さくらの季節4
間違いないよ。
いくらなんでもあんな格好イイ人、校内にゴロゴロいないでしょ。
そんな事を考えながら、裏庭を歩いていた。
しかし、なんとも豪華な学校。
裏庭だけでもかんり広いし、手入れも行き届いている。
折角なので、ちょっと寄り道で裏庭をうろちょろしていると、
裏庭にすっごくファンシーな噴水を見つけた。
「可っ愛いぃ~」
ファンシーなもの大好きな私はテンションが上がってしまい、
思わず駆け寄って…
ツルッ
「あ?わ…わゎっ!!!おっとっ…とと!!」
「おい」
「とっ!わゎぁーっ キャーー!!」
バッシャーン!!
噴水周りの水飛沫に足を滑らせダイブしてしまった。
「冷たぁい…」
入学式なのに、全身びしょ濡れな私。
どうしよう・・・
じんわり涙が出てくる。
せっかく、可愛くしたいって頑張ったのに。
新しい制服で嬉しかったのに。
自業自得なんだけど、誰も見てないし、我慢出来なくなって泣いてしまった。
「うぅ…ひっく」
「泣くな、ウゼェ」
…!?
だ、誰!?
振り向くと、私と同じく全身びしょ濡れの男が、私を睨んでいた。
誰・・・?
っていうか、何してるの???
「あの…」
男はまだ私を睨んでいる。
「何、してるんですか?」
瞬間、男の目が一層鋭く光った。
「何してる、じゃねぇよ!おまえが噴水に落ちそうだから止めようとして道連れになったんだよ!」
「えっ私のせい!?」
「他に誰がいんだよ、こんなトコ落ちる馬鹿が」
なにこのひとー!!
こっわーー!!!
「そんな言い方しなくても!馬鹿とかひどい!」
男は前髪を手で拭い、フンッと鼻で笑った。
「オマエ、入学式どーすんの?」
そうだ…
これじゃ入学式出られない。
って言うか、式どころか電車にも乗れないし、帰れないよ…
そんな私の様子を見て、
男はため息をひとつ吐くと、噴水の中に立ち上がった。
あ、意外と背が高い。
よく見ると顔も整ってるし、格好イイかも…
「来いよ」
…?
「その格好じゃ風邪ひく」
え?
来いよってドコへ?
って言うか、初対面のよくわかんない人についてっていいのかなぁ
制服着てるから生徒だろうけど、なんか雰囲気怖いし。
どうしたらいいかわからずに黙っていると、
「来い、何度も言わせんな」
それだけ言うと私の腕を掴んで噴水から引っ張りだした。
「えっちょっ…あのっ、でも…!」
男は振り返りもせずに私の腕を掴んだまま、ぐんぐん歩く。
なんなの、この強引な人!
初対面なのに、ありえない!!
無言のままぐんぐん歩き、校舎の奥の階段を3階へ上がる。
どこ行くんだろう…
周りは空き教室や資料室みたいで、人の気配がない。
ヤバい人だったらどうしよう。
まさか、高校生活初日に襲われるなんてこと…
逃げた方がいいんじゃないの?私。
でも、腕はがっちり捕まれていて、振り切れそうにもない。
逃げる方法を考えてみるけど、何も思い付かない。
しかも、冷えたシャツが肌に張り付き体温を奪い、思考が纏まらない。
男に掴まれた腕の部分だけが熱く感じる。
腕を振り切れたとしても、多分すぐに追い付かれるだろうけど、
ダメもとで…
腕にグッと力を入れた。
その時、
男が立ち止まった。