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第1章その2 ゴブリン魔法を知る

その翌朝、ゴルゴリは机に脚を投げ、体を後ろへ倒しながら本を読んでいた。

目には濃いクマが浮かび、その片手には青カビの生えたパンを握っている。


「まさかあの鞄の中身がほとんど本だったとはなあ。」


倒れた人間に駆けつけたところ、すでに事切れていた。死んでしまったものはしょうがない。だから死体漁り…違う、資源の有効活用のために鞄を覗いてみたのだがーーその中には腐った食材、数枚の地図、それから大量の本。


なお、遺体はちゃんと土葬していておいた。それでチャラにして欲しい。


その本のほとんどが「魔法」とやらに関するものだった。なんでも魔法というものは、身につければ全くの無から色々な現象を起こすことができるらしく、この世ならざるものの力を借りているとか…とにかく目新しい。


そしてそれ以上にゴルゴリの興味を引いたのが、やや薄めの冊子。

そこには、

「魔術ギルド採用試験」

なるものの詳細が書いてあった。


魔術ギルド、近年暴徒化した勇者たちに対抗すべく結成された組織で、年に一回新規採用のため採用試験を行う。試験日時は1ヶ月後 枯れ枝の月、場所は王都にて。「ギルドに入ったものには、給料と手厚い福祉を約束します。」


なんだって?!


願ってもみなかったチャンスが到来。この試験に合格できたなら、無事ギルドの一員という形で人間社会に溶け込めるではないか。

そして、さすがは魔族、幸いこういう怪しいものに関しての要領の良さには自信がある。この一晩で魔法とはなんたるかを叩き込み、この本で身につけられる魔法は全て試してみた。


「一晩寝ずに練習するのは本当にキツかった、まさかこんなに複雑だとは思わないもんなあ。」


頭の中で再復習。

「魔法」というのはこの世ならざる力によってこの世に働きかける術のことで、ここ数年間のうちに台頭してきた新技術である。一つの魔法を習得するためには、それに関連する詩を読み込んだり絵を見たり書いたりしなければならない。そして、諸々の手続きが終わった後に「この世ならざる守護者よ〜」から始まる専用のスペルを唱える。スペルを正しく唱え、無事 習得できたなら意のままに魔術を起こせるが、失敗したら最初からやり直し。


それでもゴルゴリは起死回生のため奮起した。


ゴルゴリがこの本の山から習得できた魔法は四つ。

一つ目は「シュマーカ」、小さな炎を生み出すことができる。

二つ目は「ワータ」、水鉄砲程度の水を生み出す。

三つ目は「スペーサ」、相手と自分の間に薄く見えない壁を作る風属性の魔法らしい。

そして四つ目「グロッサル」、枝葉程度の植物を生み出すことができる。


本の量の割に、習得できた魔法は正直ショボい。

でも、ギルド志望の人間なんて魔族でいうスライムみたいなもんだろうし、習得の煩雑さも鑑みるとこんなもんだろう。


いずれにせよ、こちらが尽くせる人智は尽くした、あとは天命を待つのみだ(ゴブリンだけど)。

試験まではあと1ヶ月、地図から考えると王都に着くのに二週間はかかるのだからこれ以上グズグズもしていられない。飯だって、ゴブリンだから食べられているものの、腐りかけたものやカビたものがあと二週間分だ。


ゴルゴリは厳選した本のみを入れた鞄を背負い、旅人からこれまた狼藉したのであろう衣服に身を包んだ。

砦の門に立つ。

そして、暖かな昼の日差しを浴びながら今いちど決意を固めた。


「目指せ魔術師!目指せ安定したお給料!」

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