だから、俺が悪いとか誰が悪いとかそんなことを話しているんじゃありまんせん。いちいち誰かを悪役にしなきゃ気が済まないんですか? まったく……え? 俺? 俺の話は関係ないでしょう。
これから自分がいかに駄目な人間であるか語りたいんだけど、いいですかね?
え? そんな辛気くさい話を聞いてられるほど暇じゃない?
そんな冷たいこと言わずに……なあ、友人なら沈んだ俺の心配ぐらいしてくれてもいいだろ……?
ほら、見てよ……親に捨てられたみたいに、行き所のない苦悩を抱えた苦しげな俺の顔。
え、悲観主義は鬱陶しい、ニヒリズムもいい加減にしろだって……?
痛いところ突いてくるね……別に「この世は虚しい」とか「努力は無駄」とか言ってるわけじゃあないんですぜ。
ルサンチマンを名乗れるようなポテンシャルも俺にはねえですよ。
いや、やっぱり虚しいに違いないですね。
いちいちニーチェなんかで喩えて、まるでインテリぶってやがる。
ああ、虚しい虚しい。
大学出てもこの有様じゃあ、世も末ですな。
待って待って、ごめん、ごめん、もう口を閉じますんで殴らないで。
まったく、「言葉で分からねえ奴は殴る」なんて、文明人の自覚ってやつがねえんだから……いや、なにも言ってないですよ……言ってないからその拳を下ろして。
ふ~、あんた怖いねぇ、でもこんな俺に付き合ってくれるのはあんたくらいさ……あ、聞いてくれるんですか、へへへ、こりゃどうも 。
数日前に俺が妹の下着をネットオークションに出品した、って話はしましたっけ?
ええ、この前話した通りです。
あれがばれましてね……いえ、別に怒られたりしませんでしたよ。
ええ、怒られなかったんですよ。
で、妹が聞いてきたんですよ。
「いくらで売れたの?」と。
正直に言いましたよ。
「本物の女子高生の下着と宣伝したら10万で売れた」ってね。
そしたら妹は微笑んだんです。
「まだお金が必要なら、私の下着もっていっていいよ」って。
はあ~、小言を言わない上に、さらに下着をくれるなんて殊勝な妹なんですよ。
ですがね~そうやって貰った下着を、また三点ほど出品した後に急に考えたんですよ。
「俺とんでもないことしてるんじゃないか?」とね。
さらに言えば、妹が怒らなかったのは、俺がまともな人間ではないと諦めているからじゃないか?
だんだん薄ら寒くなってきましたよ。
俺の惨めさに……
え?オチ?
ありませんよそんなの。
細かいこと気にしないでくださいよ……神経質な人間はストレスが増えますよ。
というわけで駄目さを思い知ったんですが、今小金持ちになんですよ。
ええ、お昼ご飯にちょっと言いお店でも行きましょう。
端数くらいなら奢りますよ、へへへ。
え、ちょ、痛い、なんで殴るんですか、やめ
はえ~本当に乱暴な人だ……こんなの警察が見たら、あんた連れて行かれますよ。
まあ、殴られるのには慣れてるからいいんですけどね。
まだ拳で殴ってくるだけあんたは優しい。
え? なんですか? 姉はなんて言ってたか、ですかい?
ああ、パイプ椅子10発で許してくれましたよ。
ええ、事情を話して儲けの8割を渡したら、それだけで許してくれました。
その割には傷がない?
まあ、彼女は胴体や背中を痛めつけてきますから。
周りにバレたら大変だからって、配慮ができる家族なんですよ。
あんたも殴るならボディにした方がいいですよ。
顔は痕が残りやすいですから。
でも妹にはやっぱりかわいそうなことしたな~、と改めて思いましてね……食事の後に女性下着の買い物に付き合ってくれませんか?
新しいのを妹に買ってやりたいなと……やっぱり男だけじゃ良い女性下着はわからないものですから、女性のあんたにも手伝って欲しくて。
手間賃は払いますよ 。
♢
いや~沢山買えました!
ありがとうございます~、やっぱり女性下着は女性に選んでもらうのが一番だ。
はい、これは手間賃の六千円です。
え? どうしました?
ア……もしかして少ないですかね……。
困ったな……もう財布も預金もすっからかんなんです。
あとは帰りの電車賃の三百円しか……あ、そうだ、俺の下着買い取りませんか?
いい商売知ってるんですけどね、ネットオークション、したことあります?




