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矛盾

作者: 厚葉ユッカ

何度あなたと同じ時間を共有したことでしょうか。

春は桜の下でラジオのジャズをバックにして日本文学の話をし、夏は海の見える東屋でラムネをのみながら夏祭りの思い出を語り、秋は美術館に行った帰りに焼き芋屋さんを見つけはしゃぎ、冬はあなたの家のこたつで鍋を囲み年末の予定を話し合ったり、移ろいゆく季節の中で私とあなたは変わらずにいつも一緒にいました。

あなたはいつも私に幸せをあたえてくれました。


「俺、結婚するんだ」


例年よりも暖かい春のある日、あなたはそう言いました。

私は言葉が出てこない自分に驚きました。

ようやく口からこぼれたのは「おめでとう」でした。

あなたは頬を赤く染め、優しい声で

「ありがとう」

と言いました。


あなたの「ありがとう」はいつも私を暖かい気持ちにさせてくれます。

けれど、どうしてかいつもと同じ言葉なのに私は泣きそうになりました。

あなたは私に幸せを与えてくれるのですが、切なくもさせるのです。

この矛盾は彼の結婚が決まったときから、一生続くのだと確信しました。


彼の嬉しそうな顔が私の息をつまらせました。

ああ、私は彼を愛していたんだ。


「どうしたの、なんで泣いてるの?」


彼に言われて気づきました。

私の涙は地面に点々と模様を作っていました。


好きだ好きだ好きだ。

結婚しないで。


それでも私は胸の痛みに耐えながら、必死に笑うことしかできませんでした。


幸せと悲しみ。

涙と微笑み。

たくさんの矛盾が私の中で起こっていました。


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