人っぽい。リンゴの甘さとレモンの風味、そして酒の三つが織りなすことで初めて作れる代物だろう。


 そして、次の瞬間。ふわっと広がる、リンゴと酒の香り。


「ふむぅ……」


「じいさんが言うには、こっちにもあるお酒みたいですけど」


 酒の香りはリンゴの香りの裏に隠れている。私たちはすぐに気づけたが、酒のそれを知らないものがこれを食べても、軽い違和感を覚えるくらいだろう。それこそ、リンゴの森の中でたった一つだけ交じった果実を見るようなものだ。


 そう、それほどまでにこれはサポートに徹している。決して自らを主張せず、リンゴの甘みを引き出し、そこにさらっと儚く自分の存在を匂わせるような、そんな感じだ。


 よくわからなかったので、もう一口食べてみる。


「……」


 のど越しがいい。この独特の食感と、ほとんど感じられない歯ごたえが最高だ。そしてやっぱり、飲み込む時に鼻に抜ける香りが素晴らしい。ずっとずっと食べ続けていたくなるような、もどかしくななるような、何とも言えない心持ちになる。


 すっきりしているというのに、この誘ってくる感じ。シンプルが故に、魅力的。


 食器なんて使わずに、そのまま口をつけて貪りたくなるような気持ち。


「……」


 もう一口。


 やはり、そうだ。私にはこの、独特のほのかな香ばしさと、すっきりした苦味に覚えがある。


「こいつはエール……いや、ラガービールか」


「えーっと、僕、エールとかラガーとかはちょっと専門外なのでわからないんですけど、ビールで正解です。さすがですね」


 ほぅら、やっぱりそうだ。この風味はビールに違いないと思っていたんだ。


 言われてみればなるほど、一口食べるとそこには確かにビールの面影を感じ取ることができる。特別に飲みやすくした──女性でもがぶがぶ飲めるようなビールをぷるぷるに固めれば、きっとこんな風になるのだろう。


 ……というか、きっとこの”ぱなっしぇぜりー”はそうやってつくられたものに違いない。


「これはですね、カクテルの一種であるパナシェ──ビールとジュースを混ぜたものをゼリーにしたものなんですよ。より正確にいうならば、ジュースを使ったゼリーを作る工程でビールを混ぜるってやつなんですけど。リンゴジュースとレモンを使うことが多いみたいですね」


 マスターがうんちくを語ってくれる。なるほど、私が飲みやすさを感じたのはジュースと割ったせいだろう。”ぱなしぇ”なる飲み物は初めて聞くが、それくらいなら自分で用意するのも難しくはない。


「ジュースはなんでもいいみたいですけどね。あと、うちの場合はお酒の風味は本当に薄くして、甘めの味付けにしています。一応僕たち、まだお酒を飲んでいい年齢じゃないので」


「へぇ……。つまり、本気を出せばまた違った感じの”ぱなっしぇぜりー”になるってことだよね? おねえさん、そっちのほうにも興味あるかも」


「その場合だと、もっとはっきりとお酒の風味を感じられますね。ビールのほろ苦さも結構しっかり効いてきますから、まさしく大人のお菓子になりますよ」


 マスター曰く、これはシャリィのおやつを兼ねているために、あえてこのように甘さをメインとした子供っぽい仕上がりにしたらしい。


「ま、どのみち僕は苦いの嫌いですから、頼まれない限り大人ヴァージョンのは作らないんですけどね!」


「それはそうとマスター、結局ビールなんてどうしたんです? いくらなんでもこれは調理部のおねーちゃん達でも用意できないでしょう?」


「なんか、じいさんが祭に参加した地元の商店の人からもらったんだって。最後の打ち上げの様な寄合のようなアレで。どうも、そっちの関係者と思われていたみたい。で、断るのも気が引けるし、直接飲まないにしてもいろいろ使えるからって」


 ……そっちの関係者とは、どういう意味だろう? ヤギョウさんは学校の関係者だということは明確だったと思うのだが。それに、酒を貰ったのならまずは一杯くらい飲むのが礼儀ではないのだろうか?


「なんだ、爺様のことだし、てっきり自分で作ったのかと思ったよ」


 あの老人ならそれくらいのことはやりかねない。しかし次の瞬間、マスターは思いもよらない衝撃の一言を私たちに言い放った。


「……さすがにそれはないですよ。じいさんだって、まだ飲んじゃいけない年齢のはずですし。僕と一つ違いですよ、一応」


「「!?」」








 甘い香りと、穏やかな空気が満ちる店内。のんびりと会話を楽しみながら、私たちは”ぱなっしぇぜりー”を食べおえた。ほんの少しの寂しさがあるものの、この寂しさこそが先ほどまでの幸せを引き立てているのだと思うと、それさえ楽しくなってくる。


──アオン……


 緑の相棒は、どうやら一口食べただけで酔っぱらってしまったらしい。今はゆっくりと床に伏せ、気持ちよさそうな寝顔を浮かべている。


 ちら、と視界の端で美しい魚がひらひらと舞っていた。どうやら彼女らも、この素晴らしい宝物に興味があるのかもしれない。


 心の底から安心できる空間。暑さなんて吹き飛ばすかのような、すっきりした気持ち。私の口からほんのわずかにリンゴと酒の香りが漏れて、ある種特有の満足感をもたらしてくれた。


「ああ、今日もよかった──今度は、酒が効いているものを食べたいものだ」


 それはさながら、”ぱなっしぇぜりー”に使われているビールのように、私たちの心に穏やかな余韻を与えてくれた。


20160805 後書きに写真挿入。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 実物はもっときれいなんですけれども。もっといいカメラを使って光の当たり方を工夫すればあるいは。写真を撮る才能が欲しいものです。もちろん、こちらは素人が手作りしたものなので、あくまで参考ということにしてください。


 エレガントでシックなゼリーです。豪華なんだけどシンプルで落ち着いている、うまく言葉で表すのが難しいやつですな。


 マスターの言っていた通り、カクテルのパナシェをゼリーにしたものになっています。ただ、実際のパナシェをゼラチンで固めるのではなく、作る過程でビールを混ぜるってだけですので、厳密にいうのであれば『パナシェと同じ材料を使ったパナシェと同じような味がするゼリー』のほうが正しい……かも?


 パナシェの方も、私の知っている限りでは『ビールとジュースを半々で混ぜ合わせたカクテル』なんですが、『ビールと炭酸飲料を混ぜ合わせたもの』、『ビールとレモン系の炭酸飲料を混ぜ合わせたもの』……など、調べるとイマイチ統一されていない感じでした。誰か詳しい人教えてください。


 なお、どのパターンであっても透明でないといけないことは確かなようです。そのためか、透明なのがパナッシェゼリーのジャスティスらしく、透明でないとパナッシェゼリーとは言えないとか?


 どこかで詳しい記述を見た気がするのですが、どこで見たのか思い出せない……。調べても全然情報が出てきませんし。やっぱり古いお菓子なんでしょうかね。


 一番の謎は、『パナッシェ』ゼリーであることでしょうか。なんで『パナシェ』ゼリーじゃないんだろう……。


 話は変わりますけど、小学生の時、学校から栄養食品(?)として乳酸菌飲料みたいな味がする錠剤のような形のお菓子を貰いませんでした? デビルチ○ドレンの絵が描かれた封筒(?)に入っていた記憶があるのですが、調べても調べてもそれらしいものが見つからず……。肝油ドロップでもパパゼリーでもないやつです。誰か知っててたら教えてください。

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