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意地悪な君に  作者: にゃんこ
さくらの季節
6/7

さくらの季節5


男はゆっくりと降り返って私を見る。

その鋭い目に、私は目を逸らせなくなってしまう。


「オマエ・・・」


ビクっと肩を震わせる私。


「変な想像してんじゃねえよ。誰が襲うか、馬鹿」


な・・・

な・・・

なんのなコイツーーー!!


確かに!確かに自意識過剰かもしれないけど、でもそんな言い方!

ちょっと格好いいからって!!


男はポケットからカギを取り出し、扉を開けた。


「入れよ」


中は綺麗に片付いていて、机の上には書類が沢山あった。

何かの部室かなにかかな?


「失礼しまーす・・・」


私の後ろに続き男も部屋に入ると扉を閉めた。


密室になってしまった事に少し警戒したけど、男は何も気にしていないようにドカッと椅子に座る。

心配してしまった自分に少し恥ずかしさを感じながら、所在なく部屋の中に立っていると、男が部屋の奥を指差した。


「あそこ、ロッカーの中に制服が入ってるから。サイズ合うの適当に探して着て。」


それから男は自分のらしい鞄からタオルを取り出し、私に渡してくれた。

私は黙ってそれを受け取ると、カーテンで仕切られた部屋の隅で着替えた。


何か色々ナゾだ。

何でこの部屋には制服があるんだ?

ってか、この部屋なんだ?


とりあえず、ここに連れてきたのは着替えさせるためみたいだから、心配する必要はなさそうだけど、一体コイツは何者なんだろう。


カーテンの中で悩んでいると、男が動く気配がする。


「!?」


カーテンの隙間から様子を伺うと、男がシャツを脱いで裸になっていた。



男はシャツを脱ぎ捨てた。


コイツ・・・

親切なのかと安心させておいて、やっぱり危ないヤツだったんだ!

逃げなきゃ、逃げなきゃ危ない!


「な・・・なにする気ですか!?」


私はカーテンをバッと開け怒鳴った。

男は上半身裸で、こっちを振り向く。


「はぁ?」


私は男の横をすり抜け、扉の方へ走る。

逃げなきゃ!!


狭い部屋の中で思い切り走る。

扉を開こうと手を伸ばす。


ガシッ


「まてまて。落ち着け」


また、いとも簡単に私の腕は男に捕まってしまった。

暴れる私にお構い無しに、男の強い力でズルズルと部屋の奥に戻される。


「イヤだーーー!!!やめてーーー!!」


もう私はパニックで話なんて聞けない状態。

涙でぐしょぐしょになった顔で、男に向かって叫ぶ。


「やめてよーーーーうぐっ」


涙が止まらない。

一度泣き始めると、どんどん涙が溢れてくる。

入学式に出られなかった事や、可愛くした髪や制服あ台無しになった分も思い出して感情にプラスされてるみたい。



ひっく・・・・

うぅ・・・




ハァーーーーー。。。


男は大きく溜息をついて私を見た。

こんな状況なのに、私はその目に捕まり目が逸らせなくなってしまう。


「馬鹿。」


へっ?


「俺もびしょ濡れなんだ。着替えてるだけだろ馬鹿が。変な心配すんじゃねぇよ。こっちが迷惑だ」


!!

そうだったーーーー!!


「とりあえず叫ぶのやめろ。俺が変態だと思われたらどうしてくれる。」


私は恥かしさのあまり、顔を上げられず、座らされたソファの上で丸くなってしまった。

あぁ、もう。

穴があったら入りたい。


「うぅーーーーー」


「唸るな」


男は私が暴れなくなったのを確認して手を離すと、体をタオルで拭いて新しいシャツに着替えた。




----------------

----------------


10分後。


やっと落ち着いた私は、ソファに男と向かいあって座る。


「さっきはスミマセンデシタ」


私は男に深々と頭を下げた。

経緯はともかく、誤解して暴れたのは私の過失。

制服を貸してくれたり、助けれくれたのも事実だし。


「まったくだ。この俺がこんなヤツ襲おうとしたなんて思われたら、俺の評価が下がる」


「なっ・・・!!」


コイツ・・・!!

性格サイアクなんじゃないのーーー!?

せっかく人が素直にあやまってるのに!


「謝ってるのに!そんな言い方ないじゃないですか!!」


「それが悪いと思ってるやつの態度か」


悔しいーーー。

何を言っても言い負かされる。

唇を噛んで、ジリジリと男を睨んだ。


男はフンッと鼻で笑うと「ちょっと待ってろ」と言うと、部屋の奥に消えた。


「?」


残された私はする事もなく、何気なく背伸びをして窓の外を見た。



あ・・・


入学式が終わったらしく、体育館からはゾロゾロと生徒が出てきている。


あぁ・・・

高校生になったら楽しい学生生活って夢見てたのに、初日からサボッてしまうなんて・・・

出だしから躓いてしまった事に、私はとんでもなく絶望した気分になり、

さっき一度は引っ込んだ涙が、またじんわりと溢れてきた。


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